2019年5月1日
第1回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
今回のコンテストには、フォト部門2206点、エッセー部門1115編にもおよぶ作品が寄せられました。たくさんのご応募ありがとうございました。下記に受賞作品をご紹介いたします。
第1回 生命を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
フォト部門
※受賞作品名をクリックして頂くと別ウィンドウで開きます。
審査員からのひとこと
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■熊切圭介(写真家、日本写真家協会会長)
受賞作品全般的に言えることは、何を伝えたいのか、表現したいのかがそれぞれの写真によく出ていたと思います。情や感情のように言葉で表すことが難しい部分を、写真というメディアを通じてうまく表現できている作品が多かったです。
「愉快なひと時」 は、お年寄りを被写体にした作品が多い中、子どもが加わることで若いいのちも感じさせる画面となっています。子どものとぼけた表情と、おばあちゃんの楽しそうな表情のコントラストが自然に表現されていてすばらしいと思います。
「負けない」 は、杖をつきながらも元気に、意欲というか意思というか、そういうものを感じます。生命(いのち)というものに対する積極的な姿勢を感じます。
「おしゃぶり」 の子どもが親の手を噛んでいるようなしぐさは、親に対する甘えのように見えます。ちょっとしたしぐさの中に親子の情のようなものを感じます。アップで撮影していることで強さもある作品になっています。
「愛おしい...」 は、柔らかい雰囲気の中に親子の愛情が実によく出ている作品。男の子が目をつむって肌の匂いを嗅ぐような姿は、愛情が感じられます。写真を見ると、この親子に加わりたいと感じさせる、そんな空間です。
次回コンテストでも、人間の親子であれ、動物であれ、そういう人や動物の持っている良い雰囲気を表現できるといいと思います。そのためには形にはあまりこだわらず、何を伝え、訴えたいのかを考えながら写真を撮ると深みが出てくると思います。 -
■岩合光昭(動物写真家) Iwago Photographic Office
厚生労働大臣賞の「愉快なひと時」 は、子どものおどけた様子と、おばあちゃんのちょっと恥ずかしそうな表情がなんとも言えません。二人の豊かな感情があふれてくる1枚です。
日本医師会賞の「負けない」 は、ポーズをとったわけではなくて自然な描写で、とても優れた作品だと思います。動くことは生きることなので、動くことの価値が感じられます。
読売新聞社賞の「おしゃぶり」 は、画面の切り取り方や構図がすばらしい。アザラシの赤ちゃんに目が吸い寄せられるような、かわいらしい、愛らしい作品です。
審査員特別賞の「愛おしい...」 は、撮られた方が旦那さんということが伝わってくる作品です。命の尊さや、赤ちゃんに対する母親の愛情も凝縮されていますね。
全体を通して、撮影者の被写体に対する愛おしさ、愛情が伝わってくる作品ばかりだったと思います。個人的には職業柄、動物写真での力作を見てみたいですね。撮った人がどういう思いで被写体に対しているかは自然と伝わってきますので、また今回同様、思いあふれる作品を拝見できたら嬉しいです。 -
■松下奈緒(女優/音楽家)
厚生労働大臣賞の「愉快なひと時」 は、おばあちゃんと子どもさんの真逆の表情から、正反対の感情が読み取れるのが面白い作品ですね。これから大きくなって人生を歩んでいく子どもさんと、何十年生きてきて、今人生を楽しんでいるおばあちゃん...年代的な対比も面白いと思います。
日本医師会賞の「負けない」 は、作りこんでいない自然な感じが伝わってきてとてもいいですね。被写体のおじいさんの表情は真剣にも見えますし、ユーモラスにも見えます。一枚の写真から、人間のいろいろな一面が見えてドラマを感じる作品だと思います。
読売新聞社賞の「おしゃぶり」 は、「自分もあんな写真を撮ってみたい!」と感じる、とても可愛らしい一枚。人間もアザラシも親子の愛は同じなのかな・・・と思えて、ほっこりしますね。子アザラシのくりくりとした目から、母親に対する安心感が伝わってきます。
審査員特別賞の「愛おしい...」 は、「生命(いのち)を見つめる」という今回のテーマが感じられる作品。お母さんと赤ちゃん、だとありきたりな構図になってしまいますが、お兄ちゃんが入って3人になることで、赤ちゃんが産まれたことへの喜びを強く感じられます。それをお父さんが撮影しているのかな...と想像すると、家族のストーリーが見えてくるようです。
エッセー部門
一般の部
- 厚生労働大臣賞
- 「寄り添う眼差しに」
- 重信 雅美(東京都)
- 日本医師会賞
- 「A先生の『ここだけの話』」
- 渡辺 惠子(徳島県)
- 読売新聞社賞
- 「大きなお地蔵さんのような病院」
- 小川 かをり(東京都)
- 審査員特別賞
- 「がらんどうの生」
- 馬場 広大(鹿児島県)
- 入選
- 「みいちゃんへ」
- 坂口 有美子(東京都)
- 入選
- 「あなたには、時間がない」
- 平井 真帆(埼玉県)
- 入選
- 「ビールで乾杯」
- 御代田 久実子(東京都)
- 入選
- 「心の交流」
- 森田 欣也(愛媛県)
- 入選
- 「共感」
- 八木 房子(愛媛県)
中高生の部
- 最優秀賞
- 「笑顔の力」
- 河野 未実(東京都)
- 優秀賞
- 「患者の家族として」
- 穴田 未優(千葉県)
- 優秀賞
- 「幸せに『生きる』ということ」
- 古泉 修行(新潟県)
- 優秀賞
- 「ベッドで散歩」
- 下萩 南耀(東京都)
小学生の部
審査員からのひとこと
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■養老 孟司(東京大学名誉教授/解剖学者)
どれも実体験にもとづいた文章なので、思わず引き込まれてしまう。他方、どこまでが実際で、どこからが創作か、それを文面から判断するのもなかなか難しい。審査を引き受けてしまったものの、いささか後悔することになってしまった。
それを救ってくれたのは、やはり書いてくださる人たちの医療への思いである。感謝であれ憤懣であれ、率直な気持ちが伝わってくる。人と人とのつながりが薄れ、単身所帯が四割を超えようとする現代社会で、医療が担う役割の変化と重要性をあらためて考えさせられた。
素直に書いてくださるだけでいいのだと思う。賞が問題ではない。自身の気持ちを伝えてくださることがありがたいのである。 -
■玄侑 宗久(作家/福聚寺住職)
全体として、とても面白く拝読しました。とりわけ今回は、社会不安障害という希少な病気の内実が、本人の緻密な文章で描かれており、思わず息をのみながら読みました。精神科の患者自身の心がうまく表白されており、これは同じ病気の治療にも活かせそうな気がしました。
また「あの方のために演奏したい」(※)という文章にも感じたことですが、生命をめぐる話題にはどうしても光の側面と闇としか言えない暗く重い側面があります。闇を知ることで光もより眩しく感じられますし、どちらも遠慮なく書いてほしいと思います。
※受賞作品以外の最終選考に残った作品 -
■水野 真紀(女優)
教育者であり、カトリック修道女でもあった渡辺和子さんの言葉に「学歴、職歴よりも大切なのは『苦歴』」というものがありました。
患者のみならず、心身の苦しみや痛みに真っ向から向き合った作品の数々には、誰もが心を揺さぶられ生命について再考せずにはいられないことでしょう。書き記すという表現には底知れぬ力が宿っていることを今更ながら思い知りました。また、小中高生の作品には共感力の輝きが随所に見られ、さわやかな読後感を味わわせて頂きました。
この作品集が多くの人の手に渡ることを心から願います。素晴らしい作品をありがとうございました。