2021年2月5日
第3回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
第3回 生命を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
第3回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー(日医・読売新聞社主催)の受賞作品が決定いたしました。
今回のコンテストには、フォト部門2,708点、エッセー部門合計1,091編にもおよぶ作品が寄せられました。た くさんのご応募ありがとうございました。下記に受賞作品をご紹介いたします。
フォト部門
※受賞作品名をクリックして頂くと別ウィンドウで開きます。
審査員からのひとこと
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■野町和嘉(写真家/日本写真家協会会長)
厚生労働大臣賞の「ひぃおばあちゃん頑張って!」は、家族やお隣が深くつながっている田舎ならではの光景でしょう。おばあちゃんからひ孫まで大家族の温かさに好感が持てます。老いを隠せない、ややぎこちない動きでスイカ割りに挑戦するおばあちゃん。思い思いの表情で応援する子どもたちの天真爛漫な姿に、のびやかな家族の絆が感じられ好感の持てる良い写真です。
日本医師会賞の「末は横綱」は目線、というか表情につきます。子どもの相撲の写真はよくありますが、恥じらいや、土俵に立つ子どもの戸惑いの一瞬を的確に捉えた微笑ましい一枚です。順光ではなく、半逆光であることも作品に深みを与えています。
読売新聞社賞の「健闘を讃えあう」は、何よりも両足が義足のランナーをこのアングルから撮影できたことが素晴らしいと思います。正面から捉えるよりも、この後ろ姿がさまざまな思いを物語っています。まさに写真でしか表せないヒューマニティがしっかり表現できた秀作です。
審査員特別賞の「母から子へ」は、後ろに広がる伸びやかな夕景を広く入れたことで、猫たちが暮らしている穏やかな環境がよくわかります。母と子の絆が感じられる一瞬を撮った味わいのある作品になっています。 -
■岩合光昭(動物写真家)
厚生労働大臣賞の作品は、ひ孫たちの表情がとてもいいです。何も考えない笑いがそこに表れています。本当に一瞬だったと思うのですが、その一瞬が捉えられており、とても力がある作品だと思います。
日本医師会賞の作品は、本当に末は横綱かな? と思いつつ、一生懸命さがいいですね。手の力の入り具合がとても好きです。ピントが顔よりも手に当たっていますが、手を使うことは人としての特徴でもありますので、手の表現・表情はとても大切です。
読売新聞社賞の作品は、タイムリーな題材です。体の美しさや表情とともに、「動くことは生きることであり、生きることは動くことだ」というメッセージが心に響いてきました。
猫の写真は厳しく見ているつもりですが、その中でも審査員特別賞の作品は、色のトーンが郷愁を誘い、子猫が母猫を慕っている様子が伝わってくる気がします。猫という動物ではありますが、人のことについても考えさせる作品だと思います。 -
■松下奈緒(女優/音楽家)
厚生労働大臣賞の作品は、縁側に座った、子どもたちそれぞれの表情が生き生きとしていて、楽しい雰囲気やかけ声が伝わってきました。ある夏のひとときというような、日常を切り取った誰もカメラを意識していない空気感も素敵だと思いました。この後、スイカは無事に割ることができたのでしょうか?
日本医師会賞>の作品は、今回たくさんの応募写真を見ていくなかで最初に目に留まりました。この表情が色々な感情を物語っているようでとても好きな写真です。読売新聞社賞は、一人の選手の笑顔に対し、もう一人の選手の表情がうかがえない所が、観る人の想像を掻き立たせる作品だと思いました。背景に誰も写っていなくて、主人公が二人だけなのも良いと思いました。
審査員特別賞の作品は、画角の切り取り方が好きです。寄りすぎでもなく、引きすぎてもなく。オレンジのライトも自然で素敵です。お互いが見合っているのではなく、子猫は見上げて、母猫はまっすぐ前を見据えている状況が、親子を象徴している感じがします。
エッセー部門
一般の部
- 厚生労働大臣賞
- 「自然のなかのいのち」
- 矢野 富久味(高知県)
- 日本医師会賞
- 「拝啓、がん様」
- 安藤 かおり(鹿児島県)
- 読売新聞社賞
- 「肌の色をした絵の具」
- 三品 麻衣(東京都)
- 審査員特別賞
- 「気持ち悪い先生」
- 田中 彩子(東京都)
- 入選
- 「一人の一途な若者の生涯」
- 宮寺 良平(兵庫県)
- 入選
- 「命をみつめて」
- 成田 亜樹子(北海道)
- 入選
- 「母の宿題 息子の宿題」
- 浜口 喜代子(東京都)
- 入選
- 「いらない命は ない」
- 髙本 和昌(東京都)
- 入選
- 「命の勲章」
- 山内 千晶(福岡県)
中高生の部
- 最優秀賞
- 「医者よりも"癒者"に」
- 菅野 莉子(栃木県)
- 優秀賞
- 「父の想いを知って」
- 今村 咲(東京都)
- 優秀賞
- 「旅立ちのお手伝い」
- 岡田 経奨(広島県)
- 優秀賞
- 「無脳児の母、16歳の決断」
- 尾﨑 榛名(東京都)
小学生の部
- 最優秀賞
- 「生まれてきてよかった」
- 薛 知明(愛知県)
- 優秀賞
- 「ふんばる力の源は?」
- 横山 紗来(兵庫県)
- 優秀賞
- 「豆つぶだったぼくの成長」
- 渡邉 洵(神奈川県)
- 優秀賞
- 「難聴を通して感謝を伝える」
- 臼杵 華(香川県)
審査員からのひとこと
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■養老孟司(東京大学名誉教授/解剖学者)
毎回のことだが、病気をめぐる話題が多くなる。健康に関する話題がもっとあってもいいと思う。OECDの調査で「自分は十分に健康だ」と答えたのは、日本人では3割、35か国中で最低だった。「いのち」から連想されるのが病気や障害、死であるのは、日本の現代社会では当然なのであろう。とはいえ健康に生きること、さまざまなことを忘れて、子どものように夢中で生きることも、大切ではないか。
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■玄侑宗久(作家/福聚寺住職)
今回も読み応えのある作品がたくさんあった。なかには読んで辛くなるような病気の方もおり、また医療との出逢いもじつにさまざまだが、田中さんの描いた「気持ち悪い先生」と「感じ悪い先生」は象徴的だった。最近は、確かにパソコンにばかり向かっている「感じ悪い先生」が多く、なんとかならないかとも思う。一方で厚生労働大臣賞を受賞された矢野さんの作品は感動的だ。「どんどん美しくなっていった」死に顔は私も出逢ったことがあるが、それも無理はないと思えるような物語が綴られていた。しかもここに描かれるお医者さんは、本当にこんな先生がいるの?と思うような方だ。人生の「妙」を感じさせる原稿を、来年も期待したい。
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■水野真紀(女優)
審査を務めるようになって3回目ですが、様々な立場から「生命を見つめる」視点には、心動かされることばかりです。作品の数々に、「生命」と伴走する息遣い、それは弾んでいたり、苦しかったり、様々なのですが、その息遣いを感じながら読み進むうちに、自分まで筆者と共に走っているような感覚になるのです。この感覚は、ドラマや小説では得られない不思議なものです。
改めて考えてみたのですが、作品其々が、病院内も含めた日々の暮らし・生活と密着しているからこそ、引きつけられるのかもしれません。
「生命を見つめる」暮らし・生活、そこに少しの伝えたい気持ちと勇気があれば、多くの人の支えとなることを強く感じた『第3回 生命を見つめるフォト&エッセー』でした。