育児休業中の資格やスキルの維持
公開日:2021.09.14 / 最終更新日:2024.04.01- 専門医の更新との兼ね合いや、
- 育児休業中の知識や技術の
- 維持についても考えておきましょう。
① 専門医の更新時期との兼ね合いに注意しましょう
「子どもは専門医が取れてから」と考える医師は少なくないでしょうが、その場合、育児休業の期間と専門医の更新時期が重なる可能性があるため注意が必要です。
専門医の更新には、勤務実態や診療実績、共通/領域講習、学術業績などの各項目で、各学会が定める基準を満たす必要があります。日本専門医機構は、妊娠・出産や病気療養など、特定の理由のために専門医資格の更新が困難な場合には、活動休止や更新の猶予を申請することができると定めています。
活動を休止する場合、初回の申請で最大2年間の休止が認められ、その後1年ごとに延長が可能です。休止期間中は専門医を称することはできず、またその間に診療や講習受講などをしても、更新の単位としては認められません。更新猶予の場合、猶予期間中も専門医資格は維持されます。期間は原則1年間ですが、事情によっては延長も認められます。
また、診療実績の基準は満たせないが、自己学習などにより講習や学術業績の更新基準を満たすことができる場合は、所定の手続きを経れば、診療実績の不足分を筆記試験等で代替することも認められています。
② 育児休業中も、仕事に少しでも触れておくことをお勧めします
医学・医療は日進月歩であるため、職場を数か月~1年離れただけでも、知識や技術のブランクを感じるかもしれません。育児休業明けに、「遅れをとってしまっているのではないか」「ついていけるのだろうか」と不安に感じる医師も多いことでしょう。
育児休業期間中に就労することは制度上想定されていませんが、労使間で合意があった場合、一時的・臨時的に就労することは認められています*。そこで、育児に慣れて落ち着いてきたタイミングなどで、もし余力があるようなら、ごく短時間でも現場の仕事に関わる時間を持つことをお勧めします。
*労働者が自ら事業主の求めに応じ、合意することが必要(事業主の一方的な指示により就労させることはできない)。事業主は、育児休業中に就労しなかったことを理由として、不利益な取り扱い(人事考課において不利益な評価をするなど)を行ってはならず、また、上司や同僚からのハラスメントが起きないように、雇用管理上必要な措置を講ずる必要がある。
【体験談】 育児休業中も、週に数時間の勤務を続けたことで、ブランクを感じずに復帰できた(内科、20代)
私は、医師4年目の終わり頃に第1子を出産しました。専門の勉強を始めて2年目という、最も学びが深まる時期に休まなければならないのは不安で、産後も早く復帰したかったのですが、子どもが早生まれで年度途中に保育園に入るのは難しく、1歳になるまで待つしかないと諦めかけていました。自分のそうした状況や、これまで身につけた知識や技術がゼロに戻ってしまいそうな不安を医局長に相談したところ、育児休業を続けながら、週に1日程度出勤できるように調整していただけたのです。
仕事は病棟業務の手伝いなど、ささやかなものが中心でしたが、空いた時間には内視鏡の助手に付かせてもらうこともありました。仕事の日はベビーシッターをお願いしましたが、自治体から補助もあったので、それほど経済的負担にはなりませんでした。
育児休業明けに復帰した時も、バリバリ働く同期を見て焦りは感じたものの、「1学年下の後輩と同じくらいの戦力にはなれそうだ」という気持ちで臨めたのは、育児休業中でも定期的に専門分野の診療に関わることができたからだと思います。次に出産する機会があったら、やはり週1回でも診療に携われるようにできたらなと思っています。
③ 育児休業中に就労する際の注意点
育児休業期間中に一時的・臨時的に就労*することは可能ですが、月10日または80時間を超えると育児休業中とみなされず、育児休業給付金等の経済的支援は受けられません。就業日数には、雇用保険の被保険者となっている雇用主以外での就労(非常勤のアルバイトなど)も含まれます。
また、支払われる賃金が、育児休業給付金とあわせて「休業開始時賃金日額×支給日数」の80%を超えた場合は、給付金が減額もしくは不支給となります。なお、賃金の算定にあたっては、雇用保険の被保険者となっていない事業所から支払われた賃金は含まれません。
*毎週特定の曜日または時間に勤務する場合などは恒常的・定期的な就労とみなされ、育児休業をしていることにはならない。
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