学校保健に関わるにはどうしたらいいの?(前編)

医学生の皆さんが、これから学校保健について学んだり、将来学校保健に関わろうと思ったときに必要となる情報を、Q&Aで紹介します。

 

Q1 学校医はどのように選ばれているのですか?

A1

学校医は、学校の設置者や地域の教育委員会の求めを受け、地域医師会が紹介・推薦することで決定されます。基本的には内科・耳鼻科・眼科・小児科等の開業医が任命されることが多いですが、医師不足の地域・開業医の高齢化が進んでいる地域などでは、勤務医個人へ委嘱されることもあります。

 

Q2 学校医になりたいのですが、どうしたらなれますか?

A2

地域に学校医が不在になった学校がある場合、その地域の医師会に、学校医の推薦の要請が来ることになります。ですから、地域の医師会に「学校医になりたい」という意思を伝えておくことが重要です。残念ながら現在、学校医の積極的ななり手が多いわけではありません。学校医の高齢化も進んでおり、今後、学校医の担い手が不足することが危惧されています。若い医師や勤務医でも、学校医に興味がある場合は、積極的に名乗り出ていけば、推薦される機会は十分にあるでしょう。

 

Q3 学校医になるために、特別な資格などは必要ですか?

A3

学校保健安全法では、学校医は医師のうちから任命または委嘱するとされていますが、それ以外の規定は特にありません。ただ、一通りの内科・小児科の診療経験や知識はあった方が望ましいでしょう。小児科を専門としていない場合でも、臨床研修などの機会に経験を積んでおくと良いかもしれません。

また、学校医ではない各科の専門医が、学校保健に関わっていく機会も増えています。複雑化する学校保健の課題に対応するため、全国の地方自治体において、各科の専門医を学校に派遣する事業が展開され始めているからです。

例えば東京都では「都立学校への専門医派遣事業 児童・生徒の心の健康づくり」として、2003年度から精神科医の派遣が行われていますし、愛知県・大分県・千葉県などでは、精神科・整形外科・皮膚科・産婦人科の地区別専門医リストが作成され、啓発と健康相談のための派遣事業が行われています。岐阜県では、食物アレルギーのある児童生徒を支える取り組みとして、専門医を学校に派遣する事業が行われています。

 

Q4 学校医の仕事のやり方などについて、学べる場はありますか?

A4

日本医師会では、年に1回、日本医師会館において学校保健講習会を開催しています。この講習会は1974年から毎年行われており、学校医の先生方に、学校保健活動を行うために必要な知識を習得していただいています。この講習会は同時に、学校保健に関する様々な問題を討議し、新たな施策の企画・立案をする機会ともなっています。

また、10~11ページで紹介した、ぽよぽよクリニックの田草雄一先生も言及されていたように、日本外来小児科学会では2001年から毎年、園・学校保健勉強会を開催しています。小児科を専門としつつ学校医を目指している方は、このような勉強会に参加してみるのも良いでしょう。

 

学校保健に関わるにはどうしたらいいの?(後編)

Q5 学校医として活動している医師同士が集まって、学校保健活動について研究したり、情報交換・交流をしたりする場はありますか?

A5

毎年、文部科学省により「全国学校保健・安全研究大会」が開催されています。また日本医師会では、毎年この大会と同時期に、都道府県医師会の協力を仰いで「全国学校保健・学校医大会」を開催しています。「全国学校保健・学校医大会」では、各地域での取り組みを分科会で報告したり、シンポジウムを開催したりする他、開催県やその周辺地域において特に功労のあった学校医・養護教諭・学校関係栄養士に対して表彰を行っています。

 

Q6 学校医の先生の活動を見学したいのですが、どうすれば見学できますか?

A6

残念ながら現在、医学生や若手医師の見学を受け入れるような組織的な窓口などは存在しません。しかし、学校医活動・学校保健活動に積極的に関わっている医師は全国にたくさんいます。まずは、先ほど紹介した全国学校保健・学校医大会や日本外来小児科学会の集まりに参加したり、プログラムを見たりして、自分の地域で活動している医師に連絡を取ってみると良いでしょう。

また、今回の特集で紹介した田草先生は、ご自身の活動の見学の他、各地域の学校医の先生を紹介してくださるそうです。学校医の仕事に興味のある方は、田草先生(smile[a]poyopoyo.jp [a]をアットマークに変えてください。)に相談してみましょう。

 

全国学校保健・学校医大会

日本医師会は、学校医が互いの実践を共有し学び合う場として、全国学校保健・学校医大会を開催しています。第48回大会は、2017年11月18日(土)に三重県にて開催され、548名(うち医師449名)が参加しました。午前中は五つの分科会に分かれ、計53題の発表が行われました。例えば、「百日咳地域流行と学校での感染対策~情報の共有と共感について」という発表では、北秋田市における2015年末からの百日咳の地域流行とその対策の経緯が報告され、感染症患者急増などの情報を、病院と医師会・学校間で共有すること、その際互いに重要性を共感し合うことの大切さが再確認されました。

 

医師×教育政策

2017年より、日本医師会の横倉義武会長が、国の学校教育の方針を定める中央教育審議会(中教審)の委員に就任しました。横倉会長には、主に健康教育や学校保健分野での見識が期待されており、中教審の委員に医師の代表が入るのは今回が初めてのことです。医療や健康についての知識・リテラシーがより深く求められる現代では、12~13ページで紹介した北海道河西郡更別村の山田康介先生のように、多職種と連携して新たな教育ニーズを発見し、それに対応しようとする医師も増えています。このような学校医の地域における活動を支えていくためにも、中教審のような場で医師の意見を国の教育政策に届け、反映していくことが、ますます重要になっています。

 

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