医師のみなさまへ

ノニについて

「健康食品」やサプリメントを摂りすぎていませんか ノニについて 安全性は・・・?多量のカリウムを含んでいるため、腎臓病患者の方には有害です。

ノニとは、からだに良いものとして、ジュースの形で販売されていることが多いようです。
ノニは、インディアン・マルベリー、ヤエヤマアオキ、モリンダなどとも呼ばれています。太平洋諸島、東南アジア、オーストラリア、およびインドにある常緑樹で、溶岩流地形に多く生息します。昔から、赤や黄色の洋服の染色に利用されてきました。
ノニは、カリウムなどの多くの成分を含んでいます。

安全性について

  • ・副作用については不明です。
  • ・妊娠中に摂取してはいけません。母乳授乳期の安全性については、情報が十分ではありません。
  • ・多量のカリウムを含んでいるため、腎臓病患者の方には有害です。
    腎臓病患者の方でノニジュースを飲んだ後、血中カリウム値が高値になったとの報告があります。
  • ・肝臓病のいくつかの症例と関連性があります。肝臓病患者の方は、摂取を避けてください。また、肝毒性をあらわす可能性があります。
  • ・医薬品によっては相互作用が起こるおそれもあります。かかりつけの医師にご相談ください。

(引用文献:健康食品・サプリメント(成分)のすべて―ナチュラルメディシン・データベース)

専門家のコメント

東南アジア(インドネシアなど)、太平洋諸島(タヒチなど)、その他の地域において、ノニの果実や葉は、時には、根、種子、樹皮が、食品として摂取されています。民間伝承的に、ありとあらゆる疾病・症状に“クスリ”として、あるいは健康食品として利用されています。疝(せん)痛、便秘、吐き気、咳、発熱など、あるいはマラリア、痘そう( 天然痘)、脾腫、がん、白内障、うつ病、関節炎、糖尿病、高血圧など枚挙にいとまがありません。局所的には、やけど、創傷、ハンセン氏病の皮膚症状などです。
しかし、ヒトを対象にして、有効性を証明したデータは、ありません。多くの論文は、動物実験や細胞・組織レベルの研究にとどまっています。
ノニを摂取した方に肝機能検査値が上昇したという報告は少なからずあります。また、ある種の血圧を下げる薬を飲んでいるヒトや慢性腎臓病の患者さんがノニを摂ると、血中のカリウムが上昇する可能性があります。このような方は、ノニを摂る前に、必ず主治医の先生に相談してください。
結論といたしましては、ご自分の疾患や体調を十分に考えた上で、ノニを摂取するかどうか判断してください。

患者さん、ご家族の皆さんへ

あなたは、「健康食品」やサプリメントを摂っていませんか?
「健康食品」やサプリメントには、摂りすぎや、服用している医薬品との間で、思わぬ健康被害が発生することもあります。体に不調を感じたら、すぐに、かかりつけの医師にご相談を!
そして、医師に、「健康食品」やサプリメントを摂っていることを伝えましょう!

ノニとは

ノニは、インディアン・マルベリー、ヤエヤマアオキ、モリンダなどとも呼ばれています。太平洋諸島、東南アジア、オーストラリア、およびインドにある常緑樹で、ジュースなどの形で販売されている場合もあります。
ノニは、カリウムなどを含み、また、肝毒性をあらわす可能性があります。医薬品との相互作用の恐れが指摘されています。肝臓を害する可能性のある医薬品(肝毒性を有する医薬品)、ワルファリン、高血圧治療薬(ACE 阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬<ARB>)、利尿薬(カリウム保持性利尿薬)などです。

なお、ノニにはビタミンK が含まれるので、ワルファリンを併用すると、その抗凝固作用が阻害され、薬効が減弱する可能性があるとされています。
また、ノニは民間伝承的に中絶薬、月経促進薬として用いられてきたとの情報があるので、妊娠中に摂取してはいけないとされています。

ノニを摂取した症例

日本医師会の「健康食品安全情報システム」(平成23年度~)事業及び「食品安全に関する情報システム」モデル事業(平成18年度~22年度)には、以下のノニを摂取した症例が報告されています。

  • 性別・年齢
  • 主な成分
  • 併用薬
  • 症状・異常所見・
    診断名等
  • 症状等と健康食品との関連性のエビデンス注1
  • 治療の経過・転帰
  • 判定結果注2
  • 性別・年齢

    男性・62歳

  • 主な成分

    ノニ(ヤエヤマアオキより抽出)

  • 併用薬

    ローコール®、レニベース®、チラーヂン®

  • 症状・異常所見・診断名等

    急性肝炎(めまい、食思不振、意識混濁)

  • 症状等と健康食品との関連性のエビデンス注1

    医学的に推定

  • 治療の経過・転帰

    回復

  • 判定結果注2

    4

  • 性別・年齢

    女性・70歳

  • 主な成分

    ノニ

  • 併用薬

    -

  • 症状・異常所見・診断名等

    肝機能障害 GOT42、GPT35、LDH246、ALP396、γ-GTP68

  • 症状等と健康食品との関連性のエビデンス注1

    医学的に疑い

  • 治療の経過・転帰

    回復

  • 判定結果注2

    3

  • 注1:情報提供をした会員の判断による。
  • 注2:判定結果は真正性、緊急性、重要性に基づき、レベル5(警告・禁止)、レベル4(注意喚起)、レベル3(要監視)、レベル2(要観察)、レベル1(保存)に判定される。

解説

「事例」に示されているように、日本医師会健康食品安全情報システムに、ノニの摂取による肝障害の症例が報告されている。諸外国でも少なからず肝障害が報告されている。ノニ摂取後、2週間から4カ月以内に発症している。摂取中止後2日で肝機能検査値が改善し、1カ月経過すると正常化しているようである。病理所見としては、急性肝炎、炎症、肝細胞壊死、肝細胞内胆汁うっ滞が認められている。ノニジュースに含まれているアントラキノン(anthraquinone。アロエ、センナ、ダイオウなどにも含有)が原因物質であるという説もあるが、肝障害を起こした製品からアントラキノンは検出されなかったという論文もあって、今後の課題となっている。肝毒性副作用をもたらす可能性のある医薬品を投与されている患者はノニを摂取すべきではない:acetaminophen, amiodarone, carbamazepine, isoniazid, methotrexate, methyldopa, その他。
ACE阻害薬、ARBなどとの相互作用は、ノニジュースにカリウムが多く含まれていること(56mEq/L)から、高カリウム血症の発症が理論的に推測されている。しかし、ノニジュースを摂取している腎不全患者が高カルシウム血症を起こしたという症例報告がある。
民間伝承的に、ノニは多くの疾病・症状に有効であると信じられてきているが、ヒトを対象とした無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)はなく、動物実験や in vitro 試験にとどまっている。アメリカNIHの国立補完・代替医療センターは第Ⅰ相(phase Ⅰ)臨床試験を開始したが、結果は現在のところ公表されていない。

日本医師会員のみなさまへ

詳しくは、「健康食品のすべてナチュラルメディシン・データベース」をご覧ください。
日本医師会ホームページ・メンバーズルーム(会員向けHP)の「地域医療・診療支援」より、アクセス。
実際の事例も掲載しています。

お問い合わせ先
日本医師会(地域医療第1課 03-3942-613703-3942-6137