2024年10月17日
ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種及び子宮頸がん
日本で年間約1.1万人が子宮頸がんに罹患、約2,900人が亡くなっています。また、25~40歳までの女性で2番目に多いがんによる死亡は子宮頸がんによるものとなっています。
ほとんどの子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染が原因であり、ワクチン接種によってHPVへの感染を防ぐことで、子宮頸がんの罹患を予防できます。
現在、12歳となる日の属する年度の初日から16歳となる日の属する年度の末日までの間にある女子はHPVワクチンの接種を公費(定期接種)で受けられます。
また、1997年4月2日から2008年4月1日までの間に生まれた女子に対してもキャッチアップ接種(公費)が実施されています。
なお、キャッチアップ接種の実施期間は令和7年3月31日までとなっており、接種を完了するためには半年程度要することにご注意ください。
<2024年10月以降について>
・HPVワクチン「キャッチアップ接種」は2025(令和7)年3月までです。
・接種は合計3回です。接種のスケジュールなどについてご不明な点やご相談があれば、お住いの市町村へお問い合わせください。
日本医師会 公式YouTube動画
子宮頸がんを予防するワクチンの疑問に答える座談会
都内在住の高校生母娘3組に集まって頂き、子宮頸がんを予防するワクチン(HPVワクチン)について、「子宮頸がんはどうしてなるのか」「2価、4価、9価のワクチンの効果と副反応の出現率の違い」「重い副反応が出た時の対処法」などの質問に対して、釜萢敏副会長が回答いたしました。 |
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教えて!日医君!HPVワクチン2~知っていますか?若い世代に増えている子宮頸がん~
本動画は、子宮頸がんの予防に効果があると言われるワクチン、特に新たに接種できるようになった9価のHPVワクチンのことや、これまでワクチン接種の機会を逃してしまった方のためのキャッチアップ制度について、日本医師会公式キャラクターの「日医君」の質問に、日本医師会常任理事の釜萢敏先生が回答する形式で分かりやすく解説します。 |
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教えて!日医君!~ HPVワクチン~
本動画は、今年の4月から子宮頸がん等を予防するためのHPVワクチンの積極的な勧奨が再開されたことを受けて、子宮頸がんとHPVワクチンについて、日本医師会公式キャラクターの「日医君」の質問に、日本医師会常任理事の釜萢敏先生が回答する形式で分かりやすく解説します。 |
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HPVワクチンキャッチアップ接種に関する啓発資料
2024年7月特別企画「HPVワクチンの接種を考えている同世代の方へ~キャッチアップ接種対象世代の学生の声をお届けします~」
【都道府県医師会宛て通知】R6.7.31 HPVワクチンのキャッチアップ接種に関する啓発資料について
公費でHPVワクチン接種ができる「キャッチアップ接種」を希望される方は、2024(令和6)年9月末※までに初回接種をお受けください。
※事務局注・・・製作時点の文言となっています。2024(令和6)年10月以降の接種のスケジュールなどについてご不明な点やご相談があれば、お住いの市町村へお問い合わせください。
- キャッチアップ接種は、2025(令和7)年3月31日までとなっており、接種は3回で、完了するためには半年程度かかるので、2024(令和6)年9月末までに初回接種をする必要があります。
- そこで、現在接種を悩まれている方への情報提供として、キャッチアップ接種の対象世代である学生の方の声をお伺いしてみました。
協力:福岡県立大学看護学部 養護教諭課程・松浦賢長教授ゼミの皆さん(19歳~22歳)
ヒアリング編
みなさんはキャッチアップ対象世代(17歳~27歳)ですが、HPVワクチンの接種の有無について教えてください。
キャッチアップ接種について知っていますか?
20代の女性のがんの過半数は子宮頸がんであることなどについてご存じですか?
ワクチンを接種しようと思った理由やきっかけは?【接種をした方(と予定している方)に伺いました】
- 無料接種できるから/市から無料接種券が送られてきたから
- 母親に勧められたから(親に言われているから)。
- 子宮頸がんを予防できるから/ワクチンが有効ということを学ぶ機会があったから。
- 子宮頸がんにかかる人が多いと聞いた/家族でテレビを見た時に話題になっていて家族とも話したから、学ぶ機会があったため/ワクチンを打ったらその病気にかかるリスクが下がることを知ったから/少しでもがんになる確率が減るなら。
- 医師の勧め/授業に来てくれた医師や、かかりつけ医に勧められたから。
ワクチンを接種していない理由・悩んでいる理由は?【接種していない方・悩んでいる方に伺いました】
- 親にする必要がないと言われた。とても受けにくいです。
- 子宮頸がんの体験談を聞き、打った方がよいかもと考えたが、副反応について本当か否かわからないから/ワクチンには副反応があるから打たないほうがいいと言われたから。
- 注射が苦手。
HPVワクチンについて知りたいこと・疑問点は?
- 副反応について/安全性/副反応が怖いからと親に言われて悩んでいます。
- 接種によるメリットや副反応の有無について詳しく知れたらもっと安心して受けられたと思いました。
- すべての子宮頸がんのワクチンのうち何割予防できるのか。
- 何回打てばいいのか?
- 将来養護教諭になったとき、保護者や生徒に「副反応が心配で接種したくない」と相談されたとき、うまく説明できるかが不安です。
接種を受けるか迷っている方へのメッセージをお願いします。
- 無料でワクチンを打てて、がんを予防できるなら打った方がいいと思います。
- がん発症と副反応の確率性を考慮すると打った方がいいと思う。
- 接種によってリスクを少しでも減らすことができるので受けるか迷ってる方はぜひ接種してみてください。
- ワクチンを通して、防ぐことのできるがんを予防し、健康的な生活を送りましょう!
- 噂やイメージにとらわれず、HPVに感染するリスクと、話題になった副反応が出るリスク、どちらが大きいのか正しい情報を得た上で、接種することを考えてみてほしいです。
- 副反応のリスクで悩んでいる人は、重大な副反応のリスクよりも、子宮頸がんで亡くなるリスクの方が高いことを知ってほしいです。(母の言葉、接種を強制するものではない。)
- 副反応を心配して打たないより打って命を守るほうが重要だと思います。
- 副反応はありませんでした。
解説編
① キャッチアップ接種とは
- 定期接種の対象であった方々の中には、HPVワクチンの公費での接種機会を逃した方がいらっしゃいます。こうした方に、公平な接種機会を確保する観点から、通常の定期接種の対象年齢(小学校6年生~高校1年生相当)を超えて、あらためて公費での接種の機会が自治体において提供されています。
- 平成9年度~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性で、過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方が対象です。対象者は、令和4(2022)年4月~令和7(2025)年3月の3年間、HPVワクチンを公費で接種できます。
- 公費で接種できるHPVワクチンは3種類(サーバリックス、ガーダシル、シルガード9)あり、HPVの中でも子宮頸がんをおこしやすい種類(型)であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。
決められた間隔をあけて、原則同じワクチンを合計3回接種します。
標準的な接種間隔では、3回の接種に6カ月を要するため、公費で接種を完了するための初回接種のタイムリミットは、2024(令和6)年9月末となります。
② HPVワクチンの効果はどのくらいあるのか?
- 2価ワクチン(サーバリックス)と4価ワクチン(ガーダシル)は、子宮頸がんの原因の50~70%、9価ワクチン(シルガード9)は、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぎます。
③ 接種方法について
- HPVワクチンは、「筋肉注射」という方法で接種します。接種を受けた部分の痛みや腫れ、赤みなどの症状が起こることがあります。
- 接種を受けた部分の痛み(疼痛)は、50%以上の頻度で発生するとされていますが、多くの場合は数日程度でおさまります。
- 接種後に体調の変化や気になる症状が現れたら、まずはワクチンを受けた医療機関などの医師にご相談ください。
④ HPVワクチン接種後に副反応はあるのか
- HPVワクチン接種後に見られる主な副反応として、発熱や接種した部位の痛みや腫れ、注射による痛み、恐怖、興奮などをきっかけとした失神などが挙げられます。
【HPVワクチン接種後の主な副反応】
発生頻度 | 2価ワクチン(サーバリックス®) | 4価ワクチン(ガーダシル®) | 9価ワクチン(シルガード®9) |
---|---|---|---|
50%以上 |
|
疼痛* | 疼痛* |
10~50%未満 |
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腫脹*、紅斑*、頭痛 |
1~10%未満 | じんましん、めまい、発熱など | 頭痛、そう痒感*、発熱 | 浮動性めまい、悪心、下痢、そう痒感*、発熱、疲労、内出血*など |
1%未満 |
知覚異常*、感覚 |
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嘔吐、腹痛、筋肉痛、関節痛、出血*、血腫*、倦怠感、硬結*など |
頻度不明 |
|
失神、 |
感覚鈍麻、失神、四肢痛など |
サーバリックス®添付文書(第14版)、ガーダシル®添付文書(第2版)、シルガード®9添付文書(第1版)より改編
*接種した部位の症状
- また、ワクチン接種後に見られる副反応が疑われる症状については、接種との因果関係を問わず収集しており、定期的に専門家が分析・評価しています。
その中には、稀に重い症状の報告もあります。 - 具体的には次の表のとおりとなっています。
病気の名前 | 主な症状 | 報告頻度※ |
---|---|---|
アナフィラキシー | 呼吸困難、じんましんなどを症状とする重いアレルギー | 約96万接種に1回 |
ギラン・バレー症候群 | 両手・足の力の入りにくさなどを症状とする末端神経の病気 | 約430万接種に1回 |
急性散在性脳脊髄炎(ADEM) | 頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気 | 約430万接種に1回 |
複合性局所疼痛症候群(CRPS) | 外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気 | 約860万接種に1回 |
(※2013年3月までの報告のうちワクチンとの関係が否定できないとされた報告頻度)
⑤ 定期接種の対象年齢(高校1年相当まで)を過ぎても、接種効果はあるか
- 16歳頃までに接種するのが最も効果が高いですが、それ以上の年齢で接種しても、一定の有効性があることが、国内外の研究で示されています(※)。
- なお、定期接種の対象年齢を過ぎてからの接種について、安全性に関する明らかに懸念となることは示されていません。また、定期的に検診を受診することも大切です。検診を定期的に受けることで、がんの早期発見・早期治療につながります。さらに、性的接触によってもHPV感染は起こるため、パートナーとともに性感染症の予防も忘れずに行いましょう。
-
(※)ワクチンが子宮病変を予防する有効性は、おおむね16歳以下の接種で最も高いものの、20歳頃の初回接種まではある程度有効性が保たれることや、性交経験がない場合はそれ以上の年齢についても一定程度の有効性があることが示されています。性交経験によるHPV感染によって、ワクチンの予防効果が減少することが示されていますが、性交経験がある場合でも、ワクチンの予防効果がなくなってしまうわけではありません。
HPVワクチンの対象年齢を過ぎてからの接種の有効性などに関するエビデンスについて、以下をご参照ください。第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料5-2
アドバイス編
- あなたの未来の子宮頸がんのリスクとなるHPVを考える一助に
- 濵口 欣也(はまぐち きんや)常任理事(周産期担当)
子宮頸がんの多くはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であることが判明しており、一生に一度は感染機会があると言われ、一部の人でがんになってしまうことがありますが、HPVワクチン接種によりその多くが予防できるといわれています(海外や日本で行われた疫学調査において、HPVワクチンを導入することにより、子宮頸がんの前がん病変を予防する効果が明白に示されています)。
早期に発見すれば、子宮頸がんは治癒可能な予後の良い病気ですが、病態が進行すると治療は難しくなるため、ワクチン接種による事前の予防と両輪で、(20歳以上の方の)検診による早期発見・治療に結び付けていくことが大変重要です。
接種が進んでいる国では、子宮頸がんそのものを予防する効果があることもわかってきており、カナダ、イギリス、オーストラリア等では女性の8割以上がHPVワクチンを接種しています。
是非ご自身の体のこととして、ワクチン接種や検診にご関心を持っていただきたいと思います。
- 接種に係る様々なご心配・ご相談は、お気軽にかかりつけ医へ
- 笹本 洋一(ささもと よういち)常任理事(感染症危機管理対策・予防接種担当)
キャッチアップ接種を公費で受けるためには、初回接種を、2024(令和6)年9月末までに受ける必要があります。
接種を悩んでいる方の理由として、「副反応」の声が挙げられました。どのワクチンの予防接種にもメリット(病気を防ぐ効果)とデメリット(副反応)があります。
HPVワクチンでは、筋肉注射後の接種部分の痛みや腫れ、赤みなどの症状が起こることがあります。また、ワクチンの接種を受けた後に、ごくまれに重い症状(重いアレルギー症状、神経系の症状)が起こることがありますが、厚生労働省から各種データやQ&Aを公開しているので、是非ご覧いただき、少しでも疑問に思うことを無くしていただきたいと思います。
ワクチン接種について何かご不明点があれば、接種を実施する医療機関の医師に、お気軽にご相談ください。
- 指導教官より「ご家族に向けた接種メリットの情報発信も大切です」
- 福岡県立大学 看護学部 松浦 賢長(まつうら けんちょう)教授
この度、福岡県立大学看護学部の養護教諭課程で学ぶ学生27名(3年生・4年生)を対象とした任意のヒアリングを実施しました。(回答数25名:回答率92.6%)
すでにHPVワクチンの接種を済ませている(定期接種・キャッチアップ接種を含む)、もしくは、キャッチアップ接種の期間中に「接種予定」とする学生が多いことがわかりました。
一方で、接種を予定していない学生も存在し、今回のケースでは、その背景にご家族からの忌避的意見があることを読み取ることができました。
接種した(接種をこれから予定する)学生においても、ご家族からの勧め(や意見)は本人の意思決定に大きな影響があり、成年に達している大学生とはいえ、保護者世代への働きかけが重要なことがわかりました。
なお、福岡県立大学では、大学をあげてキャッチアップ接種勧奨に取り組んでいます。
具体的には近隣の総合病院の医師からのご提案(本学学生向けの接種日の用意)に対し、接種機会を用意いただいていることの周知を複数のルートにて全学生に向けて行っています。
無償にて接種できる期間が残り少なくなってきている今、多くの若い方々がこの機会を活用し、健康的な生活を享受できることを願っています。
おわりに
- ワクチンの「効果」と「副反応」の両方を十分に理解してから接種をしてください」
- 釜萢 敏(かまやち さとし)副会長
ワクチン接種は、ご自身が判断することが大前提です。
HPVワクチンによるがん予防の科学的根拠があることと、接種後にまれに副反応が起きうること等について、「知った上で打たないことと、知らずに打たない」という選択は、大きく異なります。
将来妊娠を希望される方は、子宮頸がんになると、早産のリスクや手術による子宮切除をする可能性があること、接種後の健康上の被害があった際は、国の救済制度があること等も接種を判断される上で重要な情報です。
日本医師会では、HPVワクチンについての各種情報提供や、詳細に説明した動画を日本医師会公式WEB(及びYouTubeチャンネル)で公開しています。
引き続き科学的根拠に基づく分かりやすい情報を皆様に提供してまいります。
福岡県立大学看護学部 養護教諭課程・松浦賢長教授ゼミの皆さま、ご協力ありがとうございました。皆さんの今後のご活躍を期待しています。