日本医科学生総合体育大会
東医体運営本部長西医体運営委員長対談!(前編)
コロナ禍の医体運営
太田(以下、太):僕が東医体の運営本部長になったのは、新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年6月頃のことでした。東医体評議員をしている同じ水泳部の一学年上の先輩から、僕たちの学年の中から一人、運営本部長を選ぶように言われ、相談の結果、僕が選ばれたのです。
西医体では、運営委員長はどのように決めたのですか?
有馬(以下、有):僕たち鹿児島大学は、2018年に当時の主管校から、西医体の運営委員を選出するよう言われました。委員が30人ほど選出され、それぞれ希望の役職を選んでいくなかで、運営委員長はなかなか決まらず、僕が立候補しました。鹿児島大学が主管になる機会は40年に1回くらいです。委員をやるからには、絶対に成功させたいと思いました。
太:お互い早い時期に役職に就いていたのですね。僕はその後、昨年の第63回東医体の運営本部の会議を何度か見学させてもらう機会がありました。運営本部の入念な準備の様子を見ていたので、前回大会の中止が決まった時は先輩たちのこれまでの姿を思い出し、悔しさを感じました。
有:僕も前回大会の中止が決まった際、同じような思いを抱きました。しかし、最も強く感じたのは、運営の引き継ぎへの懸念でした。まだ心の準備ができていないなかで一足先に自分たちの番になってしまったという、心配の方が大きかったのです。例年では、前年大会の実際の状況を踏まえたうえで、運営上の様々な判断や予測ができたのですが、今年はそれができなくなってしまいました。自分たちが運営委員の一員として本格的に携わるようになる前の、前々年度のデータしか残っていないことには、やはり不安があります。
中止を視野に入れながらも
太:東医体は、主管校の多くが東京都内の大学ということもあり、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、東医体運営理事長から「先代の運営本部長から大会中止の手続きを確認しておくように」という指示も受けています。会場は予約していますが、キャンセル料もあるので、中止が決まればなるべく早く、その準備や調整に動き出さなければなりません。
もし中止になってしまったら、金銭面以上に、目標を見失ったことによって、学生たちが虚無感を抱くのではないかという不安が大きいです。また、たとえ開催できたとしても、部活動を十分にできていない大学が多いので、パフォーマンスが落ちてしまう可能性も危惧しています。
有:西医体運営本部は、現在は開催する方向で動いています。昨年は新型コロナウイルス感染症が感染拡大して何の対策もできない状態のまま4月に入ってしまい、やむなく中止にせざるを得ませんでしたが、現在はある程度感染症対策が確立されつつあります。また、ワクチンにも期待できそうな状況なので、夏になれば実施できるのではないかという希望を抱いています。ただ、一番心配なことは、せっかくここまで準備をしていたのに、直前になって中止を余儀なくされてしまうことですね。
太:大会開催に向けてどのような点に留意していますか?
有:理事長から、大会の遂行よりも感染症対策を重視することを強調されました。医学生という立場である僕たちが、不用意に大会を開き、さらに感染を拡大させてしまうという事態を招かないためにも、安易に開催することはできません。そのため、今年から特別に、運営本部に感染症対策委員を立ち上げました。大学病院の感染防御の先生と協力しながら、西医体独自の感染症対策マニュアルを作成し、それを順守する形で進める方針です。
太:西日本の各大学では、部活動は現在どのような状況なのでしょうか。
有:各大学の評議委員を通して各大学の現在の活動状況を調査したところ、半数は活動できておらず、かつ今後も部活動再開の見通しが立たないという結果でした。これは逆に言えば、残り半数は活動できているか、活動再開の目途が立っているということになります。なので、西医体の場合、部活動ができていないことは大会中止の根拠としてはやや薄弱だと考えています。
運営理事長からも、学生の意見を重視するよう助言を受けているので、2月にまた調査をするつもりです。その調査結果も加味して、開催の有無について総合的に判断したいと考えています。2年続けて大会が開催できないとすると、今後、西医体の伝統を知るメンバーがいなくなってしまう可能性もあります。そうならないよう、できるだけ大会を開催したいと、昨年の運営委員長とも話し合いました。
日本医科学生総合体育大会
東医体運営本部長西医体運営委員長対談!(後編)
東西医体の代表として
太:大会運営にあたっては、学生の声を聞くことも大切ですよね。僕自身、昨年は一人の選手として「今度こそいい記録を出すぞ」という意気込みで練習していたので、東医体が中止になったときは悲しかったですし、部内でも全員が落ち込んでいました。ですが今年はどちらかというと、選手としてよりも運営本部長としての不安のほうが大きいので、一人の選手の立場から大会のことを考える余裕があまりなかったように思います。
もし東医体を中止することになれば、自分の名前でその発表を出すことになるので、大きな責任も感じています。
有:僕も、昨年の大会が中止になった時は、選手として「これまで練習してきたのに」と残念な気持ちが強かったのですが、運営側に立つ今年は、何よりも大会のために鹿児島に来てくれる学生に悲しい思いはさせたくないと考えてしまいます。
特に、来年6年生になる先輩が部活動に取り組む姿などを見ていると、6年生が大会に懸ける思いは自分の思う以上に強いのだなと感じます。多くの選手の思いを背負っていると考えると、大会中止の判断は辛いですね。6年生の思いを大切にしたい反面、感染を拡大させるわけにはいかないというジレンマがあります。
一方で、医体のような大きい事業の運営に携わるということはなかなかできないので、貴重な経験ができているとも感じています。今後、後輩が僕たちについて「第73回西医体の運営委員や、第64回東医体の運営本部はすごかった」と語るのか、それとも「コロナ禍で仕方ないけれども、ちょっと頼りない先輩たちだったよね」と語るのかは、自分たちのこれからの大会運営にかかっているので、身が引き締まる思いです。
太:僕も同じ気持ちです。今日は同じ悩みを共有する有馬さんとお話しできてよかったです。最後は「大変な状況下でも、すごく頑張ってくれた委員だったね」と言ってもらいたいですね。
有:そう言ってもらえるよう、お互い頑張りましょう。
太田 拓也
東日本医科学生総合体育大会 運営本部長
東京医科大学2年生
有馬 悠平
西日本医科学生総合体育大会 運営委員長
鹿児島大学3年生
東医体と西医体
東医体と西医体は、歴史や開催競技のほか、運営体制にも違いがあります。
東医体では四つの大学が主管校となり、各大学が競技を分担して競技実行委員を務めます。主管校のうち一大学に全体指揮を執る運営本部長が、それ以外の三大学にはそれぞれの大学をまとめる運営部長がいます。
西医体の場合、運営は主管校一校でほぼ完結し、運営委員長が指揮を執ります。各競技の責任者は原則、主管校の学生が務めますが、主管校に該当部活が無い場合、他大学に運営を依頼する「移幹」を行います。
※この対談は2021年2月にオンラインで実施しました。医学生の学年は取材当時のものです。
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