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令和7年(2025年)5月5日(月) / 日医ニュース

医療人材マッチングの好事例を共有

松本会長松本会長

松本会長松本会長

 シンポジウム「医師会の創"医"工夫~医療人材確保に向けて~」が4月4日、日本医師会館小講堂でWEB会議のハイブリッド形式で開催された。
 本シンポジウムは、医療人材不足が深刻化する中、医療機関と求職者を結び付ける独自の取り組みを展開している郡市区等医師会の事例を全国の医師会と共有し、地域医療の維持・確保に貢献することを目的に初めて開催されたものである。

 宮川政昭常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、まず、2040年にかけて高齢者人口が増加していく一方、主力となる生産年齢人口は減少し、地域医療を支える医療人材の確保はますます厳しくなると指摘。「その解決に当たっては、多角的な視点からのアプローチが不可欠である」とした上で、タスクシェアの推進やAI、ICTの活用による医療従事者の負担軽減、地域医療を支える医師・コメディカルの育成、働きやすい職場環境の整備など、さまざまな施策を推進していくことが、医療人材の確保と定着につながると説明した。
 また、地域医師会が中心になって行う医療機関と求職者のマッチングについて、医療機関の負担を軽減し、地域に密着した情報発信等ができることが最大のメリットとの見方を示すとともに、マッチングの好事例を横展開することで人材確保が進むことに期待感を示した他、日本医師会としても各種取り組みを進めていく姿勢を示した。
 引き続き、(1)川崎市医師会、(2)名古屋市医師会、(3)神戸市医師会、(4)福岡市医師会―がそれぞれ、人材確保に向けた取り組みを発表した。

250505e2.jpg (1)では、岡野敏明川崎市医師会長が、LINEを使った独自のマッチングサービス及び医療求人情報の提供サービスについて紹介。増大する採用経費により、人材確保や賃上げが困難になる中、①有用な医療人材に身近な医療機関で働いてもらい、地域医療に貢献してもらう②埋もれている有用な医療人材を掘り起こす③医療機関における人材確保のための労力と経済的負担を軽減する④市内で医療業務に従事したい人に、まず医師会の情報コーナーを見るという認識を広める―ことを目的に、市の後援の下で事業を開始したことを説明した。
 また、求人情報が掲載される公式LINEへの登録を促すためのプロモーション施策としては、公式Instagram等のオンライン施策と、市内へのポスター掲示等のオフライン施策の両面から行っているとした。
 岡野川崎市医師会長は、今後の課題として、「費用対効果の判断基準」「看護協会との連携強化、他医療関係団体との連携強化」「会員外の掲載費用の徴収(会員は原則無料)」を挙げ、将来的に全国の医師会がそれぞれのホームページで人材募集に取り組み、"医療関係の職に就きたい方は、地域の医師会のホームページを見れば良い"という意識付けが全国展開されることに期待感を示した。

250505e3.jpg (2)では、山根則夫名古屋市医師会長が、同市医師会求人サイト「名古屋de医療のおしごと」について紹介。働きたい医療従事者を各医療機関が24時間365日いつでも応募受付できる仕組みが特徴とした上で、同市医師会看護専門学校の閉校が決まった段階で、今後の看護師等の人材確保が困難になると想定されたことから、会員の声を踏まえ、全国の医師会初の試みとして専用の求人サイトを立ち上げたと説明した。
 更に、制作費用・運営費用は現状全て医師会で賄えていることや登録状況等を概説するとともに、求人情報を集約している「求人型アグリゲーションサイト(例:indeedなど)」に掲載している情報が、多くの人の目に触れることの重要性を強調した。
 山根名古屋市医師会長は、今後の課題として、運営費用・利用料金の見直し及び、利用医療機関の増加やサイトの知名度向上を挙げた他、新たに愛知県看護協会との連携の下、潜在看護師のスポットワーク事業の立ち上げを進めており、クリニックの緊急のニーズへの対応が進むことに期待感を示した。

250505e4.jpg (3)では、堀本仁士神戸市医師会長が、同市医師会の医療従事者専用求人サイトの運営について紹介。前述の運用実績があった名古屋市医師会から直接話を聞きながら準備を進め、本年2月から求人サイトの運用を開始した経緯を説明した。
 堀本神戸市医師会長は、名古屋市医師会のアドバイスを踏まえ、「サイトをいかに市民に周知できるかが成否のカギ」との認識の下、広報を重視していることを強調。市やローカル紙の協力も得ながら周知に努めているとし、特に新聞に掲載されることの影響は大きいとした。
 また、今後の課題として、①登録医療機関の増加②広報活動の継続③行政との連携④サイトの充実―を挙げ、医師会で運営し、行政が後援する信頼性の高い同サイトを通じて、地域の医療環境充実に貢献していく姿勢を示した。

250505e5.jpg (4)では、菊池仁志福岡市医師会長が、福岡市医師会の監修による求人マッチングプラットフォーム「for-us」のサービス概要とその運営について紹介。その特徴として管理者の負担が少ない方法で運用でき、医療機関と求職者でマッチングを行い面接日程の確定等もできることを挙げ、会員が抱える①応募がない②ミスマッチによる離職・トラブル③高額な仲介手数料―の問題にも対応していると説明した。
 また、職業安定法の「募集情報等提供事業」に分類されるため、原則人材紹介の免許や「有料紹介事業所」の届け出が不要であることや、若い世代はマッチングサイトの基本的な使い方を理解している人が多いこと等もメリットであるとした。
 更に、菊池福岡市医師会長は、看護協会やハローワーク等との連携の重要性も指摘。特に潜在看護師の復職支援については、知識等に不安を抱えている求職者も多いことから、リスキリングの視点が必要であり、医師会として協力できるよう準備を進めているとした。
 その後の質疑応答では、出席者からの質問に対して、日本医師会役員及び講師が回答した。
 総括した角田徹副会長は、SNSの活用や行政との連携による利用者の安心感の醸成及び医師会の負担が少ない形での事業運営がポイントとした上で、日本医師会も女性医師バンクの更なる充実を図っていく考えを示した。
 当日は、25の都道府県医師会と56の郡市区等医師会、合計で81の医師会からの接続があった。なお、シンポジウムの模様は日本医師会ホームページに掲載中。

◆シンポジウム 「医師会の創"医"工夫~医療人材確保に向けて~」
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