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令和7年(2025年)6月20日(金) / 日医ニュース

「地域医療構想」をテーマとして活発な討議

「地域医療構想」をテーマとして活発な討議

「地域医療構想」をテーマとして活発な討議

 令和7年度第1回都道府県医師会長会議が5月20日、日本医師会館大講堂で開催され、「地域医療構想」をテーマとして活発な討議が行われた他、日本医師会から中央情勢報告等を行った。
 本会議は、都道府県医師会を六つのグループ(A~F)に分け、毎回一つのグループを中心にテーマに則した議論を行うとともに、全体討議の後、都道府県医師会から事前に寄せられた同テーマに関連する質問に執行部から答弁する他、中央情勢等について報告する形で今年度3回の開催を予定しているが、今回がその1回目となった。
 会議は城守国斗常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は、医療法等の一部改正に向けた国会審議の現状やこれまでの日本医師会の対応について説明した上で、今後の予定を見据えた活発な議論を求めた。

Dグループによる討議及び全体討議

 その後、加納康至大阪府医師会長が進行役を務め、「地域医療構想」をテーマとしたDグループ(北海道、千葉県、石川県、静岡県、大阪府、鳥取県、長崎県)による各県の報告と討議が行われた。
 北海道医師会は、人口10万人対医師数が全国平均を下回り、二次医療圏における極端な格差があることなど、深刻な医師偏在の状況を説明し、厚生労働省が示した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」の実効性に疑問を呈した。
 千葉県医師会は、近未来の人口減少と高齢化率の上昇を踏まえ、地域医療構想調整会議で将来の医療機能について検討していることを報告。国立病院の一部再編や、民間病院では急性期病棟が慢性期病棟、高齢者施設へと転換されるなど、過去10年間の医療環境の変化に触れ、現状に即した形に変化しつつあることから、地域医療構想は病院経営の方向性を示すという意味でも評価できるとした。
 石川県医師会は、震災後の地域医療の状況や物価高騰と人件費上昇による病院経営の圧迫などの現状を説明するとともに、四つの公立病院の救急・入院機能を集約させた新病院の建設計画や一般外来をサテライト化する方向性を明らかにした。
 また、かかりつけの医療機関が無くなってしまうなど、地域医療に対する住民の不安があることから、その払拭(ふっしょく)に向けた取り組みなども紹介した。
 静岡県医師会は、持続可能な在宅医療提供体制の確保に懸念を示した上で、「地域包括ケア推進ネットワーク会議」で新たな地域医療構想について協議するに当たり、財源確保を含め、2040年の地域医療提供体制をどのように描いていくのか、その方向性を日本医師会が示して欲しいと要望した。
 大阪府医師会は、民間病院中心の医療提供体制となっている大阪の課題や取り組みを説明した上で、医療機能の分化と連携、医療機関の役割について再定義を行う重要性を強調。持続可能な医療提供体制の確保に向けて、地域医療の現場の実態を反映した政策とする必要性を訴えた。
 鳥取県医師会は、医療需要の減少や必要病床数と病床機能の確保、介護分野との連携不足、医師の高齢化、人材確保の問題など、さまざまな課題を挙げ、国に対して地域枠定員数の見直しと病院の経営安定化への仕組みの導入を求めるよう要望した。
 長崎県医師会は、情報共有ツールとして活用している地域医療情報ネットワーク「あじさいネット」について、行政支援・補助金削減の懸念やサーバー更新費用の発生などにより存続の危機にあるとして、地域医療介護総合確保基金の活用を求めた他、離島が多いことを踏まえてモバイルクリニックの実証実験やドローンを使用した薬の配送などの取り組みを行っていることを紹介した。
 全体討議では、現行の地域医療構想の総括及び検証を求める要望や、「医療圏ごとに疾病別の視点で医療機能の必要性を考えるべき」「住民に寄り添う病院機能のあり方として集約化だけで良いのか、分散化もすべきなのかなど、地域ごとの課題を共有すべき」「医療介護連携を進めていく上で、看取りに対する意識を国民にもってもらうためのACPの啓発は国家事業として捉えるべき」といった意見が出されるなど、活発な意見交換が行われた。

都道府県医師会からの質問に執行部より答弁

 引き続き、都道府県医師会より事前に寄せられた(1)新たな地域医療構想等、(2)医師の偏在対策―の質問に対して、それぞれ担当役員から回答を行った。
 (1)では、江澤和彦常任理事が地域医療構想の現状とその評価及び、新たな地域医療構想の方向性や地域医療構想調整会議の重要性などを解説。都道府県医師会がリーダーシップを発揮するよう要望した。
 (2)では、今村英仁常任理事が医師偏在対策の背景や日本医師会の基本的な立場、国が示している「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」の概要などを説明。その上で、医師偏在対策の推進策や医師偏在指標に対する見解を示し、将来的な医療提供体制の構築に向けて地域の実情に応じたアプローチの必要性を強調した。

日本医師会からの中央情勢報告等

 まず、「令和7年診療所の緊急経営調査」については城守常任理事が、厚労省における医療法人の経営状況の調査分析を基に病院・診療所共に令和4年度と比較したところ、令和5年度の経常利益率は低下しており、令和6年度の機械的推計においても経常利益率の最頻値がマイナスとなっていることなどを説明。「日本医師会としても、令和8年度診療報酬改定に向けて幅広く医療機関の経営状況を把握するため、本調査を実施することにした」とその趣旨を説明し、理解と協力を求めた。
 ベースアップ評価料の届出に関しては、長島公之常任理事が4月末時点の診療所の算定率が4割弱であることを報告。「次期診療報酬改定に向けて、診療所も厳しい経営状況であること等を証明するためにも5割以上を目指していきたい」と改めて届出を促すとともに、算定医療機関が提出する「賃金改善実績報告書(診療所用)」が大幅に簡素化されたことなどを説明した。
 日本医師会会費減免対象者の拡大については、城守常任理事が令和8年度から病気や留学等を理由に医学部卒後5年間を経過した臨床研修医の会費減免の適用を延長する方針を、4月15日開催の第1回理事会で協議の上で決定し、6月22日の第159回日本医師会定例代議員会の議案として諮ることを報告。また、公益法人制度改革に向けて日本医師会における外部理事・外部監事の選任に係る対応に関しては定款改正は行わず、従来どおり理事・監事候補を各ブロックから推薦頂き、そのうちの1名を外部理事・監事候補とする考えを説明した。
 その他、健やか親子支援協会からは「2025大阪・関西万博」に関して、同協会が主催する難病こども支援「万博おでかけプロジェクト」の内容についての説明がなされた。
 最後に、閉会のあいさつを行った松本会長は、5月14日に開催された「国民医療を守る議員の会」総会で取りまとめられた決議を基に石破茂内閣総理大臣に直接、対応を求める予定であることを報告(別記事参照)
 また、医療DXについては、その性急な推進に伴う問題に触れ、改めて日本医師会が考える医療DXの進め方を説明するとともに、電子カルテの義務化には反対の意向を示した。
 その他、地域医療構想及び医師偏在対策については、本会議での意見を踏まえて今後もしっかり取り組んでいく姿勢を示し、理解と協力を求めた。

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