組織強化を目指して
日本医師会では組織強化を最重要課題の一つに掲げていますが、今号ではその必要性に関する会員の先生からの特別寄稿をご紹介します。
アメリカのジョン・F・ケネディ大統領は、1961年の就任演説でこう語りました。
"Ask not what your country can do for you ― ask what you can do for your country."
(国があなたに何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何ができるのかを問うのです。)
この言葉は、多くのアメリカ人に影響を与え、公共のために貢献する精神の醸成を促してきたものとして知られています。翻って、これは政治の場面だけでなく、私達医療の世界にも当てはまるのではないでしょうか。「医師会って何をしてくれるの?」「入るメリットはあるの?」と問われることもあろうかと思います。そして、日本医師会員の先生方は、あれこれメリットを説明することもあるかも知れません。
そこで、ちょっと視点を変えてみてはどうでしょうか。診療報酬や医療制度は、私達の働き方や患者さんへ提供する医療を大きく左右します。しかし、そうした制度を決めるのは、私達医師ではなく政治の場です。私達が現場でどれだけ頑張っても、制度が変われば、嫌でもそれに従わなければなりません。そうした時に、医師の意見を政策決定の場へ届ける役割を担っているのが、日本医師会です。「医師一人の声が政策に届くわけがない」と思うかも知れません。でも、だからこそ組織が必要なのです。医師がバラバラでは、声はかき消されてしまいます。
日本医師会が作成した「令和6年度都道府県別医師会入会率(令和7年1月)」によると、日本医師会の全体の組織率は51・6%にとどまっています。勤務医全体で見れば、郡市区等医師会加入率が45・3%で、都道府県医師会加入率は40・6%、日本医師会への加入率は34・6%とぐっと低下しており、たった3分の1なのです。勤務医3人のうち1人しか日本医師会員がいないのです。
この数字が何を意味するか―組織率が低ければ、国に対する発言力も低下してしまいます。もちろん、「医師会はこうあるべきだ」と思うところもあるでしょう。完璧な組織など存在しません。もし不満があるなら、外から批判するだけではなく、中に入って変えていくこともできるはずです。最近は、医師会の三層構造の問題を軽減するために、MAMIS(医師会会員情報システム)が導入され、異動の手続きもスムーズになりました。「医師会異動が面倒」と思っていた若手医師にとっても、以前より柔軟に医師会へ関わる道が開けています。
ケネディの言葉を借りるなら、「医師会があなたに何をしてくれるのかではなく、あなたが日本の医療界の未来のために何ができるのかを問うのです」―この視点を持つことが、私達令和時代の医師に求められているのではないでしょうか。日本医師会未入会の先生方にも、ぜひ合流を考えて頂きたいと思います。
皆で声を上げ、より良い医療を共に創っていきましょう。