都道府県医師会自賠責保険担当理事連絡協議会が、自賠責保険診療費算定基準(いわゆる「新基準」)についての再確認及び制度化に向けたこれからの取り組みなどを伝達することを目的として、10月11日にWEB会議形式で開催された。
連絡協議会は細川秀一常任理事の司会で開会。
冒頭あいさつした松本吉郎会長は、まず、自賠責保険を中心とした交通事故診療に関して、昭和59年の国の自動車損害賠償責任保険審議会(自賠審)の答申を受け、新基準の策定において、日本医師会が主導となりその中心的な役割を果たしてきたことを紹介。
その上で新基準について、国の審議会の答申において、「全国的に浸透し、定着した段階で制度化を図る」ことがうたわれ、平成27年に全ての都道府県で新基準が採用された一方、各地域の採用状況にはばらつきがあり、全国的な採用率も横ばい傾向となっているとして、将来的な新基準の制度化を見据え、地域での採用率の向上を図ることが本連絡協議会の目的であることを説明した。
三者合同でアンケート調査を実施へ
続いて、自賠責保険担当の細川常任理事から、平成11年以来の開催となった本協議会に係る経緯や新基準の趣旨等について説明が行われた。
同常任理事は、まず、自賠責保険担当理事連絡協議会の新基準に関わる開催は、昭和62年から始まり、直近では平成11年に、主に新基準の未実施医療機関への協力などを目的に開催されていたことを紹介した。
次に、新基準の歴史的背景として、昭和40年代、交通事故の診療費は、自賠法、関係政省令・通知にその基準が示されておらず、各地域、各医療機関によってその請求額に格差が生じていたことから、当時の大蔵大臣の諮問機関である自賠審が、日本医師会、日本損害保険協会(損保協会)、自算会〔現、損害保険料率算出機構(損保料率機構)〕に対して診療報酬基準案作成を求めたとした。
新基準の「自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準に準拠し、薬剤等『モノ』についてはその単価を12円とし、その他の技術料についてはこれに20%を加算した額を上限とする」こと、また、健康保険よりも充実した診療内容であるとともに、三者〔日本医師会、損保協会、自算会(現、損保料率機構)〕合意による診療報酬算定方法であるため、紛争解決の機能があることなどを説明した。
その上で、「今後は三者共同で制度化に向けた現状の障壁を分析・検討し、普及促進策・方針を明確にしていきたい」と述べ、自賠責保険診療を担う医療機関に対してアンケート調査を実施することを表明。そして来年度にも本連絡協議会を開催し、調査結果及び普及促進策・方針を報告し、交通事故の被害者や医療機関に不利益が生じないよう配慮しながら新基準の普及を進め、将来的には金融庁、国土交通省に対して、制度化の具体的な検討を求めていく考えを示した。
新基準の普及に努める
続いて、主に伊澤和耶損保協会損害サービス企画部自動車グループ主任が、新基準の位置付けや普及に向けた取り組み、三者合同アンケート調査の概要を説明した。
伊澤主任は、新基準の位置付けについて、全ての医療機関に対し強制力を持つ制度ではなく、各医療機関に採用判断を委ねる「手挙げ方式」で運用していることを解説。2020年時点の新基準移行率は全国平均で約6割であり、都道府県単位で見ると、約9割強から2割弱とばらつきがあることから、引き続き新基準の普及が必要との見方を示した。
また、独占禁止法の観点から制度化の必要性も指摘し、公正取引委員会も都度「制度化を前提として独禁法上問題視しない」主旨の発言をしていることから、「新基準の診療報酬を将来的に確保・維持するためには制度化が必要となる」と強調。
同主任は、こうした状況を踏まえ、2024年度の新基準の普及に向けた取り組みとして、引き続き三者で協力しながら普及に努めるとした上で、これまで「なぜ移行率が上がらないのか」「どうすれば新基準を利用してもらえるか」という観点で具体的な意見を聴取したことがなかったため、アンケート調査を実施することになったと説明。各都道府県医師会に同アンケート調査への協力を呼び掛けるとともに、その概要を紹介した。
また、宇田川智弘損保協会常務理事も「同アンケート調査を通じて、新基準の更なる効果的な普及につなげていきたい」と述べ、八島宏平損保料率機構理事/企画推進部長からは「新基準は医師にも患者にもメリットがある」と強調し、制度化に向けて尽力していく考えを示した。
説明の後、質疑応答が行われ、都道府県医師会からの質問に日本医師会役員及び損保協会、損保料率機構からそれぞれ回答が行われた。
総括を行った茂松茂人副会長は、「新基準の普及に向けて、さまざまな問題を解決していけるよう日本医師会が主導して取り組んでいきたい」と述べ、医療現場が交通事故の診療で困ることのないよう、取り組みを進めていく姿勢を示した。
※アンケート調査につきましては、2023年度に自賠責請求の実績があった医療機関に委託先の株式会社マクロミルよりDMにてお送りしておりますのでご協力をお願いいたします。
【調査機関:2024年10月18日(金)頃~11月16日(土)23:59まで】