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令和6年(2024年)7月5日(金) / 日医ニュース

看護師等養成所の存続と看護学生を増やすための方策などについて議論

看護師等養成所の存続と看護学生を増やすための方策などについて議論

看護師等養成所の存続と看護学生を増やすための方策などについて議論

 令和6年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会が6月12日、日本医師会館小講堂とWEB会議のハイブリッド形式で、4年ぶりに開催された。
 協議会は江澤和彦常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、看護職員の養成について、この2、3年で入学希望者が加速度的に減少し、やむなく閉校する医師会立養成所が増えていることに危機感をあらわにするとともに、少子化と看護系大学の増加に加え、医療以外の労働条件の良い仕事に流れている可能性を示唆。各医療機関には、「今回の診療報酬改定で確保された賃上げのための財源も活用して給与の引き上げを行うことを呼び掛けている」とした。

(1)看護職員を巡る動向について

 習田由美子厚生労働省医政局看護課長は、厚労省として看護職員の確保に向け、「新規養成」「復職支援」「定着促進」の三本柱で取り組んでいるとし、地域医療介護総合確保基金を用いた各種施策等を説明するとともに、都道府県ナースセンターでは、①潜在看護職の復職支援等(無料職業紹介)②看護職や医療機関に対する情報提供・相談対応③訪問看護等の知識・技術に関する研修―の実施等を通じて、地域における看護職の就業・資質向上を支援していることを概説した。
 また、昨年約30年ぶりに改定された「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」にも触れ、新興感染症や災害等に対応する看護職員の確保について新しく規定するとともに、タスクシェア・タスクシフトの観点から看護補助者の確保も盛り込んでいるとした。
 この他、在宅医療等の推進に向け、医師からあらかじめ示された手順書により一定の診療の補助を行う看護師を養成する特定行為研修の状況と、その好事例を紹介。修了者は医師のタスクを先読みして準備をするので医師の負担が減り、通常の診療業務に注力できるなどの効果を強調し、今後もその推進に努める姿勢を示した。

(2)日本医師会医療関係者検討委員会報告書について

 須藤英仁医療関係者検討委員会委員長/群馬県医師会長は、松本会長より諮問「医師会立看護師等養成所を存続させるための方策について」を受けて取りまとめ、3月18日に同委員長より松本会長に提出した報告書の内容について説明。
 報告書は、①看護学生に関する問題(学生の資質の変化、入学希望者の確保)②看護学校の運営に関する問題(学校の業務改善、パワハラ問題、地域に根ざした看護職の養成)③医師会立看護学校維持のための経済的問題④看護職の資格に関する問題―を柱に構成されている。
 ①では、准看護師の魅力をアピールする広報活動をSNS等を用いて展開していることや、市町村による奨学金の事例を紹介。
 ②、③では、医師会単独で看護職を養成するのは限界にきているとして、看護職の確保は地域の問題であることを自治体(議会)に理解してもらい、支援を得る重要性を訴えている。
 また、地域に必要な施設を残すため、複数の養成所の運営主体を一つにし、サテライト校として運営する構想を提案している。
 須藤委員長は、「都道府県医師会が強いリーダーシップを発揮し、郡市区医師会や行政との協議を主導していくことが重要であり、日本医師会と厚労省にも、モデルを示すなどの実現に向けた行動を求めたい」と強調した。

(3)日本医師会からの報告

 釜萢敏常任理事は、「医師会立看護師等養成所の現況(令和6年度調査 入学状況速報値)」について概説。①定員充足率は、助産師課程のみ横ばいで、他の課程は昨年度に引き続き大きく低下した②大学を含めても入学者が減少し医師会立養成所に限らず、全体として看護職志望者が減少している―ことを懸念。都道府県別に、有床診療所と介護保険施設に勤務する看護職員に占める准看護師の割合を見ると、半数以上の都道府県で40%以上となっていることを紹介。准看護師が非常に大きな役割を担っているとして、日本医師会が制作した社会人向けの看護職PR動画の活用を求めた。
 この他、規制改革推進会議におけるナースプラクティショナー(NP)の議論に触れ、「日本看護協会によるNPの定義では、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる新たな看護の国家資格ということだが、医師のいない在宅医療の場における議論であり、医療安全の観点から認めることはできない。新たな職種をつくるのではなく、特定行為研修の修了者を増やしていくことで対応したい」と述べた。

(4)協議

 協議では、事前に寄せられていた各都道府県医師会からの質問・意見・要望や、フロアからの質問に対して、厚労省と日本医師会の立場からそれぞれ回答を行った。
 出席者からは、地元に定着する看護師、准看護師養成の重要性と、国による財政支援を求める意見が相次いだ。
 また、看護職になることを希望しても、貧困などで断念せざるを得ない人が多くいることも指摘され、釜萢常任理事は「日本医師会として何ができるか検討したい」と述べた。
 その他、今回の診療報酬改定で賃上げのための財源が手当されたことで人材紹介会社の手数料が急に引き上げられたことを問題視する意見が出されたことに対して、習田看護課長は、「適正事業者を認定してホームページに掲載する取り組みを進めているが、この問題についても関係者と共有していく」と応じた。
 最後に、茂松茂人副会長が、「これまでとは違う次元で入学希望者が減っており、これは医師会だけで対応できる話ではない。各医師会や養成所の尽力、善意に頼るのではなく、厚労省全体として危機感をもって養成所の存続と看護学生を増やすための方策を考えて頂きたい」と総括し、閉会した。

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