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令和5年(2023年)11月5日(日) / 日医ニュース

母体保護法指定医師制度運用に関するアンケート調査などを説明

母体保護法指定医師制度運用に関するアンケート調査などを説明

母体保護法指定医師制度運用に関するアンケート調査などを説明

 令和5年度都道府県医師会母体保護担当理事連絡協議会が10月6日、日本医師会館小講堂で開催された。
 渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭、ビデオメッセージであいさつを行った松本吉郎会長は、まず、母性の生命健康を保護することを目的として、不妊手術、人工妊娠中絶、受胎調節の実施指導などについて規定した法律である母体保護法について、「同法に規定する母体保護法指定医師は、刑法の堕胎罪の違法性を阻却し、人工妊娠中絶を実施し得る唯一の資格者であり、当該医師には高い技能と人格の双方が求められ、その指定権をもつ都道府県医師会の責務も極めて重大であると認識している」と述べた。
 その上で、現在の産婦人科領域について、不妊治療への保険適用、緊急避妊薬の薬局販売に係る環境整備のための調査の開始、経口中絶薬の流通管理を含めた適切な運用、出産育児一時金の増額や出産費用の見える化の他、母体保護法における同意に関する対応など、重要課題が山積していることを指摘。
 また、日本医師会として、本年1月に母子保健検討委員会の中に母体保護法に関するワーキンググループ(WG)を設置するとともに、同WGでは、母体保護法の抱える諸問題に関し、都道府県医師会における母体保護法指定医師制度運用に関するアンケート調査を行ったことを説明し、「同調査の結果を踏まえ、地域の実情をより実態に即して、今後の検討に資するものとして欲しい」と呼び掛けた。
 引き続き行われた議事では、落合和彦同WG委員長(東京都医師会理事)が「母体保護法指定医師制度運用に関するアンケート調査」の結果について説明を行った。
 同アンケート調査は、母体保護法指定医師制度の運用に関して、各都道府県医師会の取り組み状況や問題点を把握することを目的に行われ、主な質問事項は、(1)母体保護法指定医師制度を担当する役員はいるか、(2)母体保護法指定医師の指定基準は日医モデルと同じ内容か、(3)現在、母体保護法の運用上問題になっている事例はあるか、(4)過去5年間、母体保護法指定医師の取り消し等の事例はあるか、(5)母体保護法指定医師審査委員会のメンバー構成、(6)母体保護法指定医師の名簿管理を行っているか、(7)母体保護法指定医師数をどの程度把握しているか、(8)母体保護法指定医師制度の各種手続きや研修会の費用―についてであった。
 落合同WG委員長は、「母体保護法指定医師の指定基準モデル」(日医モデル)が策定された経緯を説明した上で、(1)では、「いる」という回答が100%であり、指定権を持つ医師会にはしっかりと担当役員がいることが確認されたとした。
 (2)では、一部「日医モデルの指定基準と同じ内容ではない」と回答した医師会が見られたものの、細部の違い程度であり、大きな骨子の部分が異なることはないとした。
 (3)では、3割程度の医師会が「ある」と回答しており、大半は細かい事務的な問題であるものの、指定医師の他都道府県への異動時の問題については、日本医師会で対応していく必要があるとした。
 (4)では、取り消し事例が「ある」と回答した医師会への聞き取り調査を行い、過去5年間においては、必要な研修を受講しなかったなど、指定の更新に関する問題で取り消された事例が多かったことを紹介した。
 (5)では、委員会のメンバー数について、10人以上が半数近くを占める一方、5人以下という回答も複数見られた。
 (6)では、「名簿の管理を行っている」という回答が100%であったとするとともに、その形式に指定はなく、紙媒体、電子媒体のどちらで管理しても良いことを説明した。
 (7)では、母体保護法指定医師に非医師会員が一定数いることについて、医師会組織強化の観点からも入会促進が必要とした。
 (8)では、新規申請料、更新申請料、研修会受講料について、会員・非会員別で金額に大きな違いが見られることが明らかになった。

「日医モデル」の改定は段階的に検討

 その他、落合同WG委員長は、アンケートの中で寄せられた具体的な運用上の問題点に対し、私見を交えながら回答するとともに、同WGで検討している事項を紹介。「日医モデル」の改定については、さまざまな課題があることから、それらを整理し段階的に検討していく考えを示した。
 説明の後に行われた意見交換では、経口中絶薬の運用に関する意見や指定医研修会の他府県からの受講の取り扱い、性交同意年齢の変更に伴う対応への指摘等が出された。
 閉会のあいさつを行った濵口欣也常任理事は、母体保護法指定医師の不安を解消できるよう日本医師会として取り組んでいく意向を示し、協議会は終了となった。

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