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令和4年(2022年)10月20日(木) / 南から北から / 日医ニュース

ややこしい世の中

 毎朝、7時半にクリニックに着き、それから診療開始までの約1時間は前日の発熱患者の受診状況をG―MISに入力したり、メールチェックをしたりして過ごしている。近年、毎日届くメールの中に使ったこともないサービスのアカウント情報や、請求額等のワードを含む身に覚えの無いものが増えてきて困惑している。最近はあまり驚かなくなり淡々と削除するのみだが、朝からあまり気分の良いものではない。
 以前、警察でサイバー犯罪を担当している方が受診されたので話をしたら、「とにかく身に覚えの無いものは開かないで全て削除して下さい」とアドバイスを頂いた。「だます方が悪いのだからもっと厳しく取り締まって欲しい」と言ったら「次から次へとアドレスを変えてくるのできりがない」と。インターネットの普及で詐欺が身近な存在になってしまったということか。嫌な世の中になったものである。
 トランプ前アメリカ合衆国大統領が登場した頃からフェイクニュースというワードをよく耳にするようになり、特にインターネットやSNSの世界ではさまざまな情報が飛び交う中で、どの情報を信じて良いのか悩むような状況が生まれている。個人的には、匿名で投稿できるサイトにフェイクや誹謗中傷の類が多いと感じている("卑怯"という言葉はもう死語?)が、最近では選挙活動にもSNSは活用されているし、ウクライナ戦争でもSNSを使った情報合戦がもう一つの戦場とさえ言われている。
 情報社会の中で、こうしたややこしい状況からとにかく逃れたければオンラインから自分の生活を切り離すしかないが、色々な公共サービス、銀行業務等もインターネットが使われるようになってきている中ではもはや不可能に近く、であるならばできるだけ数多くの情報の一つ一つをよく吟味して、信じるに値するものをより分けていく作業をするしかない。これが実際には結構大変な作業なのだが、一つだけ言えるのは、何事にも無関心でいると自分の関心事の外側の情報についてはついつい容易に信じ込んでしまうということ。すなわち、何となく聞いた話をそのまま鵜呑(うの)みにしてしまうことが起こりやすいように思う。
 毎日、患者さんと話していても「この薬は飲んではいけないと週刊誌に書いてあった」とか「友人がこのサプリが良いと言ったので私も使っている」とか、大丈夫かなと思う場面がよくある。新型コロナに関する情報もとにかく色々な情報が錯綜(さくそう)していて、マスメディアが好き勝手に情報を流すのではなく、もう少し整理して情報を出せないものかと感じている。患者さんにはできるだけ情報を簡単に信じ込まないようにとお伝えするのだが、決して他人事ではなく自分自身もよくよく気を付けなければと思っている。
 種々雑多な情報が溢れる中で軽い気持ちで過ごしていると、どなたかに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱(しか)られるような気がしている。

富山県 富山市医師会報 第615号より

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