松本吉郎会長と釜萢敏常任理事は8月3日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の感染者数の急増により、全国の医療機関、搬送受入調整本部、保健所などの現場が非常に困難な状況になっているとして、その現状を報告するとともに、日本医師会の見解等を説明した。
松本会長は、まず、医療機関、保健所の業務負担の軽減の観点から、自宅療養を開始する際の検査結果の証明や、療養期間後に職場等に復帰する際の検査陰性の証明書等の提出を求めない等の証明書取得に関する通知が厚生労働省から発出され、その通知が日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、経済同友会宛てにも送られていることを報告した上で、医療機関や保健所の事務的な業務の負担軽減につながるとの考えを示した。
また、7月22日に岸田文雄内閣総理大臣からの要請を踏まえ地域医師会及び医療機関に対して、週末、祝日やお盆休みでの発熱外来の拡充の更なる協力をお願いしており、地域における取り組み事例を以下のとおり紹介した。
・大分市医師会の取り組み
山本貴弘大分市医師会長からは、ドライブスルー方式の発熱外来を臨時で開設し、発熱やのどの痛みなど新型コロナが疑われる症状のある人を対象に、大分市内の病院駐車場での診察に加え、抗原検査の検体を採取した後、薬局と連携して薬剤処方までを行っており、8月末にかけて日曜日とお盆休みなど8日間に1日200人を対応する予定と報告があった。
・秋田県医師会と県庁の取り組み
7月30、31日の土日に、臨時の発熱外来を県庁の中庭駐車場に秋田県庁、秋田県医師会、秋田県薬剤師会合同で開設し、ドライブスルー方式で医師が携帯電話で問診する運用。小泉ひろみ秋田県医師会長は「土日は救急外来が混み合って、一般の患者を診察しづらくなることなどから臨時の発熱外来を設けた。新型コロナウイルスの症状がある人は利用してもらいたい」としている。
これらの対応について、松本会長は、全国の医師を始めとした医療従事者のご尽力に、改めて謝意を示した上で、過去にない感染拡大に対しては、「引き続きオールジャパンで対応していく必要がある」と強調するとともに、一人ひとりが今の感染状況の中で、これまでどおりの基本的な感染防止対策を徹底し、注意深く行動していくことが重要であるとした。
その他、松本会長は、8月2日に全国知事会長の平井伸治鳥取県知事と共に厚生労働省を訪問し、「感染者の全数把握に代わる仕組みを求める緊急申し入れ」を後藤茂之厚労大臣に行ったことを報告。
会談の中では、「BA.5」による新規感染者数の爆発的増加により現場の負担は飽和状態となり、地域によっては医療・保健の逼迫等が起きるなど、日を追って感染急拡大の影響は深刻化している状況にあることを訴えるとともに、感染者の全数把握については、現場の負担軽減に資するよう入力項目の簡素化などについて、日本医師会として全国知事会と足並みをそろえて政府に要請したとした。
会見に同席した釜萢常任理事は、前日の後藤厚労大臣との面会について、日本医師会には医療現場から医療の逼迫感を訴える声が多くの会員の先生方から寄せられており、そういった現場の状況を後藤厚労大臣に直接伝えたと説明。
全国知事会からも要請のあった感染者の全数把握の中止については、事務負担を減らした新たな仕組みへの移行が必要という認識は日本医師会も同様であるが、移行の準備がまだ整っていないことから、「報告業務に関する負担への悲鳴を受け止め、国としっかり協議をしながら、その対応を検討していきたい」と述べた。
国から配布される抗原定性検査キットの有効利用に向けた課題としては、各都道府県や地域によって人口規模の違い等、さまざまな事情や背景があることを指摘。一律の対応は難しいとの見方を示し、各都道府県がそれぞれの実情に応じて、どのような配分あるいは配布の仕方とするかを決める必要があるとした。
また、国から公表されている検査キットの在庫数(約1億8000万回分)に対する受け止めとして、数としては非常に大きいとする一方、「医療資源には限りがあるため、いかに有効利用して感染拡大の防止に努めるかが重要になる」とした。
釜萢常任理事は次に、高齢者施設等で陽性者が出た場合の対応について触れ、重症者を減らすためには、現在使用可能な経口治療薬を迅速かつ適切に投与することが有用であるが、現場では同意書の取得の部分で困難が生じていると指摘。同治療薬が特例承認によって承認されたという経緯はあるものの、同意の手続きを改善する必要があるとの考えを示した。
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