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令和4年(2022年)6月5日(日) / 日医ニュース / 解説コーナー

国民皆保険を次世代につなぐ使命をこれからも果たしていきたい

国民皆保険を次世代につなぐ使命をこれからも果たしていきたい

国民皆保険を次世代につなぐ使命をこれからも果たしていきたい

 今号では、本年7月で参議院議員としての一期目の任期を終える自見はなこ議員にこの6年間を振り返ってもらうとともに、引き続き取り組んでいきたい課題等について話をしてもらった。

Q6年間の国会活動を振り返って、特に力を入れてこられたことは何ですか?

A このコロナ禍で、医療現場の声を最も国に届けなければいけないタイミングで改選期を迎えることになり、使命感と責任感で身が引き締まる思いです。
 6年間で数多くの政策に全力で取り組んできましたが、100年に一度の国難とも言われるコロナ対策は、今も続いておりますが、生涯忘れられない仕事です。
 日本にもコロナ禍が押し寄せた際には、厚生労働大臣政務官として政府におり、厚労省の対策本部長代理として、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の船内オペレーションなど、初期対応に当たりました。
220605e2.jpg 「ダイヤモンドプリンセス号」では、乗員・乗客を救済する一方で、国内への感染拡大を防ぐという難しいミッションでしたが、結果として同船由来のクラスターが国内では発生していないと国立感染症研究所からも報告されており、水際対策としては目的を果たしたと考えています。これは、乗員・乗客の協力と、多くの関係者のご尽力の賜物(たまもの)です。
 このオペレーションでは、感染防護はもちろん、大規模なPCR検査センターといった検査態勢や検体管理、本省と現場の連絡調整、患者搬送等、全てが前例のない事柄であり、その後の感染防止対策を考える上で非常に多くの教訓が得られました。
 下船後は、情報管理の重要性を痛感したことから、G―MISやHER―SYSなどのシステム開発と実装も進めました。また、各地でのクラスター対策にも奔走しました。
 その他、厚労省対策本部の組織体制を見直し、本部内に「地域支援班」を創設、政策立案を担当する各班と都道府県との橋渡しを行う「ワンストップ窓口」機能を拡充するなど、厚労省側から地域を支える機能の強化にも努めました。
 それと並行して、医療提供体制を守るため、診療報酬上の特例的な対応を行うとともに、資金繰りの対策としてWAM(福祉医療機構)の無担保・無利子融資の更なる拡充、診療報酬の概算前払い等を実施しました。
 通常、補正予算は年に1回組まれるものですが、2020年度は3度の補正予算を組んで、検査体制の充実、ワクチン・治療薬の開発、重点医療機関等の空床確保、医療従事者等への慰労金の支給、救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策、一般の病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション等における感染防止対策等への支援など、山積する課題に挑みました。
 その後のワクチン接種推進も大きな課題でしたが、結果として世界の中でも早いペースで2回目のワクチン接種を進めることができ、現在は4回目接種が始められています。
 新型コロナウイルス感染症との闘いは長期戦です。今後も感染の波が再び訪れることが予想され、まだまだ気を抜けない情勢です。発熱外来やワクチン接種、通常医療を守る取り組みなど、不断の継続が求められます。
 これまでの教訓を生かした医療提供体制構築に向けて、現場の先生方と共に取り組んで参りたいと思います。

Q引き続き取り組んでいきたいと思われている課題は何ですか?

A まずはコロナ禍で疲弊した医療提供体制を立て直すことが最大の課題です。コロナ医療、コロナ以外の通常医療共に、財政支援も含めて、しっかりと支えていかなければなりません。
 この点、2022年度診療報酬改定を巡っては、2021年12月3日に財務省の財政制度等審議会が鈴木俊一財務大臣にマイナス改定を建議するなど、財政当局との非常に厳しいせめぎ合いの末、本体プラス0・43%の改定となりました。
 医療機関の経営状況は、コロナ関連の補助金や特例的措置を除けば赤字であり、恒常的に安定した医療提供体制を維持するには、プラス改定が絶対に必要だという思いで、12月7日に加藤勝信会長の下、私も役員を務める「国民医療を守る議員の会」を開催し、190人を超える自民党国会議員が出席して大幅なプラス改定を政府に求める提言書を取りまとめ、岸田文雄内閣総理大臣、鈴木財務大臣、後藤茂之厚労大臣に申し入れました。
 リフィル処方箋(せん)、オンライン診療の初診料の設定や、心電図モニター管理の削除など、対応すべき課題は山積していますが、医療提供体制を守るため今後も頑張ります。
 コロナの教訓を生かした今後の新興感染症対策も、医療政策上の最重要課題の一つです。
 2024年度からの第8次医療計画では、従来の「5疾病5事業」に新興感染症を加えて「5疾病6事業」となります。ワクチンや治療薬の研究開発、水際での感染対策、新興感染症に備えた病床確保等の医療提供体制などを、着実に進めていかなければなりません。
 その他にも、これまでに取り組んできたさまざまな政策分野で、いよいよこれから成果が表れ始める時期を迎えており、ぜひとも政策の継続性をもって取り組みたいことがたくさんあります。
220605e3.jpg 2018年の成育基本法の議員立法以来の課題であった、行政組織のあり方の見直しについて、「こども家庭庁」設置法案が今国会で成立し、2023年度に設置されます。子ども達の健やかな成長を切れ目なくサポートしていくことは、日本の未来を左右する重要な課題です。抜本的な少子化対策のためにも、新設される「こども家庭庁」が期待された役割をしっかり果たしていけるよう、フォローしていかなければなりません。
 2024年度からの医師の時間外労働規制適用開始を前に、スチューデントドクターの法制化やタスクシフト・シェアについて定めた医療法等の改正が昨年成立し、地域医療を守りつつ過重労働を防ぐため、働き方改革施行に向けた問題点洗い出しの議論も本格化して参ります。
 本年4月からは、医療機関の宿日直許可申請に関して、都道府県によって申請しやすさにばらつきがあるが、労働基準監督署に問い合わせるのは不安やためらいがあるという声を受けて、「医療機関の宿日直許可申請に関する相談窓口」を厚労省内に設置し、必要に応じて医療勤務環境改善支援センターからの支援を実施する取り組みも始まりましたが、現場の皆様が利用しやすい相談支援体制の充実も一層進めていく必要があります。
220605e4.jpg 教育と研究に加え、地域医療の中核機能も担っている大学病院の特性に鑑みた制度設計も重要です。文部科学省が国公私立の81大学病院を対象に2度にわたって実施したアンケートでは、多くの大学病院が自院での診療や研究・教育体制、地域への医師派遣に支障が出ることを懸念しています。
 他にも、これまで「救急医療に関する議員勉強会」「臨床工学技士の資質向上を求める議員連盟」として推進してきたタスクシフティング・シェアリングはもちろん、「女性医療職エンパワメント推進議員連盟」事務局長として取り組んできた、若い世代では今や4割を占めようとする女性医師の働きやすい勤務環境整備など、大幅な財政措置を含め、徹底的に進めていかなければなりません。
 HPVワクチンの積極的勧奨再開も実現し、今年度から行われています。積極的勧奨が差し控えられていた期間に接種機会を逃してしまった方々へのキャッチアップ接種も実現したことは本当に良かったと思います。今後の課題として、9価ワクチンの定期接種化や、男性への接種にも取り組んで参りたいと考えます。
 難聴対策も、新生児期、小児期の難聴対策で大きな予算獲得が実現し、認知症対策ともリンクした高齢者の難聴対策、適正な補聴器へのアクセス拡大など自治体レベルでの取り組みが始まり、全国展開に向けて更に後押しが必要です。
 外国人医療の問題についても、被扶養者に国内居住要件を盛り込んだ健康保険法の改正や、医療費未払い歴のある外国人の再入国審査の厳格化が実現して適正化が進んだ他、訪日外国人患者への多言語対応等の予算が大幅に獲得でき、コロナ後を見据えた海外との往来再開や水際対策についてしっかりとフォローしていかなければなりません。訪日外国人患者の医療費未払い対策として、自賠責保険のような仕組みが必要だと考えています。
 日本医師会の先生方のご指導の下、これからも国政の場で働かせて頂きたいと考えております。

Q最後に会員の皆さんへ一言お願い致します。

A 220605e5.jpg中川俊男会長始め日本医師会の先生方には平素より温かいご指導を賜り、誠にありがとうございます。
 2016年7月の参議院議員選挙で先生方のご支援により初当選を果たし、国政の場に送って頂いてから、早いもので6年が経とうとしています。政治家として育てて頂き、参議院議員として1期目の任期を全うできますこと、深く感謝申し上げます。
 医療現場の先生方のお声を国政に届ける役割を担うことは、大きな責任と共に大変なやりがいを感じています。安心の国民皆保険を次世代につなぐ使命をこれからも果たすべく、日本医師会・日本医師連盟の先生方と心を一つに、全身全霊で精進致します。
 変わらぬご指導・ご鞭撻のほど、心よりお願い申し上げます。

自見(じみ) はなこ 参議院議員
 1976年、福岡県出身。筑波大学第三学群国際関係学類卒業後、東海大学医学部に入学し、平成16年に卒業。その後、同大学医学部附属病院等の勤務を経て、日本医師連盟の推薦により、平成28年に行われた第24回参議院議員選挙(全国比例区)に立候補し、初当選を果たす。令和元年9月には第4次安倍第2次改造内閣発足時に厚生労働大臣政務官を務めた。

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