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令和7年(2025年)12月20日(土) / 日医ニュース

補正予算・報酬改定での対応を求める決議を採択

補正予算・報酬改定での対応を求める決議を採択

補正予算・報酬改定での対応を求める決議を採択

 国民医療を守るための総決起大会(主催:国民医療推進協議会、協力:東京都医師会)が、現地及びサテライト会場合わせて約1万人(現地参加の国会議員は約140人)の参加の下、11月20日、日本医師会館大講堂で開催された。
 大会の冒頭、同時刻に高市早苗内閣総理大臣との面会(別記事参照)に臨んでいた松本吉郎国民医療推進協議会長/日本医師会長のあいさつを代読した茂松茂人日本医師会副会長は、「今年度の補正予算編成に向けての議論が終盤を迎える中で、医療の危機的状況を打開し、国民、患者の健康、地域医療を守り、国民皆保険を堅持するため、医療・介護分野等における賃上げと物価高騰への対応は不可欠であり、必要な財源を何としても確保しなければならない」と強調。大会に駆け付けた国会議員並びに多くの参加者に引き続きの協力を求めた。
 続いてあいさつした尾﨑治夫東京都医師会長は、東京都が実施した都内の病院の経営状況に関する調査結果に言及。地価や人件費が高いという地域特性もあって約7割が赤字であり、まずは補正予算による対応を実施し、次期診療報酬改定においては、これまでとは次元の異なるプラス改定としなければ、東京の医療提供体制は極めて厳しい状況に陥ると危機感を訴えた。

251220c2.jpg 来賓あいさつでは、鈴木俊一自由民主党幹事長が、国民医療推進協議会参加団体の国民医療・福祉に対する長年の貢献に謝辞を述べた上で、現在の賃金上昇・物価高騰が医療・介護分野に多大な影響を与え、薬局及び医療機関等への支援が急務となっているとの考えを表明。更に、従来のコストカットを是とする発想を転換し、次期改定では賃金上昇・物価高騰分を適切に反映させ、医療機関等の経営安定を図ることが重要との認識を示し、引き続き国民の安心・安全を守る医療提供体制の確保に全力で取り組んでいくとした。

251220c3.jpg 田村憲久自民党政調会長代行/社会保障制度調査会長は、中央値や最頻値で見れば、診療所も厳しい状況に置かれていることは明らかだと指摘し、病院や介護施設と合わせて、補正予算による早急な対応が必要であると強調。その上で、次期改定は、医療機関・介護事業所等の経営が構造的に安定するような内容とする必要があると主張した。

 続いて、茂松日本医師会副会長が大会の趣旨について説明。補正予算で過年度の不足分、別枠で賃金上昇・物価高騰、通常の改定で医療の高度化と高齢化に対応する必要があると主張。また、医療費の財源構成における「公助」「共助」「自助」のバランスを考慮しながら、「経済成長の果実」を活用した"真水"による思い切った対応を求めた。
 更に、ここ5年間で診療報酬上昇率と物価上昇率の間で10・2%ものギャップが生じていることを示すとともに、最低賃金・春闘・人事院勧告における賃上げ率に、公定価格で運営している医療界では国の支援無しに対応することは不可能であることを強調した。
 加えて、病院・診療所共に令和5年度と比べ、令和6年度の(1)医業利益率、(2)経常利益率―がいずれも悪化していることにも触れ、改めて①令和7年度補正予算による医療機関、薬局、介護事業所等への財政支援②次期改定における大幅なプラス改定③OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しへの反対―等に対する理解を求めた。
 次に、参加団体を代表して、国民医療推進協議会の副会長である高橋英登日本歯科医師会長の代理で瀬古口精良日歯副会長、同じく副会長である岩月進日本薬剤師会長の代理で渡邊大記日薬副会長並びに秋山智弥日本看護協会長が、それぞれ適切な財源確保に向けた決意を表明した。

各地区代表の医師会長が決意表明

 更に、初めての試みとして、WEB会議システムで全国46道府県の医師会と映像・音声をつなぎ、7ブロックのサテライト会場から各地区代表の医師会長が決意表明を行った。
 松家治道北海道地区代表/北海道医師会長は、北海道の医療提供体制等の現状について報告。広大な医療圏と医療資源並びに人口の偏在といった地域特性に加え、昨今のインフレや人口減少が医療提供体制をますます厳しくしているとした上で、「今後も道民及び国民の医療を守るため全力を尽くしていく」と述べた。
 佐藤和宏東北地区代表/宮城県医師会長は、「医業収入が増加しても、経費がそれ以上に伸びているため、医療機関経営は非常に苦しい状況になっている」と主張。補正予算による支援と、次期改定における大幅な改定率アップが無ければ、地域医療が崩壊する危険性が高まると警鐘を鳴らした。
 堂前洋一郎関東甲信越地区代表/新潟県医師会長は、「医療機関の閉院や介護関係の倒産により、国民の生命と健康を守る重要なインフラである医療・介護提供体制が崩壊すれば、不利益を被るのは国民である」と懸念を示し、持続可能で安定した医療・介護提供体制を維持するためには、次期改定における大幅なプラス改定等が必要と強調した。
 柵木充明中部地区代表/愛知県医師会長は、次期改定に向けた要望として、賃金・物価水準に連動した診療報酬改定とすることを挙げるとともに、初再診料、入院基本料等の基本診療料の引き上げの他、中医協の自立性を尊重すること等を強く求めた。
 平石英三近畿地区代表/和歌山県医師会長は、公定価格で運営される医療機関・介護事業所は非常に厳しい経営を強いられており、更には医療DXの推進による新たなコストの発生や人口減少などが追い打ちを掛けていると訴えた上で、医療機関等の減少は地域の過疎化を招き、地方の衰退を加速させるとして、早急かつ大型の財政支援を求めた。
 加藤智栄中国四国地区代表/山口県医師会長は、診療報酬改定は物価上昇に全く追い付いていないと指摘。令和元年度と比べ、消費税収入は大幅に増えているとして、その増収分を医療・介護・福祉分野の財政支援並びに次期改定の財源とすることを強く要望した。
 蓮澤浩明九州地区代表/福岡県医師会長は、住民の生命・健康を守ることを揺るがぬ使命とし、持続可能な医療提供体制を次世代につなげるため、現在、医療機関・介護事業所等が置かれている危機的状況に全力で立ち向かうとした上で、国に対して緊急的かつ実効性のある対策を取るよう求めた。
 その後、大会の趣旨説明及び決意表明を踏まえ、平川淳一日本精神科病院協会副会長が本大会の決議案(別掲)を朗読し、同決議案は満場の拍手をもって採択された。
 最後に、角田徹日本医師会副会長の掛け声の下、参加者全員が起立して「頑張ろうコール」を行い、会は終了となった。

決 議
 医療・介護は公定価格で運営されているが、物価・賃金の急激な上昇に診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定が追いついておらず、医科歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションや介護事業所等は、著しく経営状況が逼迫しており、閉院や倒産が相次いでいる。
 令和7年度最低賃金はプラス6%強、人事院勧告はプラス3.62%、また「骨太の方針2025」でも示された2025年春季労使交渉の平均賃上げ率は5.26%等となっているが、医科歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションや介護事業所等は、とてもこれらに対応できるような状態ではない。
 適正化等の名目により、医療・介護の財源を削って財源を捻出するという方法でこれ以上削減されれば、地域の医療・介護の崩壊は避けられない。
 よって、国民、患者、利用者の健康を守り、さらには国民皆保険を堅持するため、以下の対応を求める。
1.令和7年度補正予算での対応
 医科歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションや介護事業所等に対し、補助金と診療報酬・介護報酬等報酬の両面からの早急な対応を行うこと。
2.令和8年度予算編成での対応
 令和8年度診療報酬改定をはじめ、令和8年度予算編成において、賃金上昇と物価高騰、高齢化、医療の技術革新に対応した大幅なプラスとすること。
3.財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による大規模で抜本的な対応
 これまで適正化という名の下で社会保障費は削られ続けてきたが、あくまで財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による思い切った緊急的な対策を行うこと。
以上、決議する。
 令和7年11月20日
国民医療を守るための総決起大会

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