

国民医療を守る議員の会(自由民主党議員連盟)総会が12月2日、都内で開催され、松本吉郎会長を始め常勤役員、各都道府県医師会の役員の他、衆参の国会議員331人が出席し、医療機関の窮状を踏まえた令和8年度診療報酬改定について議論が行われた。
総会では、まず、加藤勝信国民医療を守る議員の会会長が、医療分野の合計が1兆円を超えるとされた令和7年度補正予算案について、「中身は人件費や物価高の穴埋めであり、逆に言えば、令和6年度診療報酬改定がこうした人件費や物価の上昇等を見込めていなかったと言える」と指摘。その上で、令和8年度診療報酬改定について、人件費・物価高の動向、高齢化や医療の高度化にどう取り組んでいくかが問われていると主張した。
続いてあいさつした岸田文雄国民医療を守る議員の会最高顧問は、賃上げによる経済の好循環を掲げた4年間の取り組みに触れつつ、医療分野では想定を上回る物価高騰により医療機関経営が厳しい状況にあると認識しているとし、「国民が安心して医療を受けられるよう、総合経済対策に続き次期診療報酬改定でも経済物価動向に対応した措置が求められている」と述べた。
引き続き、松本会長が資料を基に(1)診療報酬は5年間で1・9%増に過ぎず、同期間の消費者物価指数12%増と10・2パーセントのギャップが生じている、(2)病院の経常利益率の中央値は0%、診療所は2・5%と余力が乏しく、倒産や閉鎖が増加している―ことなどを説明。賃上げや物価高騰が続く中での診療報酬改定については、1年目に2年目の物価・賃金の半分を上乗せする、あるいは2年目の分を2年目に確実に上乗せする仕組みが必要だとした。
また、今回の補正予算に関しては、医療機関の厳しい経営を支える重要な措置であるが、「あくまで過年度を補填(ほてん)する『大量出血に対する止血剤』であり、本来必要な『根治治療』は次期診療報酬改定における大幅なプラス改定だ」とした。
厚生労働省からは、間隆一郎保険局長が最新データでも病院は6割、診療所は4割が赤字となり、賃上げや物価高騰で収支が逼迫(ひっぱく)している中で、国会議員・関係団体の働き掛けにより1兆円超の補正予算を確保し、賃上げ・物価対策や救急病院への追加支援など「止血」に当たる措置を講じることができたと説明。更に、診療報酬改定に向けては、医療経済実態調査でも厳しさが増していることを示し、増加を続ける人件費や物品などの費用に対応するため、診療報酬改定が極めて重要だと強調した。加えて、賃上げにより保険料収入も増えるため、財源確保は可能だとの認識を示し、改定率の議論への理解と支援を求めた。
また、OTC類似薬の扱いについても、「骨太の方針2025」に記載された「必要な受診を確保する」との方針を踏まえて慎重に対応すると述べた。
その後、当日の議論も踏まえて、議員の会として、医療の危機的な状況を打開するため、(1)公定価格で運営されている医療機関等において、経営の安定、離職防止、人材確保が図れるよう、他産業に引けをとらない賃上げが可能となる環境を整える、(2)令和7年度補正予算に盛り込まれた、医療機関に対する財政支援をすみやかに行う、(3)令和8年度予算編成における次期診療報酬改定について、この2年間の賃金・物価増を反映するとともに、賃金・物価の影響を勘案した上で、今後2年間の賃金・物価動向、医療の技術革新、高齢化に対応した大幅なプラス改定とする、(4)OTC類似薬の保険給付の見直しは、安全性、有効性、経済性の面で国民への負担や不利益を踏まえ、検討を行う際には慎重に行う―ことを求める決議案が提案され、了承された。
令和8年度診療報酬改定にもしっかりと取り組む―高市総理
なお、決議は12月4日に松本会長も同席の下で、加藤国民医療を守る議員の会会長から高市早苗内閣総理大臣に手交された。
高市総理からは「補正予算はあくまでも今、疲弊している医療機関に対する緊急的なものであり、令和8年度診療報酬改定に関してもしっかり取り組みたい」との考えが示された。



