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令和3年(2021年)9月9日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

新型コロナウイルス感染症の現況について

 中川俊男会長は9月8日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染状況、及び治療薬と抗原検査キット、ワクチン接種が行き渡った後の経済社会活動の制限緩和を示す分科会の提言について、日本医師会の見解を交えながら説明した。

 感染状況については、全国的に減少傾向となっているものの、9月7日には東京都で1629人と第4波のピーク時を上回る新規感染者数となっており、依然として高い水準にあると指摘。また、東京都では8月の感染者のうち、感染経路が判明している人の約6割、全体の4分の1が家庭内感染であることを説明し、感染が広がっている地域を中心に、病床使用率、重症病床使用率はステージ4の指標である50%を超えるなど、依然として危機的状況にあるとした。

 治療薬に関しては、1.昨年5月に新型コロナウイルス感染症による肺炎を有する患者に対し、抗ウイルス薬ベクルリー(R)(レムデシビル)を用いることが可能になったこと、2.本年4月23日には、このレムデシビルにJAK阻害剤オルミエント(R)(バリシチニブ)を併用することが承認されたこと、3.重症化リスクを有する軽症・中等症の治療薬として、抗体薬ロナプリーブ(R)も今年の7月に承認されていること―等を紹介。重症化を抑制する手段が拡大しつつあり、患者にとっても医療者にとっても望まれる状況に向かっているとするとともに、いくつもの候補薬の臨床試験が進むなど、各社それぞれ薬事承認取得に向けて必死に取り組んでいると認識しているとした。

 その上で、政府に対しては、「日本で創製された治療薬候補が国際共同治験ができるような力強い開発支援だけでなく、承認後は日本で製造・供給できるよう、原薬から製造化までの体制整備をしっかりと後押しして欲しい」と要望した。

 また、承認されたばかりのロナプリーブに関しては、現在、国が海外企業と交渉し、国の管理下で供給されており、国に対しては、国内製薬企業の予防薬、治療薬については必要量を確保するよう求めたいとした。

 抗原定性検査キットに関しては、薬機法で診断に用いる「体外診断用医薬品」として承認されており、特例的に職場等で活用されていると述べた。また、検査キットは1.無症状の人に実施して感染していないことを確認するものではなく、軽度の体調不良を感じた人が、すぐに医療機関を受診できない場合に自ら検査を実施するものであること、2.陽性であればすぐに医療機関を受診しなければならず、陰性であっても偽陰性の可能性があるため、体調不良であれば医療機関を受診し、外出を控えるべきであること―を認識すべきと主張。また、その職場等における検査キットの使用に当たっては、厚生労働省が示している「職場における積極的な検査等の実施手順」を確認するよう呼び掛けた。

 更に中川会長は、抗原定性検査キットは一般の人が自ら正しく検体を採取するのは難しく、感染していた場合、検体採取時に他の人へ移してしまう可能性があることを指摘し、抗原定性検査の結果はあくまで目安であり、コロナ感染の早期探知、感染拡大防止のために、医療機関の受診につなげていくものとして使用することに理解を求めた。

 その他、中川会長は新型コロナウイルス感染症対策分科会が、ワクチン接種が行き渡った後の経済社会活動の制限緩和についての提言を公表したことにも言及。「今回の提言に期待される方も多くいると思うが、あくまでも希望する人へのワクチン接種が済み、地域の感染が沈静化していることが前提としたものであり、感染を十分抑制できないこともあることを想定し、提言で示された考えが人々の緩みに繋がらないようにする必要がある」と強調した。

 最後に中川会長は、国内でも感染力の強いデルタ株にほぼ置き換わり、ワクチン接種後の感染の増加や、ブレークスルー感染した人は無症状でも、ワクチン未接種の感染者と同等のウイルスを排出するため、無自覚のまま他の人に移す可能性があることを指摘。ワクチン接種によって感染者が大幅に減少し、「国民は、集団免疫に極めて近い状態にある」とされ、ワクチン接種完了者は屋内のコンサートやスポーツイベントに参加できるようになり、6月15日には、屋内のマスク着用義務も撤廃されたが、その後、デルタ株による感染の急拡大が起り死者も急増しているイスラエルを例に挙げ、「わが国は海外の例に学ぶべきである。一刻も早く日常生活を取り戻したいとの思いはみんなの共通のものであるが、引き続き緊張感を持った徹底的な感染防止対策はまだまだ必要である」として、理解を求めた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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