中川俊男会長は4月21日の定例記者会見で、新型コロナウイルスの変異株の全国的な流行と、大阪府を始めとする緊急事態宣言要請の状況を踏まえ、3度目の緊急事態宣言が不可避であるとし、政府に早急な発令を求めた。
中川会長は、新型コロナの変異株「N501Y」が47都道府県全てで確認され、大阪府のデータでは、「重症化しやすい」「重症患者の年齢が10歳以上若くなっている」「子ども達にも感染している」ことなどが示されていると指摘。
大阪府では重症者数が重症病床数を上回り、日常診療や救急医療が深刻な状況に至っていることから緊急事態宣言が要請され、東京都、兵庫県、京都府も続いて要請する方向であるとして、「3度目の緊急事態宣言は不可避の状況である。その内容も、これまでのような『自粛』を基本とした対策では限界があり、強力な覚悟のいる厳しいものにならざるを得ない。経済活動への影響も心配されるなど、政府としては大変難しい判断だとは思うが、国民の安心・安全のためには緊急事態宣言の発令を躊躇している場合ではない」と強調した。
その上で、緊急事態宣言について、「発令は早めに、解除はゆっくり慎重に」との持論を述べ、宣言解除に関しては、ステージ4からステージ3に改善した時点で解除できるとされている基本的対処方針を、ステージ2以下になって初めて解除の検討に入るよう改訂することが必要であるとした。
また、入院・入所が必要とされるにもかかわらず、調整中もしくは待機中となっている患者の現状について、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査」を基に、3月24日に全国で903人であったものが、3月31日には1,434人、4月7日には3,314人、4月14日には4,671人と急増していることを説明。「現在、多くの病院が受入病床を確保し、多くのマンパワーを充てているが、受入病床のみならず後方支援病床を確保し、回復した患者を円滑に転棟・転院させていくことが重要である」として、四病院団体協議会、全国自治体病院協議会と共に退院基準の周知徹底に努めていく姿勢を示した。
ワクチン接種に関しては、各地で高齢者への接種が始まっているものの、希望してもすぐに接種できる状況にはないことから、情報格差が生じない予約方策と、ワクチン配送スケジュールのリアルタイムでの情報提供を要請。医療従事者への優先接種については、ワクチン接種を担当する医師を始めとした医療従事者へのワクチン接種のため、高齢者用のワクチンを転用して良いことが市区町村へ十分に伝わっていないとして、周知徹底を求めた。
この他、難解な文章の通知や事務連絡が大量に発出されているため、医療機関や自治体がその理解に大変な労力を費やしているとして、要点をまとめた要約版を付ける、あるいは表紙にポイントを記すなどの工夫を要請した。
最後に中川会長は、病院団体と共にコロナ病床の確保に努めた結果、今年に入り、全国の医療機関で新たに2,800床が確保されたことを報告。これからも病床確保に向け努力する意向を示す一方、「新規感染者数を何が何でも抑え込まなければならない。新型コロナの感染拡大を抑える基本は、各人の意識と行動である」として、ワクチンが行き渡るまで粘り強く感染防止対策を続けるよう改めて呼び掛けた。
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