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令和3年(2021年)3月20日(土) / 日医ニュース

若者が輝く社会を共に考えるをテーマに活発に討論

若者が輝く社会を共に考えるをテーマに活発に討論

若者が輝く社会を共に考えるをテーマに活発に討論

 今年度第1回目となる「子育て支援フォーラムin大阪」が2月13日、日本医師会、SBI子ども希望財団、大阪府医師会の共催により、大阪府医師会館とWEB会議のハイブリッド形式で開催された。
 フォーラムは、笠原幹司大阪府医師会理事の司会で開会。冒頭あいさつに立った茂松茂人大阪府医師会長は、新型コロナウイルス感染症の現状に触れ、今回のフォーラムが新型コロナウイルス感染症の影響を受け、1年延長した開催になったことを説明。コロナ禍において虐待件数は増加し、児童虐待は特別なことではないとして、一人ひとりが気を配るなど支援する環境をつくり、若者が輝ける社会を目指すことに本フォーラムが寄与するように期待を寄せた。
 続いて、ビデオメッセージであいさつした中川俊男会長は、児童虐待の相談件数が増加の一途をたどっている現状から、令和元年度6月に児童福祉法等の一部を改正する法律が成立し、同年12月には成育基本法が施行されたことにも触れ、「虐待の根底にある社会的な要因に目を向け、社会全体で強い危機感を持つことが求められている」と述べた。

基調講演

 引き続き行われた基調講演(座長:光田信明大阪母子医療センター副院長)では、友田明美福井大学子どものこころの発達研究センター教授が「子ども虐待と脳科学―アタッチメント(愛着)の視点から―」と題してオンラインで講演。子ども虐待への暴露が脳に及ぼす影響は人格形成に深刻な影響を与えるとし、脳科学の知見に基づき、「マルトリートメント(マルトリ)」(定義:大人から子どもへの避けたいかかわり)を予防する必要があると指摘。その方策として、養育者の育児の孤立化を予防し、親だけではなく、地域や社会全体で子育てを支援する「とも育て(きょうどう子育て)」を普及することで、安全な暮らしの構築に取り組むべきであると強調した。

パネルディスカッション

 パネルディスカッション(座長:森口久子大阪府医師会理事)では、まず、「大阪市社会的養育推進計画について」と題して瑞慶覧薫大阪市こども青少年局子育て支援部こども家庭課長が講演を行い、国から示された「新しい社会的養育ビジョン」を踏まえた大阪市における社会的養育の基本的考え方、全体像及び取り組みを明記した令和2年度から11年度までの新たな計画について概説。全ての児童が家庭的な養育環境で生活できる状態を実現することを目標に、この10年間で本体施設を家庭的な小規模グループケアとすることを目指すとした。
 飯田芽生愛氏(第42回全国高等学校総合文化祭弁論部門最優秀賞・文部科学大臣賞受賞)は、虐待を受け、児童養護施設で育った生い立ちに触れ、自身の体験から児童養護施設の認知度の低さや退所後支援の手薄さなどの環境要因が課題であると感じ、そのことを伝えることで子どもと社会をつなぎ、弱い立場にある子ども達が広い視野と選択肢を持って自分の将来を決定できる未来を実現したいと考え、活動を続けていることを紹介した。
 加賀美尤祥社会福祉法人山梨立正光生園理事長は、「今日の子ども家庭と社会的養育の現状と課題~保護から養育へのパラダイムシフト~」と題して、これまでの子ども家庭福祉問題や虐待相談件数増加の現状とその時代背景を説明。その上で、全ての子ども家庭を視野に入れた新たな社会的子育てシステムの構築の必要性を訴えるとともに、在宅支援を基本とする社会的養育と虐待連鎖の防止に向けて、新たな社会的養育の考え方が求められていると指摘した。
 杉山登志郎福井大学子どものこころの発達研究センター客員教授は、「ヤバイク家庭への家族併行治療」と題し、児童青年精神医学の専門家の立場から講演し、子ども虐待が増え続ける理由として、愛着障害の考えを「ヤバイ育児(ヤバイク)」と称した言葉を使って概説。更に、子ども虐待の後遺症に関して、子どもと大人のそれぞれの症状とその治療について説明するとともに、自身が行った親子への併行治療の事例を紹介した。
 その後の総合討論では、活発なパネルディスカッションが行われ、フォーラムは終了となった。
 参加者は現地とWEBを合わせて278名であった。
 なお、今年度のフォーラムは今回で終了となった。

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