「人生100年時代」と言われている。これは、英国のリンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の著書『LIFE SHIFT100年時代の人生戦略』の中で提唱された言葉である。
古希(こき)と言う言葉は今の時代にそぐわなくなってきており、健康寿命の延伸とともに人生設計を見直さなければならない時期に来ている。
地域包括ケアや認知症施策推進大綱などのコンセプトは、全ての国民が住み慣れた地域の中で尊厳が守られ、自分らしく暮らし続けることができる社会を目指すとされる。実際、さまざまな調査で「人生の最後は自宅で過ごしたい」と考えている国民は多い。しかし、家族への気遣いなどから、人生最後の医療・ケアを受ける場として病院、施設を選択する国民も少なくない。
そのような中、ACP(人生会議)の考え方が、クローズアップされている。これは、患者の人生観や価値観、希望に沿った、将来の医療・ケアを具体化することを目標とした、患者の意思決定を支援するプロセスである。これまで、人生の終末期のあり方については、患者本人から伝えられることがあっても、周囲からそのような話題を切り出すことは、いわばタブー視される雰囲気があった。
当然、ACPは必ずしも本人が望まないこともあり、決して押し付けであってはならない。患者、家族とかかりつけ医を中心とした医療・介護従事者との信頼関係構築の上で、自然な会話の流れの中で進められることが大切である。
(榮)