ドミニク・シュティルハルト赤十字国際委員会(ICRC)事業総局長が10月31日、日医会館を訪れ、「紛争下における医療活動の現状と課題―ICRCが見た現実と対応を中心に―」をテーマとして講演を行った。
ICRCは、戦争や武力紛争及びその他暴力を伴う事態によって犠牲を強いられた人々に対して、人道的保護と支援を行う、公平にして中立かつ独立した機関であり、シュティルハルト事業総局長は、世界80カ国以上で展開している人道支援活動の最高責任者を務めている。
講演会は、松原謙二副会長の司会で開会した。
冒頭あいさつした横倉義武会長は、4月にスイスのジュネーブにあるICRCの本部を訪問し、世界医師会(WMA)とICRCとの連携を確認したこと等を報告。「シュティルハルト事業総局長からは紛争下における医療活動について、多くの日本の医療関係者にも知ってもらえる機会を設けて欲しいとの依頼を受けており、今後、何らかの形で実現していきたい」とした。
引き続き行われた講演の中で、シュティルハルト事業総局長は、①紛争地域の人々に直接的な支援を行うため、1万8000人のスタッフを派遣している②医療的な支援としては、身体的なものばかりでなく、心理的なケアも行っている―ことなどを説明。ここ数年、救援に向かう地域では、「紛争が長期化し、当事者も複数になる」等の変化が見られるとし、その対応や市民のヘルスケアへのアクセスを確保するため、病院全体を支援するとともに、382にも及ぶ武装グループとの関係を維持しているとした。
また、武装勢力の医療機関に対する攻撃が最大の課題になっていると指摘。「この現実を世界で注目してもらうためにも、WMAと協力関係を築けたことは大変意義がある」と述べた。