富山県医師会では女性医師等支援事業として、相談窓口の設置や県内病院の巡回相談、富山大学医学部3年生への講義、富山大学附属病院でのキャリアアップ座談会、臨床研修医への説明会を開催している。
また、女性医師への育児支援制度の拡充のみでなく、男女共に若い医師がキャリアアップできる仕組みや医師全体の働き方の検討が必要であり、昨年に引き続き勤務医部会と合同での「イクボスセミナー」や「医師の働き方について」の講演会を予定している。
これらの事業は全て、医師会員、大学関係者、病院医師など多くの方々の協力を得た上で推進している。全国で女性医師支援は熱心に取り組まれているが、富山県では特に大学と密接に連携を図っており、関係する方々に感謝したい。
本稿では、富山大学附属病院でのキャリアアップ座談会について紹介する。
座談会は、富山大学男女共同参画推進室、とやま総合診療イノベーションセンターと連携し、平成25年より年2回ずつ開催している。①育児しながら留学した女性医師②新たな分野に挑戦する女性医師③ブランクを経ながらも専門医を取得し常勤医に復帰した女性医師④女性医師と結婚している男性医師―などを県内外から講師に迎えた講演と、その後に参加者を交えたディスカッションを行っている。
さまざまな立場で責任ある職責を果たしキャリアアップし続ける医師から直接アドバイスをもらえることや、幅広い科の指導的な立場の医師と話せることが好評で、毎回多くの学生や若手医師の参加がある。中には「固定的性別役割分担意識」を払拭(ふっしょく)するような爽快な話もあって、そのアイデアや工夫はとても参考になるし、笑える失敗談も楽しい。
これまでに産婦人科、小児科、内科、眼科、外科、整形外科、総合診療科の医師に講師となってお話し頂いたが、最近では、まだ女性医師の活躍が少ない科である泌尿器科医、心臓血管外科医にもご講演頂いた。
平成30年1月からは、講師と同じ科の富山大学教授と若手医師のペアトークも同時に行い、新たに「スマートカフェin医学部〜キャリアアップ座談会〜」と名称を変更して開催した(写真)。
座談会に教授が出席されて講義以外の話が聞けるなどということもあって、参加者も増えている。「教授が若い頃に苦労したこと」「女性医師に対し教授が心配になったこと」「仕事で最も面白いと感じることは?」「女性医師として苦労したことは? 良かったことは?」「女性医師への患者さんの反応」など内容は多岐にわたる。トップの考え方、当該科の魅力、若手医師の苦悩と喜び、さまざまなものが凝縮された濃厚な時間となり、以前の和気藹々(あいあい)とした座談会が更にバージョンアップしている。
広い視野を持ち、高いスキルを有する女性医師の講演では、聴講する若手医師や学生の瞳が輝いていた。彼女達がロールモデルとなり、若い世代に波及効果を与え、挑戦意欲の循環を生み出す仕組みが構築されつつある。
「医師の高齢化」「医師不足」「地域偏在」「医師の働き方」が大きな問題となっているが、男女を問わず医師が健康に働き続けられる環境の整備を目標として、若い医師が意欲と責任感をもち、ますます活躍していけるよう女性医師等支援事業を継続していきたい。