第19回都道府県医師会介護保険担当理事連絡協議会が3月7日、日医会館大講堂で開催された。
鈴木邦彦常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、「国民一人ひとりが質の高い効率的な介護サービスを受けることができる提供体制の整備を推進するための基本方針①地域包括ケアシステムの推進②自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現③多様な人材の確保と生産性の向上④介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定化・持続可能性の確保―を実現するためには、かかりつけ医の役割が重要であり、これまで以上に行政や医療・介護に従事する多職種との連携が求められる」と述べ、都道府県医師会に対して、地域における医療・介護連携の推進に向けた更なる支援と協力を要請した。
続いて、鈴木常任理事が、「平成30年度介護報酬改定について」と題して講演を行った。
厳しいと想定されていた中で、改定率が全体でプラス0・54%となったことを評価するとともに、「医療と介護の整合性がとれ、地域包括ケアシステムの基本である医療と介護の連携が診療報酬・介護報酬上も大きく前進する改定となった」と述べた上で、今回の改定の基本的な視点や個別の項目を以下のように詳解した。
(1)介護医療院
【介護医療院の基準】
サービス提供単位:療養棟単位での提供が可能。
人員配置:介護療養病床と介護療養型老人保健施設の基準を参考に配置。
設備:療養室の床面積は8・0平方メートル/人以上。
医療機関と併設の場合:人員基準の緩和や設備の共用が可能。
【介護医療院の基本報酬等】Ⅰ型では現行の介護療養病床(療養機能強化型)を、Ⅱ型では介護老人保健施設の基準を参考としつつ、24時間の看護職員の配置が可能となるよう設定。
【介護医療院への転換】療養室の床面積や廊下幅等、配慮が必要な事項については基準を緩和。介護医療院への転換後、転換前後におけるサービスの変更内容を利用者及びその家族や地域住民等に丁寧に説明する等の取り組みについては、最初に転換した時期を起算日として、1年間に限り算定可能な加算を創設(平成33年3月末まで)。
【認知症専門ケア加算の創設】介護保険施設に設けられている認知症専門ケア加算、若年性認知症患者受入加算、認知症行動・心理症状緊急対応加算を創設。
【排泄に介護を要する利用者への支援に対する評価の新設】排せつ支援加算を新設。
【口腔衛生管理の充実】口腔衛生管理加算の回数を緩和。
【栄養マネジメント加算の要件緩和】
【栄養改善の取組の推進】低栄養リスク改善加算を新設。
【入院先医療機関との間の栄養管理に関する連携】再入院時栄養連携加算を創設。
【身体拘束等の適正化】身体拘束廃止未実施減算を創設。
(2)介護老人保健施設
【在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価】従来型の基本報酬は、基本型として評価。在宅復帰・在宅療養支援機能については、更にきめ細かい評価ができるように指標を設定。
【介護療養型老人保健施設の基本報酬等】「療養型」及び「療養強化型」を「療養型」に一元化。
【かかりつけ医との連携】かかりつけ医連携薬剤調整加算として、多剤投薬されている入所者の処方方針を介護老人保健施設の医師とかかりつけ医が事前に合意し、その処方方針に従って減薬する取り組みについて評価。
【褥瘡の発生予防のための管理に対する評価】褥瘡マネジメント加算を新設。
(3)介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
【入所者の医療ニーズへの対応】
配置医師緊急時対応加算:①配置医師と施設の間で、具体的な取り決めがなされている②複数名の配置医師を置いている、もしくは24時間対応できる体制を確保している③右記の①②の内容につき届出を行っている④看護体制加算(Ⅱ)を算定している⑤早朝・夜間または深夜に施設を訪問し、診療を行う必要があった理由を記録する―ことを算定要件として新たに評価。
夜勤職員配置加算:現行の要件に加えて、夜勤時間帯を通じて、看護職員を配置していること、または喀痰吸引等の実施ができる介護職員を配置していることをより評価。
看取り介護加算:施設内で実際に看取った場合により手厚く評価。
【生活機能向上連携加算の創設】
(4)訪問看護
【在宅における中重度の要介護者の療養生活に伴う医療ニーズへの対応の強化】看護体制強化加算については、ターミナルケア加算の算定者数が多い場合について新たな区分を設ける。緊急時訪問看護加算では、2回目以降の緊急時訪問における対象者を拡大。
【複数名による訪問看護に係る加算の実施者の見直し】現行の看護師等とは別に看護補助者が同行し、役割分担をした場合の評価の区分を創設。
【報酬体系の見直し】要支援者と要介護者に対する訪問看護について、基本サービス費に一定の差を設ける。
(5)訪問リハビリテーション
【医師の指示の明確化等】医師の指示をリハビリテーションマネジメント加算の算定要件として明確化し、別途評価。
【リハビリテーション会議への参加方法の見直し等】リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)の算定要件について、リハビリテーション会議への医師の参加にテレビ電話等を活用する、医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士または言語聴覚士がリハビリテーション計画等について医師の代わりに説明できるなどの見直しを行う。
【リハビリテーション計画書等のデータ提出等に対する評価】一定の要件を満たした事業所を新たに評価。
【社会参加支援加算の要件の明確化等】
【訪問リハビリテーションにおける専任の常勤医師の配置の必須化】事業所の医師がやむを得ず診療を行わない場合についても、一定の要件を満たせば適正化した単位数で評価。
【基本報酬の見直し】リハビリテーション計画を作成する際の医師の診療が二重評価にならないようにする。
【医療と介護におけるリハビリテーション計画の様式の見直し等】医療保険と介護保険のそれぞれのリハビリテーション計画書の共通する事項について互換性を持った様式を設ける。当該様式を根拠として介護保険のリハビリテーションの算定を開始可能とする。
(6)通所リハビリテーション
【医師の指示の明確化等】医師の指示をリハビリテーションマネジメント加算の算定要件として明確化し、別途評価。
(7)居宅介護支援
【医療と介護の連携の強化】入院時情報連携加算、退院・退所加算を見直す。特定事業所加算は、平時からの医療機関との連携促進の要件を義務づけ、医療機関等との総合的な連携の促進を更に評価(平成31年度から施行)。
【末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント】ターミナルケアマネジメント加算のケアマネジメントプロセスを簡素化し、頻回な利用者の状態変化等の把握等に対する評価を創設。
【公正中立なケアマネジメントの確保】
契約時の説明等:利用者やその家族に対して、①複数の事業所の紹介を求めることが可能であること②当該事業所をケアプランに位置づけた理由を求めることが可能であること―の説明を義務づけ、これらに違反した場合は報酬を減額。
特定事業所集中減算:医療系サービスは対象から除外。
最後に、松原謙二副会長が、「地域包括ケアシステムの構築に向けて、地域医師会及びかかりつけ医を中心に多職種連携を図り、高齢者が安心できる医療・介護を提供できるよう、都道府県・郡市区等医師会の更なる支援と協力をお願いしたい」と総括して、協議会は閉会となった。