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平成30年(2018年)2月20日(火) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

平成30年度介護報酬改定の諮問・答申を受けて日医の見解を説明

 横倉義武会長は1月31日、第158回社会保障審議会介護給付費分科会(1月26日開催)において、平成30年度介護報酬改定案が示され、諮問及び答申が行われたことを受け、鈴木邦彦常任理事と共に記者会見を行い、日医の見解を述べた。
 同会長は、まず、平成30年度介護報酬改定率がプラス0・54%に決定されたことについて、日医が、「社会保障の充実は国民の不安を解消し、経済の好循環につながる」と繰り返し主張してきたことが反映されたものであると評価した。
 また、今回の同時改定で、「医療と介護の連携」に関して、看取りだけでなく多くのサービスで、リハビリや栄養など医療の視点が関与する仕組みが設けられたことに触れ、かかりつけ医の先生方には、地域の要介護高齢者を支えるために、医療・介護に関係する多職種連携のリーダーとなって活躍して頂くことを期待するとした。
180220c2.jpg 一方で、今後、高齢者人口の増加により、介護費用の更なる増大が懸念されるとして、制度を持続可能とするために適切な制度運営となるよう、関わりのある全ての人々が協力して対応していかなければならないと指摘した。
 更に、高齢者の自立支援や重度化防止のためには、サービスのあり方について科学的な視点に基づき検証を行う仕組みが必要であり、次期改定に向けた大きな課題だとした他、今回新たに創設された介護医療院については、医療ニーズのある要介護高齢者の生活施設としての機能を兼ね備えた介護保険施設として、これから大きく育てていく必要があるとの考えを示し、今後の制度運用を注視していくとした。
 同会長は、「我々は、厳しい財政状況を理解した上で、介護予防や自立支援・重度化防止、健康寿命の延伸などに対して継続的に取り組み、全ての世代の人々が生き生きと暮らし、働き、生きていけるような社会を目指すため、わが国の社会保障制度の充実を図る努力を続けていく」と結んだ。
 続いて、鈴木常任理事が、個別の項目について意見を述べた。

地域包括ケアシステムの推進

 地域包括ケアシステムの基本である医療と介護の連携については、診療報酬とも整合性の取れた連携が大きく進むことになったと評価するとともに、特にかかりつけ医とケアマネジャーとの連携が、これまで以上に深まることが期待されるとした。

介護医療院

 新設される介護医療院については、今後、地域の中で転換がどの程度進むのか見守りたいとした上で、第7期介護保険事業計画中に、今回示された基準や報酬等が適切かどうかを検証しつつ、第8期介護保険事業計画策定及び次期介護報酬改定に向けて、介護施設の機能分化と医療機関との役割分担を推進していくことが必要との考えを示した。

自立支援・重度化防止

 今回の改定の特徴としては、看取りや自立支援・重度化防止を推進するために、さまざまなサービスについて、医療や看護、リハビリや栄養の視点が強化されていることが挙げられるとし、今後は、医療では質を担保するために欠かせない「リスクマネジメント」の手法を介護でも取り入れる必要があるとした。

介護サービスの質の向上・適正化

 集合住宅居住者への訪問系サービスの対象建物・減算幅の見直しが行われるとともに、訪問回数の多い生活援助中心型の訪問介護に関しては、ケアマネジャーが作成するケアプランを市町村に提出して、地域ケア会議で検証を行う仕組みが創設されたことについて、「地域の多職種によるケアプランチェックが行われることによって、ケアマネジメントの質の向上と共に、利用者へのサービス提供の適正化にもつながることになる」と評価した。
 一方、次期改定への課題としては、現場の事務の負担軽減のため、これ以上作成する書類が増えないようにすることを挙げた。
 同常任理事はまた、「今回の同時改定を経て、地域包括ケアシステムは医療と介護の連携からまちづくりへの段階へと進化させていくことが求められており、元気な高齢者の就労や社会参加を進めるだけでなく、女性の仕事と子育ての両立可能な社会をつくる必要がある」と指摘。そのためには、子育てする側への視点として、「男性の育児に関する教育」「育児短時間勤務期間中の賃金補?」等が、事業者側への視点としては、「法定以上の子育て支援規定を定めた事業者への補助」「一定数または一定率以上の育児休業者がいる場合の事業者の負担軽減」等がそれぞれ重要との認識を示した。
 更に、「海外諸国はわが国が地域包括ケアシステムを構築できるかどうかに注目しており、世界トップレベルの長寿国として超高齢社会のモデルを示す必要がある」とするとともに、「国には次期改定までに、自立した高齢者を増やし、さまざまな人材が地域の中で活躍できる社会を目指していけるよう、地域包括ケアシステムを進化させていくための議論を行って欲しい」と述べた。

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