第39回産業保健活動推進全国会議が9月28日、日医会館大講堂で開催された。
あいさつで加藤勝信厚生労働大臣(田中誠二厚労省労働基準局安全衛生部長代読)は、「安倍内閣が"一億総活躍社会"の実現を目指し、働き方改革に取り組む中、厚労省としては、過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないよう産業医・産業保健機能の強化や、がん患者等が最大限活躍できる環境の整備及び治療と仕事の両立支援といった取り組みの推進を図っていく」として、理解と協力を求めた。
続いて、あいさつに立った横倉義武会長は、「人口、特に生産年齢人口減少社会において、産業保健活動の推進は、労働者の健康の保持増進を通じて、わが国の持続可能な社会の構築に大きく貢献する」と述べ、産業医や産業保健活動総合支援事業に期待される役割はますます増大するとの考えを示した。
その上で、会内の産業保健委員会において本年3月に産業医宛てに実施した「ストレスチェック制度の実施状況のアンケート調査」と、日医会員医療機関施設長宛てに実施した「医療機関における産業保健活動に関するアンケート調査」の報告を基に議論を深めて欲しいとした。更に、6月に設置した「医師の働き方検討委員会」では、勤務医のワークライフバランスの実現、勤務医の労働安全衛生の強化、地域医療提供体制の維持といった観点で議論を進めていることを紹介。本全国会議が産業保健の推進にとって建設的で実りあるものとなることに期待を寄せた。
その後、活動事例報告として、岡山産業保健総合支援センターの石川紘所長は、同センターが行った「石綿飛散が想定される作業現場における石綿作業環境測定とマスク効率に関する調査」などの調査研究等について、愛媛県の八幡浜地域産業保健センターコーディネーター井上千惠香氏は、関係機関との連携・協力を通しての利用事業場を増やすための取り組みについて、それぞれ紹介した。
次に、松本吉郎常任理事を司会として説明・報告が行われ、堀江正知日医産業保健委員会副委員長・産業医科大学教授が、「ストレスチェック制度の円滑な実施を目指して―アンケート調査を中心に―」と題して、改正労働安全衛生法に基づいて実施が義務化されたストレスチェックが産業医の契約や活動に及ぼした影響等について詳細に説明した。
また、中嶋義文日医産業保健委員会委員・日医医師の働き方検討委員会委員・三井記念病院精神科部長は、「医療機関における産業保健活動の推進―アンケート調査結果並びに医師の働き方検討委員会の取り組みを踏まえて―」と題し、アンケート調査の結果と、医師の働き方検討委員会での議論について報告した。
続いて、「病気の治療と仕事の両立―働き方改革実行計画から―」では、神ノ田昌博厚労省労働基準局安全衛生部労働衛生課長が「労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化」、大西洋英労働者健康安全機構理事が「トライアングル型支援などの推進」と題し、それぞれ説明した。
神ノ田労働衛生課長は、「働き方改革実行計画」の検討テーマの中でも、特に「病気の治療と仕事の両立」には、主治医、会社・産業医、患者に寄り添う両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制の構築が重要であると強調。とりわけ、両立支援コーディネーターは、患者・主治医・会社などのコミュニケーションのハブとして機能することが期待されるとし、2020年度までに2000人を養成するとの指標を示した。
大西労働者健康安全機構理事は、同機構における治療と就労の両立支援の方策確立と実施の経緯として、①治療と就労の両立支援に関する研究(平成21~25年)②治療就労両立支援モデル事業(平成26年~)③産業保健総合支援センターにおける両立支援の取組(平成28年~)④働き方改革の施策としての展開(平成29年~)―に沿って、"コーディネーターが活躍するトライアングル型両立支援""がん患者の治療と就労の両立に関する研究""両立支援コーディネーター研修""両立支援相談窓口"等の取り組みについて解説。今後の展望としては、事例集の作成と情報サイトの開設を挙げた。
協議では、相澤好治日医産業保健委員会委員長の司会の下、神ノ田労働衛生課長、大西労働者健康安全機構理事、松本(吉)常任理事、及川桂産業医学振興財団事務局長の4氏が、茨城・埼玉・岡山各県の医師会等から事前に寄せられていた「専任コーディネーターの身分保障と謝金の固定化」「陸運事業における衛生管理の取り組み」等の質問・要望についてそれぞれ回答を行った。