平成28年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年12月3日、日医会館大講堂で開催された。
今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は、少子化について、子育てに対する経済的負担が大きいことも一因であるとして、「社会全体で子育てしやすい環境を整え、未来を担う子ども達の健やかな成長を等しく保障するための施策が必要である」と指摘。妊娠期から子育て期にわたるまで、切れ目ない支援をワンストップで受けられる体制の整備が図られるよう、日医としても積極的に政策提言を行っていくとした。
初めに、温泉川梅代常任理事を座長として、中川副会長が、講演「地域医療構想に向けての医師会の取り組み」を行った。
同副会長は、地域医療構想について、病床削減や病床規制のための制度ではないことを強調するとともに、「病床の必要量」(必要病床数)は、医療需要を病床稼働率で割り戻して推計した患者数であり、基準病床数とは制度の目的、推計の方法共に異なることを説明。ただし、基準病床数と病床の必要量が異なる傾向を示した時は、病床の必要量が影響を受ける可能性があるとして、「地域医療構想調整会議で議論し、都道府県が適切な対応を行うよう、注視、提言していく必要がある」と述べた。
続いて、今村常任理事を座長として、シンポジウム「周産期医療提供体制の確保に向けて」が行われた。
岡井崇総合母子保健センター愛育病院院長は、「周産期医療体制の現状」について、日本は周産期死亡率の低さは世界で一位を誇る一方、妊産婦死亡率はあまり減っておらず、リスクの高い高齢出産の増加が産科医療を難しくしていると説明。更に、平成27年に日本産婦人科医会を始め複数の団体で設立した「日本母体救命システム普及協議会」で、救急の初期対応を学ぶ講習会を開催していることを紹介した。
羽鳥裕常任理事は、「専門医の仕組み」について解説。平成29年度からの導入が延期されたものの、現在丁寧な議論が積み重ねられているとし、日医からは、地域医療への配慮として、「基幹施設の基準は、原則として、都道府県ごとに大学病院以外の医療機関も含め複数認定される基準とすること」「専攻医のローテートについては、原則として、6カ月未満で所属が変わらないこと」などを要望したとした。
また、指定発言として、佐藤豊実筑波大学医学医療系産科婦人科学教授が、「産婦人科領域における専門医」について、検討の経緯を概説。指導医がいなくても専門医が常勤していれば連携施設と認める基準を定め、専攻医が地域医療にも携われるよう、基幹施設での研修は24カ月以内とし、連携施設での研修も義務づけたことなどを説明した。
中井章人日本医科大学産婦人科教授/日本医科大学多摩永山病院副院長は、「産婦人科医師の地域偏在、診療科偏在」として、平成16年の新医師臨床研修制度で産婦人科が選択科目になったことで、産婦人科医師数が伸び悩んでいることを指摘。施設数、医師数、分娩数とも周産期センターで増加する一方、一般病院では減少するなど、診療所と周産期センターとの二極化が進んでいるとした他、周産期センターの人材確保が課題であるとした。
神ノ田昌博厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課課長は、「最近の母子保健行政の動き―子育て世代包括支援センター等」と題して講演。妊娠期から子育て期にわたる多様なサービスをマネジメントする「子育て世代包括支援センター」について、平成32年度末までの全国展開を目指しているとし、「妊婦健診で行政的なサービスを必要としている妊婦さんがいたら、ぜひセンターに情報提供して頂きたい」と連携を求めた。
その後、シンポジストと参加者の間で活発な質疑応答が行われ、講習会は終了となった。