「平成29年度概算要求に対する日本医師会要望の説明会」が5月31日、厚生労働省内の会議室で行われ、日医から資料として示した要望書(全文は日医のホームページ参照)を基に、「地域包括ケアシステムの推進」「健康寿命延伸」等の実現に向けた予算の確保を求めた。
要望書は、2025年のあるべき姿に向けた改革を行うための予算確保を求めるために、取りまとめたものである。
その中では、(1)地域包括ケアシステムへの予算確保、(2)健康寿命延伸への予算確保、(3)感染症予防への予算確保、(4)災害対策への予算確保、(5)医療安全への予算確保、(6)医学・学術への予算確保、(7)医療保険・介護保険への予算確保、(8)控除対象外消費税への対応―の8項目について、具体的な事項と要望額を示し、その実現を強く要求している。
今回の説明会は、それらの要望項目を、厚労省の担当者に直接説明し、理解を深めてもらうために開催したものである。
今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、「地域包括ケアシステムを構築できるよう医療提供体制の改革を推進するために、さまざまな要望を盛り込ませてもらった。要望の趣旨をご理解頂き、予算の確保にご協力願いたい」と述べた。
引き続き、神田裕二厚労省医政局長があいさつした後、今村常任理事が資料を基に、前述の8項目の概要を説明。その中では、「医療等分野専用のセキュリティが確保されたネットワークの整備」「メディカルウイング(ドクタージェット)の導入支援」等を求めた。
これに対して、厚労省事務局は一定の理解を示した上で、(1)に関しては、「地域医療介護総合確保基金」への必要な財源確保を目指すとした他、医療等分野専用のネットワークの整備を推進する意向を示した。
(2)については、「健康増進法に基づき、生涯を通じた健康づくりを進めていく」とし、(3)に関しては、「今後とも感染症の予防対策、体制整備を推進していく」と述べるとともに、人獣共通感染症対策を進める考えを示した。
また、(4)については災害医療緊急体制の整備、(5)については医療事故調査制度の充実及び医療安全対策、(6)については指導医の確保等、それぞれ必要な費用の確保に努める姿勢を示した。
(7)については、高額薬剤の問題が指摘されていることに触れ、「医療のイノベーションの意欲を削(そ)がないということも重要であり、医療保険制度の持続可能性とどう両立させていくか等について検討していきたい」とした他、介護人材確保のための処遇改善にも努めていくとした。
更に、(8)については、「関係者等の議論の動向を踏まえながら検討したい」と述べた。
その後の意見交換では、中川俊男副会長が、医師の偏在を解消するためには現在の医師の実態を正確に把握することが重要だと指摘し、そのための方策として、医師・歯科医師・薬剤師調査において医師の異動・キャリアパスを追跡できるよう医師届出票の変更、システム改修等を求めた。
小森貴常任理事は、風しんの排除やHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンによる子宮頸がん予防について要望。
今村聡副会長は、日医の健診標準フォーマットを活用して健診データを標準化できるよう支援を求めた。
石川広己常任理事は、電子処方箋(せん)等の情報を扱う安全なネットワークの整備や医療・介護連携の効率化の推進を共に考えていきたいとした。