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令和8年(2026年)6月5日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

財務省財政制度等審議会の議論に反論

日本医師会定例記者会見 5月13日

財務省財政制度等審議会の議論に反論

財務省財政制度等審議会の議論に反論

 松本吉郎会長は、近く取りまとめられる「春の建議」に向けた財務省財政制度等審議会財政制度分科会での議論を踏まえ、「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)(以下、財政審資料)」における、(1)社会保険料の負担、(2)医療法人の業務範囲の拡大及び医療法人・医療機関に対する税制上の特例措置―の他、「AIの利活用」「医療機関の経営情報のさらなる『見える化』」「保険給付外サービス」に関する主張について、日本医師会の見解を示した。

公助・共助・自助のバランスが重要

 松本会長は(1)について、「必要かつ適切な医療は保険診療により確保しなければならない」との見方を改めて示した上で、①税金による公助②保険料による共助③患者の自己負担による自助―のバランスを取りながら、自己負担のみを上げないことや低所得者等に配慮することの重要性を重ねて指摘した。
 その上で、財政審資料の「高齢者医療における患者自己負担の在り方」に言及し、自助については、高齢者には複数の疾患を抱えている方や低所得の方も多いことから、「応能負担の観点から、負担できる方にはその負担能力に応じて負担していただくという考え方は必要だが、いきなり一律3割負担にしてしまうといった乱暴な議論は避けなければならない」とし、バランスを取りながら少しずつ段階を経て、配慮すべき部分にはしっかりと配慮しつつ、応能負担の議論を進めるべきとの考えを示した。
 共助に関しては、財政審資料でマルチワーカーの社会保険適用を求めており、負担能力に応じて負担していただくことは重要なものの、「これも負担増を求める方向の提案だ」と指摘するとともに、公助については「財政審は減らすことしか頭にないようだ」とした上で、①②③のバランスを取りながら進める必要性を再度強調した。

社会保険診療で経営が成り立つようにすべき

 (2)では、まず、財政審資料において「医療法人の業務範囲の拡大」として、現在禁止されている医療法人の収益事業を条件付きで認め、その際には医療機関に対する税制上の特例措置と併せて、その在り方を検討するよう求めていることに触れ、「医療法人の収益業務は現在、社会医療法人に限って一定程度認められているが、これは、地域で不採算な医療など、公益性がより高い医療を担う使命を負っており、より厳しい管理能力が求められていることが背景にある」と指摘。「これを一般の医療法人にまで広げてしまえば、財政審が言うような『経営基盤強化』につながるケースばかりではなく、逆に収益事業への投資がうまくいかない場合、その赤字を医業収入から穴埋めする事態になりかねない」として懸念を示した。
 その上で「こうした事態を防ぎ、良質かつ適切な医療を守るためにも、日本医師会の『医の倫理綱領』にうたっているとおり、営利を目的としてはならない」と強調。「医療機関を開設する法人は非営利原則の堅持が大前提であり、一部の特に不採算な医療を担う医療機関を除けば、社会保険診療で経営が成り立つようにすることが原則だ」と主張した。
 さらに、医療法人の業務範囲については、現行制度の中で医業の附随業務・附帯業務として「認められるもの」「認められないもの」を整理することが第一だとの考えを示した。
 また、財政審資料において、「医療法人の社会保険診療以外の所得への事業税の軽減措置」に関して、医療法人が営利追求を禁止されていることを存続理由として挙げている点については、「あたかも医療法人に営利追求を認める代わりに事業税の軽減をなくすべきとも読み取れる資料となっている」と指摘するとともに、「同軽減措置は健診、予防接種などの地域の保健・衛生に関する業務の多くを行政と一体となって担っている医療機関の地域貢献に対する地方税上の措置としてふさわしいものだ」との考えを示し、「医療法人に収益業務を認める一方で、正当な税制を脅かそうとするような議論は受け入れられない」と強く反論した。
 そして、財政審資料において、社会保険診療報酬の概算経費の特例について、「医療DXの進展も踏まえれば合理性が低下している」との主張を展開している点にも言及。「現在、地方で細々と医業を続けている高齢の医師が突然、概算経費を認められなくなれば、今までやったことのない経理処理を求められることになる。そうした先生が困窮した果てに『この際、閉院してしまおう』ということになれば、人口減少や医師不足が進む地方の医療提供体制は崩壊しかねない」との危機感を示した。
 「AIの利活用」についてはまず、日本医師会の「AIの臨床利用に関する検討委員会」が取りまとめた答申では、今後AIをうまく活用していくことは重要である一方、医療という分野は「AI単独で完結」ということにはならず、あくまで「拡張知能」という位置付けにすることを指摘していると紹介。特に人生の最終段階の医療などにおいては、人間の尊厳を守るという観点からも医師が最終的な責任を持たなければならないと強調した。
 財政審資料に掲載されている財政審が考える「医療提供体制の未来像のイメージ」に対しては、「医療はできる限り『AI単独で完結』することが理想であるかのような内容になっており、医療側のAIの利活用に対する考え方とは根本から異なる」と述べた。

全ての医療法人への給与費提出の義務付けに反対

 「医療機関の経営情報のさらなる『見える化』」については、財政審資料で「MCDB(医療法人の経営情報のデータベース)における必須報告項目の追加や細分化が必要」と主張されている点に触れ、全ての医療法人が提出可能な情報には限度があり、科目の細分化に当たっては、原則として医療法人が既に集計済みの科目にとどめるなど、法人の負担に配慮すべきとの姿勢を示した。
 さらに、財政審資料で「職種別の給与・人数の提出の義務化は必須」とされている点に関しては、「例えば、ある医療機関で、ある職種の従事者が1人の場合は個人の給与が報告対象になってしまう。今後MCDBデータが研究者等に提供される制度が始まるが、そこで仮に当該医療機関が特定されてしまった場合、個人の給与情報の流出にもつながるのではないか」と危惧した。
 また、職種の分け方やくくり方も医療機関によって様々であることを説明し、「職種ごとの1人当たり給与費の提出を、全ての医療法人に一律に義務付けることは現実的ではない。財政審が求めるような『より細かく科学的』な対応が必要であれば、任意の項目を活用する中で、できるだけ回答を促していくことの方が必要だ」と訴えた。
 「保険給付外サービス」については、令和8年度診療報酬改定で追加された「Wi-Fi利用料」を例示し、「これは利便性を追求するサービスが対象となっている。財政審資料では『オンライン診療の受診に係るシステム利用料』を引き合いに出し、通常の診療の窓口業務を保険給付外サービスに位置付けることを主張しているが、全くもって容認できない。病に苦しむ方や高齢の方に大きな負担が生じるものは、その対象外とすべき」と断じた。
 さらに、財政審資料では「窓口業務」と単に一くくりにしている点に対しても、「ある程度、本人がICT機器に慣れている、もしくは周りにサポートしてくれる方がいる場合にのみ利用されるオンライン診療とは違い、対面診療は高齢者を含め、あらゆる方が来院する可能性があり、事情が全く異なる」と指摘。
 通常窓口では患者さんの様子を見て柔軟な対応が行われていることから、「実質的に一連の診療の入口と言え、診療と窓口業務は不可分の関係だ」と強調した上で、「Wi-Fi利用料」や「オンライン診療の受診に係るシステム利用料」等はあくまで例外として考える必要があると訴えた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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