日本医師会定例記者会見 4月22日


松本吉郎会長は、財務省財政制度等審議会財政制度分科会で「春の建議」に向けた議論が開始されたことを受け、「財政総論(以下、財政審資料)」における、(1)社会保障における労働生産性、(2)いわゆる給付と負担―に関する主張について、日本医師会の見解を示した。
松本会長はまず、(1)について、財政審資料の「産業構造と労働生産性」の中で、「医療・介護産業においては、むしろ生産性が低下」とされていることに対し、医療・介護分野は人件費が約5割を占める労働集約型産業である点を指摘。「主に高齢化により医療費は増加するが、統計上の労働生産性を上げるためには、その高齢化の伸び以上に公定価格である診療報酬を上げる必要がある」と強調した。
さらに、①診療報酬上の人員配置の要件は令和8年度診療報酬改定で多少緩和が図られたものの、依然として厳密に設定されている②医療・介護に関しては、成長型経済の実現に寄与していくためのアウトプットは生命や健康である―ことを説明し、「製造業等と単純に比べるのは、比較対象としてあまりにも無理があるのではないか」と指摘した。
その上で、生産性の向上に向けては、「日本医師会を始め、医療界は医師の働き方改革や医療DXの推進などにより、これまでも尽力してきた」とし、引き続き推進していく姿勢を示した。
(2)を巡っては、自助・公助・共助のバランスについて、財政審資料の「社会保障給付費の増と財政」では金額ベースで書かれ、公助(税金)が増えたことが強調されている点に言及。国民医療費の財源構成比の割合で見れば、自助(患者負担)は2013年が11・8%、2023年も同様に11・8%で割合に変化はない一方、公助(税金)は38・8%から37・5%と、その割合はむしろ減っているとして、「国民の生命と健康を守るためにも、しっかりと税を投入すべき」と強調。加えて、現在議論されている健康保険法等改正によって、高額療養費制度やOTC類似薬に関する追加負担等が実施されることになれば、自助は更に増えることになるとした。
また、財政審資料の「医療・介護に係る保険給付費等の伸びと現役世代の保険料負担」において、医療・介護保険給付費等の伸びや保険料等のデータが示されたことにも触れ、これまでの記者会見でも述べてきたとおり、財務省は恣意(しい)的に2012年からの平均値を比較して、雇用者報酬の伸びを医療・介護保険給付費の伸び等が上回ると主張していると改めて批判。
その上で、①直近3年(2021~2024年度)の医療・介護に係る保険給付費等の伸びはプラス2・2%であり、財政審資料に示されたプラス2・8%(2012~2024年度)よりも更に減少している②直近3年(2021~2024年度)の雇用者報酬の伸びはプラス2・9%であり、財政審資料に示されたプラス2・0%(2012~2024年度)より伸びており、「2025年度も加えるとプラス3・23%で直近3年よりも更に伸びている」③財政審資料では「保険料率が上昇」とされているが、協会けんぽの保険料率は2026年度9・9%となり、0・1%引き下げられている―ことなどを示して反論した。
さらに、財政審が資料に示した注釈「直近3年(2021~2024年度)の医療・介護に係る保険給付費等の伸びはプラス2・2%、雇用者報酬の伸びはプラス2・9%」に関しては、これまでの日本医師会の指摘を受けて示されたものだとした上で、「この注釈の記載を踏まえれば、財政審が資料で示した保険給付費等の伸びと雇用者報酬の伸び(の図)は、全く逆の形(傾き)になり、雇用者報酬の伸びが医療・介護保険給付費等の伸びを上回る」と指摘。インフレ下における給付と負担に関する対応については「デフレ下のコストカット型経済を踏襲するのではなく、インフレ下の令和8年度の予算編成を"道しるべ"として踏襲すべきだ」と強く主張した。
加えて、財政審資料において、公費負担増に対して事業主負担等が少ないとする一方で、保険料率の上昇による逼迫(ひっぱく)感を訴えていることを指摘。「医療費は主に高齢化によって増加しているのであり、必要な医療の財源はしっかりと確保すべき」と反論した。
その他、昨年12月の「秋の建議」において、財政審が「令和8年度診療報酬改定は、日本経済の新たなステージへの移行が明確になる中での最初の診療報酬改定である。このため、今回の改定において、今後の道しるべとなるような、経済・物価動向等への対応と保険料負担の抑制努力を両立させるモデルを示すことが求められる」と主張していたことにも触れ、「インフレ下の令和8年度の予算編成を"道しるべ"として踏襲すべき」と提言した。
最後に松本会長は、日本医師会はこれまでにも「税金による公助」「保険料による共助」「患者の自己負担による自助」の三つのバランスを取りながら進めることが大切であり、自己負担のみを増やさないことと併せて、低所得者への配慮が重要であると主張してきたことを改めて説明。「令和9年度予算編成に向けて『骨太の方針』の議論が、今回の財政審での議論を契機に活発になると思われるが、日本医師会は引き続き強く主張していく」と力を込めた。
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