

松本吉郎会長と長島公之常任理事は4月8日の定例記者会見で、令和8年度診療報酬改定でのベースアップ評価料による賃上げについて説明した。松本会長は、対象職種の拡大や点数の大幅な増点などの見直しによって、より一層、職員の賃上げと人材確保に役立つものになった点を評価した上で、「ぜひとも多くの医療機関、とりわけ病院に比べると、まだ届出率が低い診療所において、積極的に算定して頂きたい」と訴えた。
松本会長は今回の改定について、「インフレ下における今後の『道しるべ』になった」と改めて述べた上で、改定率について、本体プラス3.09%のうち、1.70%が賃上げ対応分として措置され、ベースアップ評価料の見直しが行われた経緯を説明した。
更に、「日本医師会としては、職員の方々に医療機関でしっかりと働いていきたいと思って頂けるように、他産業に追い付けるような賃上げの実現を目指している」と強調。一方で、ベースアップ評価料の届出や報告に対して、小さなクリニックなどはさまざまな事情でハードルを感じているとの意見がある点にも言及。この点を踏まえ、ベースアップ評価料の見直しの概要や届出、報告のポイントを会見で説明するに至ったとした。

具体的な見直しのポイントなどを説明した長島常任理事はまず、ベースアップ評価料の届出状況に言及。届出率について、無床診療所は41.1%(令和7年12月時点)から59.2%(令和8年3月時点)、有床診療所は51.8%(同)から70.0%(同)とそれぞれ20%程度増加しているとした。病院は元々高い水準にあり、90.4%(同)から93.9%(同)に微増したとした。無床・有床診療所の届出率について、「この水準を更に上げて頂きたい」と訴えた。
見直しの特徴としては、(1)対象職種の拡大、(2)大幅な増点、(3)令和8、9年度の段階的評価、(4)継続的賃上げ実施医療機関とそれ以外で異なる評価―を挙げた。(1)(2)を踏まえ、「ぜひ届出・算定をして頂いて、職員の賃上げと人材確保に活用頂きたいと強く願っている」と述べた。
(1)では、現行では「主として医療に従事する職員」となっているが、見直しにより「当該保険医療機関に勤務する職員」に変更され、薬剤師や看護師、看護補助者等に加え、40歳未満の医師や歯科医師、薬局薬剤師、事務職員等まで対象が拡大されるとした。
(2)(3)(4)に関しては、外来・在宅ベースアップ評価料(I)を事例に解説した。
令和8年度からベースアップ評価料の届出を行い賃上げを行う医療機関の場合、令和8年度は初診17点、再診4点が算定でき、令和9年度はその倍の初診34点、再診8点を算定できるとし、「初診は令和6年度改定時の点数と比べて、令和9年度は約6倍の増点となる」などと説明した。
令和7年度以前から継続して賃上げを行っている医療機関の場合は、令和6年度改定のベースアップ評価料相当分が更に上乗せされることから、令和8年度は初診23点、再診6点が算定でき、令和9年度は初診40点、再診10点を算定できるとし、「初診は令和6年度改定時の点数と比べて、令和9年度は約7倍の大幅な増点となる」などと指摘した。
継続的に賃上げを実施する保険医療機関としては、令和8年3月までにベースアップ評価料を算定している保険医療機関の他、これまでベースアップ評価料を算定しておらず、令和8年度に初めてベースアップ評価料の届出を行う保険医療機関であっても、令和6年3月時点と比較して、5.5%(看護補助者、事務職員は8%)に相当する水準以上のベア等を行った保険医療機関が挙げられるとした。
届出についても詳説した。ベースアップ評価料を6月から算定する場合、5月中に全ての医療機関が届出を行わなければいけないとし、「令和6年度改定のベースアップ評価料を届け出ている医療機関も5月中に改めて届出を行う必要がある」と注意を促した。この他、これまで届出時に必要だった賃金改善計画書の作成は不要となることにも触れた。
更に、届出を行う際の負担は「ほとんど無くなった」と指摘。届出の際に計算が必要となるのは対象職員の人数のみだとした上で、「常勤の職員だけの場合はその人数を記入するだけでよいが、パートの職員がいる場合、その人数を勤務時間で常勤換算する必要があり、ゼロより大きい数字であればよい」と述べた。
令和8年8月の実績報告では、令和8年3月以前から継続して算定している医療機関は「令和7年度の賃金改善実績報告書」「令和8年6月以降の賃金改善中間報告書」が、令和8年6月から初めて算定する医療機関は「令和8年6月以降の賃金改善中間報告書」の提出が、それぞれ必要になるとした。
報告書の内容としては、概ね「ベースアップ評価料による収入の実績額」「令和8年5月と比較したベースアップの実績(対象職員全体及び職種別)」であるとし、「少し面倒であるが、それぞれ総額の入力なので、それほど大きな負担にはならない」と指摘した。
賃上げの目標として、ベースアップ評価料は令和8年度に3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)の賃上げを実現し、令和9年度には令和8年度の2倍の賃上げを目指すとされている点について「これはあくまで政府目標だ」と指摘した。
その上で、ベースアップ評価料の算定要件は評価料として入ってきた収入を全額賃上げに使うことであり、政府目標に届くことは要件となっていないとし、「賃上げ目標の数値に届かなくてもベースアップ評価料は算定できる」と強調した他、厚生労働省が発出した「疑義解釈(その2)」でも同様の内容が記載されていることにも触れた。
長島常任理事は、更に詳しく分かりやすい資料を会員に対して提供する方針を示した上で、「ベースアップ評価料を活用して、職員の皆様の処遇改善にぜひ役立てて頂き、他産業への人材流失を止めて頂きたい」と訴えた。
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