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令和8年(2026年)4月5日(日) / 日医ニュース

「医療DX新時代~現状の課題と未来の展望~」をメインテーマに開催

 令和7年度日本医師会医療情報システム協議会が3月7、8の両日、「医療DX新時代~現状の課題と未来の展望~」をメインテーマとして、日本医師会館大講堂とWEB会議のハイブリッド形式で開催され、さまざまな取り組みや課題が報告された。
 また、当日は1階ロビーにおいて「標準型電子カルテ(導入版)」や次期顔認証カードリーダーなどの展示も行った。

【第1日】

260405g1.jpg 協議会は担当の長島公之常任理事の司会で開会。冒頭あいさつを行った松本吉郎会長は、「医療DXの目的は、業務の効率化や適切な情報連携などを進め、国民・患者により安全で質の高い医療を提供するとともに、医療現場の負担を減らすことにある」と指摘。また、地域医療を守るため、全ての医師が現状のままでも医療を継続できることが大前提だとして、「工程表ありきで医療DXを拙速(せっそく)に進めてはならない」と強調するとともに、本協議会が医療DXに対する考えを深める好機となることに期待を寄せた。

Ⅰ.医療DX―厚生労働省からの現状報告と日本医師会の考え

260405g2.jpg 1日目には五つの講演が行われた。
 木下栄作厚生労働省医政局参事官(医療情報担当)は、国は医療DX推進本部を筆頭に、令和5年に策定した工程表にのっとって医療DXを進めているとした他、診療情報等の共有・利活用は順次広がっており、「平時でも有事でも活用頂けるよう、今後も取り組んでいく」と述べた。
 電子カルテ情報共有サービスに関しては「医療現場に支障が出ないよう留意しつつ、できることから進める」とした。
 更に電子カルテについては、医科診療所向けの標準仕様を令和7年度中に策定予定である他、「標準型電子カルテ(導入版)」を令和8年度中の完成に向けて開発中であること等を紹介した。
 山田章平厚労省医療介護連携政策課長(医政局、老健局併任)は、オンライン資格確認について、導入率が約98%に達し、本格運用開始後にはレセプトの返戻件数が約6分の1に減ったことを報告。また、マイナ保険証の利用率は約63%であり、高齢者の利用率は高い一方、若年者は比較的低いことが課題だと指摘した。
 更に、資格確認時における顔認証付きカードリーダーの「目視確認モード」の利用を呼び掛けた他、本年3月末を目途にスマートフォンのマイナ保険証をマイナ資格確認アプリで読み取る機能をリリース予定であることや、今夏以降に次期顔認証付きカードリーダーが発売されること等を報告した。
 徳弘雅世厚労省大臣官房総務課企画官(医薬局併任)兼電子処方箋(せん)サービス推進室長は、電子処方箋について、本年1月時点で医科診療所の導入率は約25%、月間の調剤結果登録割合は約85%に達した他、導入するメリットとして①患者に服薬状況を確認せずに済む②重複投薬・併用禁忌チェック機能で患者の安全を守ることができる③診療報酬上の利点がある―ことを説明。更に、本年4月より電子処方箋管理サービスで院内処方も登録可能となることに言及した他、一昨年に発生したハウスコード問題の対応への協力に謝意を示した上で、「システム更改等の機会に電子処方箋を導入頂きたい」と呼び掛けた。
 島添悟亨厚労省保険局医療介護連携政策課推進官・保険局診療報酬改定DX推進室室長代理補は、「診療報酬改定DXの至上命題は医療機関の負担軽減だ」として、共通算定モジュールの本格運用を本年6月より開始し、令和10年度改定からはレセプトの請求支援機能を提供予定である他、レセコンの標準仕様を令和7年度中に策定予定であること等を説明。
 また、システム改修の負担軽減に向けて、告示等の構造化・階層化や、医科留意事項通知様式の記載項目の統一化に取り組んでいる他、都道府県を跨いだ地単公費の現物給付化に向けて、本年4月より全年齢・全地単公費に係る併用レセプト請求が可能になること等も併せて報告した。
 長島常任理事は、日本医師会が目指す医療DXは国民・患者に安全・安心でより質の高い医療を提供するとともに、医療現場の負担を軽減することにあると説明。医療DXを進める際には、「拙速に進めて国民と医療現場に混乱を生じさせてはいけない」と強調した他、国は環境整備やセキュリティ対策等に係る費用の全額負担を行うよう改めて要請した。
 電子カルテに関しては、医療DXに係る各種機能の活用手段であり、あらゆる医師が恩恵を受けられるよう求め続けた結果、「標準型電子カルテ(導入版)」の開発という形で結実したと語った。
 更に、オンライン資格確認が短期間でほぼ全ての医療機関に導入されたことは「世界に誇るべき成果」だとした他、電子処方箋は重複投薬や併用禁忌のアラートが出るため「医療安全という面でも明確なメリット」と説明。診療報酬改定DXについては、「共通算定モジュールの活用が各種負担の軽減や地単公費の現物給付化に資する」と述べた。
 また、地域医療情報連携ネットワーク(以下、地連NW)は全国医療情報プラットフォーム(以下、全国医療情報PF)との併用が必要だと強調するとともに、オンライン診療は「対面診療を原則として、適切に組み合わせるべき」とした上で、「利便性や効率性のみを重視した安易な拡大は禁物であり、医学的な有効性、必要性、特に、安全性を最優先すべき」と主張した。
 その他、同常任理事は、(1)令和8年度診療報酬改定における医療DX、(2)医療DXに関する日本医師会の取り組み―等を概説。(1)では、ICT等を活用した際の人員配置基準が柔軟化された他、「電子的診療情報連携体制整備加算」の新設や、D to P with NやD to P with Dの評価が大幅に拡充されたこと等を説明。(2)では、医師資格証の発行状況等を紹介した。
 その後は、出席者と演者との間で活発な意見交換が行われた。
 なお、1日目には、協議会に先立ち事務局セッションが実施され、日本医師会事務局から「HPKIの最新の動き」「ペイシェントハラスメント・ネット上の悪質な書込み相談窓口の運用状況」について報告。更に、村上元茂法律事務所マネジメントコンシェルジュ代表弁護士から相談窓口の事例等、鴫原祐輔株式会社Blue Planet-works取締役上席セキュリティアドバイザーから昨今のセキュリティインシデント等について、それぞれ説明が行われた。

【第2日】

 2日目には、二つのテーマに関するセッションが行われた。

Ⅱ.地域医療情報連携ネットワークの現状の課題と未来の展望

260405g3.jpg 長島常任理事は、全国医療情報PFと地連NWの特性等に触れた上で、日医総研の資料を基に地連NWの状況を報告。「地連NWは新時代に突入した」と述べ、地連NWが医療機関や患者にもたらす有用性を明示することが、地連NWの将来、ひいては地域医療を活性化させるとの考えを示した。

260405g4.jpg 藤川光一広島県医師会常任理事は、全国医療情報PFとの差別化を図る施策として、(1)AI胸部X線画像診断支援システム、(2)HM-BOX(ファイル共有・送受信システム)、(3)医療データ特急便(旧ファイル開示相談システム)、(4)検査データ共有システム(WIP)、(5)Zero Media Project(WIP)―を紹介。(1)は医師会員の獲得に、(2)は在宅医療・介護系会員の獲得に、それぞれ寄与しているとした。
 藤井進東北大学病院医療データ利活用センター長/東北大学災害科学国際研究所教授は、医療AI・医療DXの進展に伴い、セキュリティ対策の重要性も高まっていると指摘。地連NWに「ランサムウェア対応」「クラウド型AIサービス」「IT-BCP訓練」の機能を加えた試みを説明するとともに、将来、地連NWは医療AI・治験・創薬促進開発基盤構想へと発展するのではないかとの見解を示した。
 小阪真二NPOしまね医療情報ネットワーク協会副理事長/島根県立中央病院長は、しまね医療情報NW「まめネット」について、自治体と共同した運営体制の下、「地域医療機関との連携」「連携カルテサービス」「医療と介護を橋渡しするサービス」が構築されていることを説明。その上で「領域の拡大が今後の事業継続の鍵となる」と述べた。
 柳原毅志富士通Japan株式会社ヘルスケア事業本部第二ヘルスケアソリューション事業部シニアディレクターは、自社がサポートする地連NWの事例等を示しつつ、全国医療情報PFとの併用のためには現場のユースケースの想定が必要だと強調。引き続き、個々の地連NWの活性化に向けて伴走する姿勢を示すとともに、検査渋滞の緩和を図るといった地域最適化の展望を明らかとした。
 島貫隆夫日本海総合病院病院統括医療監/地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構理事長は、庄内地域における地連NW「ちょうかいネット」について、ID-Linkを利用したシステムであり、医師、看護師の他、ケアマネジャーによる活用も多いこと等を報告した。
 また、2024年10月より全国ID-Link EHRを開始したことにも触れ、今後は、全国医療情報PFと全国ID-Link EHRとのAPIによる連携に期待を寄せた。
 伊藤龍史株式会社エスイーシー取締役・情報処理事業本部長は、地理的制約の無い「ユニオン」の概念に基づき、共同の目的で施設を結ぶ重要性を強調。また、全国医療情報PFを「広さ」、ID-Linkを「深さ」、更にPHRを加え「奥行き」とする3軸を提示し、「この3軸がそろった時、全人的医療に近付く」として、併存から共創していく将来像を語った。
 その後の総合討論では、電子カルテ情報共有サービスと地連NWの関係性、電子カルテベンダーに依存しない地連NWのあり方等、活発な意見交換が行われた。

Ⅲ.オンライン診療と遠隔医療―現状の課題と未来の展望

260405g5.jpg 九十九悠太厚労省医政局総務課保健医療技術調整官は、2040年頃に高齢者人口がピークを迎えることを見据え、昨年12月に成立した改正医療法の概要等について解説。また、医療法の改正に伴い、オンライン診療が法に位置付けられたことから、「オンライン診療受診施設」が創設され、違反に対して都道府県知事等の是正命令等が可能となること等を説明した。
 原田昌範山口県立総合医療センターへき地医療支援センター診療部長は、山口県のへき地医療の現状と課題に触れた上で、へき地でのオンライン診療(D to P with N)の事例を紹介。また、郵便局等への診療所の設置やオンライン巡回診療車の活用等にも触れ、「引き続き離島・へき地でも持続可能な地域包括ケアの構築を目指す」と語った。
 安藤健二郎仙台市医師会長は、「日本でのオンライン診療は『D to P with N』型が適しており、信頼感を高めることが普及の鍵である」とした上で、信頼されるオンライン診療を目指すため、テレプレゼンスシステムや低軌道衛星通信等を活用した事例について概説。更に、普及に向けて、低コストで自作したシステムについても紹介した。
 高木俊介横浜市立大学附属病院集中治療部長は、ICU運営における課題として、看護師不足、情報共有不足を挙げ、遠隔ICUがその助けになると強調。その効果として、現場医師の負担軽減や在院日数の短縮等を報告する一方、存続のためには、診療報酬上の課題解決や適切な評価が求められるとした他、AIにより、モニタリング・解析を全自動化する展望も示した。
 諸橋一弘前大学医学部附属病院消化器外科准教授は、日本外科学会の遠隔手術推進プロジェクトの成果として、「通信遅延と必要帯域の限界」「通信の安全性」「ロボットの技量」等が検証できた他、世界に先駆けて「遠隔手術ガイドライン」を策定したことを報告。「遠隔医療は、今後、地方と大都市の医療格差の是正や働き方改革にも資するものとなる」とその成果に期待を寄せた。
 その後のパネルディスカッションでは、「看護師不足への対応策」「遠隔医療の持続可能性とコスト負担」等について、活発な質疑応答が行われた。
 最後に総括した長島常任理事は、「オンライン診療と遠隔医療は新時代を迎えた。国民の役に立ち、より良い生活を送ってもらうためにも、適切な体制構築が求められる」と述べ、協議会は終了となった。

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