令和7年(2025年)9月5日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
最低賃金、人事院勧告の引き上げ等を受け期中改定の必要性を国に訴えていく考えを示す
松本吉郎会長、城守国斗常任理事
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松本吉郎会長と城守国斗常任理事は8月20日に記者会見を行い、医療機関の経営悪化が深刻化している状況を踏まえ、最低賃金が引き上げられる今秋から年末に向けて期中改定が必要だとの認識を改めて強調し、国に働き掛けていく姿勢を示した。 |
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ベースアップ評価料の更なる引き上げでの対応は困難―松本会長
冒頭、松本会長は最低賃金について、プラス5・97%が見込まれ、2025年春季労使交渉の平均賃上げ率が5・26%、人事院勧告が3・62%など、賃上げに関する指標が軒並み高水準で上がっていることに言及。一方、医療機関は人員配置基準の要件もあり、医療職一人当たりの労働生産性を上げて全体の人数を減らすような対応は難しい状況で、人員を確保し続ける必要があると説明。更に、東京商工リサーチの調査では今年上期の医療機関の倒産件数が16年ぶりの高水準となり、帝国データバンクの調査でも上半期における医療機関の倒産が過去最多のペースとなっているなど、極めて憂慮すべき状況であることを指摘した。
その上で、「診療報酬は公定価格であり、賃上げにとても対応できる状況にはない。特に最低賃金は、ベースアップ評価料の対象として含まれない医療機関の従事者に大きな影響があるため、ベースアップ評価料の更なる引き上げで対応することには無理がある」として、基本診療料を中心とした引き上げが必要な理由を説明するとともに、期中改定の実施を訴えた。
公定価格を引き上げなければ人材流出に拍車が掛かる―城守常任理事
続いて城守常任理事は、(1)8月4日の中央最低賃金審議会で公表された「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安」のとおりに引き上げられた場合、全国加重平均は昨年の1055円から63円上がり1118円(プラス5・97%)となる見込みである、(2)8月7日には人事院から令和7年度の国家公務員給与を平均3・62%引き上げるよう勧告がなされ、11月以降に公布施行される―ことを説明。
更に、この数年、最低賃金は4~6%前後の伸びを示しているものの、医療は公定価格で運営されており、診療報酬改定は2年に一度のみで、その本体改定率は令和4年度改定ではプラス0・43%、令和6年度改定ではプラス0・88%と、最低賃金や人事院勧告の高い伸び率、「骨太の方針2025」の注釈でも示された2025年春季労使交渉の平均賃上げ率5・26%等に対応できるような状況ではないことを指摘した。
同常任理事は、「医療職は専門的な教育を受け、職務内容を反映した賃金体系となっているが、これがマスコミで報道されるような最低賃金に近い状態になってくると、他産業への人材流出に更に拍車が掛かることは明白で、介護における人材流出は更に深刻な状況である」と述べ、公定価格の引き上げが必須であるとした。
特に最低賃金は、ベースアップ評価料の対象として含まれない「専ら事務作業を行う者」に大きな影響があることから、ベースアップ評価料の更なる引き上げではなく、基本診療料を中心に引き上げるべきとし、「最低賃金が引き上げられる今秋から年末に向けて期中改定が必要だと考えており、国に働き掛けていきたい」との意向を示した。
問い合わせ先
日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)