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令和7年(2025年)4月5日(土) / 日医ニュース

各医会から日本医師会への要望などを踏まえ活発に討議

各医会から日本医師会への要望などを踏まえ活発に討議

各医会から日本医師会への要望などを踏まえ活発に討議

 第32回日本医師会・日本臨床分科医会代表者会議が3月3日、日本医師会館小講堂で開催され、日本医師会からは松本吉郎会長を始めとした役員が出席。分科医会からは幹事を務めた日本小児科医会を始め、13医会等の会長等代表者が参加し、各医会等からの日本医師会への要望などに係る意見表明の後、活発な討議が交わされた。
 冒頭、開会あいさつを行った伊藤隆一日本小児科医会長は、今回の代表者会議の開催に先立ち、各医会等に対し、日本医師会への要望や、総会・理事会のWEB化状況などについてアンケートを実施したことを報告。また、多くの団体に共通する問題として、(1)OTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化の動き、(2)人件費や物価の上昇等により疲弊する医療機関経営―について触れ、日本医師会の協力無しにこの難局は乗り越えることはできないとの認識を示した。
 これを受けあいさつした松本会長は、OTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化について、患者の医療安全及び自己負担額が増えるという観点から見て大きな問題であると指摘。特に、自己負担額が増えることで患者が受診を控えれば、疾病の重症化等その影響は広範な診療科に及ぶと危機感を示し、一致団結して反対の声を上げる必要性を訴えた。
 また、高額療養費制度の負担上限額引き上げの議論については、高額医薬品の上市等により増大を続ける医療費に歯止めを掛けるという点に一定の理解を示した上で、同制度が患者にとってはセーフティーネットとして機能していることを強調。給付と負担のバランスを考慮しながら制度の存続を図る必要性があるとの認識を示した。
 続いて、長島公之常任理事からベースアップ評価料の届出が大幅に簡素化されたことに関する説明が行われた後、各医会等から、主に日本医師会への要望が述べられた。
 万代恭嗣日本臨床外科学会長は、会員数の減少と、会員に占める勤務医の割合が開業医を上回っている現状を踏まえ、特に若手の外科医を巻き込んだ活動を展開していく上での協力を求めた。
 石渡勇日本産婦人科医会長は、分娩費用への保険適用について、①費用が標準化される②多岐にわたる妊婦のニーズに応じられなくなる③産科医療機関の経営が成り立たなくなる―ことを理由に反対とし、日本医師会にも、引き続き反対の姿勢を明確に示すことを求めた。
 また、産科診療所が減少していることに触れ、今後、高い水準での周産期医療が困難になるとの危機感を示した。
 川嵜良明日本臨床耳鼻咽喉科医会長は、花粉症においては重症化する患者が多く、QOLにも悪影響を及ぼしていることを報告。また、電子カルテの義務化は高齢医師の廃業を誘発しかねず、早急な対策が必要と訴えた。
 林泉彦日本小児科医会業務執行理事は、日本における個別健診の回数が、諸外国に比べて少ないことを指摘。関連する医会の協力を得ながら、都道府県・市区町村等の自治体に働き掛けるとともに、「日本医師会にも要望書を提出するので、国への働き掛けをお願いしたい」と要望した。
 長谷川利雄日本臨床整形外科学会理事長は、3年以上続いている医薬品の供給不安に言及。日本医師会として、更なる国への働き掛けを要望するとともに、昨今、供給の不安定化が顕著となるばかりでなく、代替薬も存在しない局所麻酔薬についても取り上げ、危機感の共有を訴えた。
 三木和平日本精神神経科診療所協会長は、令和2年の精神疾患患者数が600万人を超えたことに触れた上で、日本医師会に対して外来精神科診療向上のための協力と、診療報酬引き上げへの支援を要望。その他、精神疾患にも対応した地域包括ケアにおける、精神科かかりつけ医と一般かかりつけ医との連携、自殺対策におけるうつ病対応力研修とこころの連携指導料(Ⅰ)取得のための研修会への支援も併せて求めた。
 菅原正弘日本臨床内科医会長は、①診療報酬改定②医療DX③HPVワクチンの接種勧奨―に関する要望内容を説明。①では、生活習慣病が特定疾患から除外され、生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設されたものの、実地内科医にとっては減収になっていることを指摘。②ではHPKIカードの迅速な発行等を求めた他、③では日臨内としても定期接種率向上のため、保護者らへの働き掛けを継続していく考えを示した。
 清原久和日本臨床泌尿器科医会長は、①急増する独居高齢者への対応に関する法整備②膀胱留置カテーテルの償還価格③2050年を見据えた医師数問題―について要望内容を説明。特に②について、今後の施術数増加が見込まれる中、外来診療における留置・交換は納入価格の逆ザヤとなっており、小規模施設では実施が困難になっているとして、その解消を求めた。
 矢口均日本臨床皮膚科医会副会長は、①電子カルテの義務化②医薬品不足③OTC類似薬の保険適用除外―に係る要望について説明。②では、日臨皮内の委員会で実施したアンケート結果を基に厚生労働省に申し入れを行う意向を示した。
 山田惠日本放射線科専門医会・医会理事長は、放射線科医による読影について、慢性的な医師不足のために十分医療ニーズに応えられていない現状を憂慮。その解消のためには専門医制度の強化や、CT・MRI機器の集約化が必要になると訴えた。
 武田純三日本麻酔科医会連合代表理事は、麻酔科医不足から不適切な麻酔行為が行われている事例が見られることを紹介。「医療機関の集約化を通じて手術も集約化することで、専門医による質の高い麻酔行為を保証すべきである」と主張した。
 野下純世日本眼科医会常任理事は、ステロイド点眼は眼圧上昇を招く重大なリスクがあることへの注意喚起を『日医雑誌』などに掲載することを求めた他、眼科医全体に占める女性の割合が約40%となっている現状を踏まえ、産休・育休体制の整備が必要との認識を示した。
 次回は5月14日に開催される予定となっている。

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