勤務医のひろば
日本医師会勤務医委員会で勉強させてもらっている。医師会の組織率低下で過半数を割ることは、医師としての意見を政策につなげる手立てが無くなり、避けなければならないという危機感は強く感じており、卒後5年目までの会費減免、会員情報管理のオンライン化など松本吉郎会長の進められる対策の成果を期待しつつも、引き続き勤務医の特性について考えている。
自身を振り返ると、医師会を意識したのは、正直言って病院の経営管理に関わるようになってからである。それまでは疾患治療のことに専念していたと言えば聞こえは良いが、経営は病院の上層部が考えることで、むしろ自分は経営のことを気にせずにより良い医療を目指すことこそが正義と考えていた。診療報酬は「自分の努力を国に認めてもらえるか否か」の課題であり、自病院の経営に関する課題ではなかった。「カネの問題じゃないんだ、優れた医療か否かなんだ」という美しく青き気持ちであったかと思う。
開業の覚悟を持った先生方から見ると勤務医の経営に対する切迫感は少なく、お気楽に見えるかも知れない。しかし、急速に進行する人口減少、働き手減少と物価高騰という止めようのない情勢の中で、医療提供体制全体の維持が危ぶまれている。これからいくつの病院、診療所が潰れるのだろうか。人口減少、社会構造の変化は急激であり、開業医と個々の勤務医が医療提供体制のあり方を議論するのに、こんな絶好なタイミングは無い。先行きのゴールを見極め、対策について詰めよう。
勤務医の育成機関である病院の人事考課の中に、経営観点の評価も必要なのかとも考えるが、それはまた別の機会に。