勤務医のひろば
私が勤務する東京女子医科大学は125年前、女性が性別故に医学教育を受ける機会を奪われないよう、日本で27番目の女性医師となった吉岡彌生によって創立された大学である。
女子医大の建学の精神は「医学の蘊奥(うんおう)を究め兼ねて人格を陶冶(とうや)し社会に貢献する女性医人を育成する。」である。この建学の精神はただ唱えていれば良いものではなく、実現するためにはさまざまな取り組みが必要であり、また実施もされてきた。
女性は医師であっても家事や育児に多くの労力を掛けることを期待されているため、院内保育所やファミリーサポート室、短時間勤務制度など勤務継続が可能となるようなセーフティーネットの整備は必須である。
また、家庭や社会的な要請により家事や育児に費やす時間が多くなり、研究時間が限られる場合は、効率よく研究を進めるための支援員の配置や研究費の助成が有効である。
更に、同等の業績や能力がある場合に女性を優先して上位職に登用するポジティブアクションなどは、現在の医学部女性教授の割合を考慮すれば不可欠である。
女性医師がジェンダーにとらわれず活躍するために整備すべきことはたくさんあり、女子医大では「女性医療人キャリア形成センター」を中心に次々と対応してきた。そして、それらの取り組みは全国の医育機関でも展開されている。
しかし、いざ自分の医局や研究室を考えた時、男性医師ではなく、女性医師を積極的に育成し、上位職に登用していこうとしている方はどのくらいいらっしゃるだろうか。さまざまな不安要素から無意識のうちにためらっているように見える。
女性医師の比率は既に2割を超えている。覚悟を決めて女性医師を育てていかなければならない。