松本吉郎会長は、城守国斗常任理事と共に10月10日に財務省で加藤勝信財務大臣と、11日には厚生労働省で福岡資麿厚労大臣と相次いで会談した。
10日
加藤財務大臣との会談の冒頭、松本会長は医療機関の経営状況について、コロナ禍以降、患者数が戻っていないことに加え、さまざまなコロナ補助金が廃止されたことにより、令和6年6月時点の医業利益率・経常利益率は共に前年度比で大きく悪化していることを説明。
また、(1)令和6年春闘の結果、全産業での賃上げ合計額は5・1%の上昇であったのに対し、令和6年度診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料による上昇は2・5%にとどまっている、(2)令和6年度診療報酬改定により入院時食事療養費が約30年ぶりに引き上げられたが、本年6月以降の消費者物価指数の上昇から見ると十分とは言えない、(3)電気・ガス料金の他、円安の影響等もあり、医療材料費も上昇が続いている中で、公定価格により運営する医療機関・介護事業所等は価格に転嫁できない―こと等を指摘。地域を面として支えている医療機関・介護事業所等を支援するためにも、補正予算における対応を求めた。
会談に同席した城守常任理事も、コロナ禍以降、さまざまな要因により医療機関経営は年々悪化しており、このままでは地域医療体制の維持が困難になりかねないと窮状を訴えた。
これに対し加藤財務大臣は一定の理解を示し、支援の必要性は認識しているとした上で、現在の状況の原因と思われる医療界に特有の事情について、更に詳細な分析が必要とした他、実態にそぐわない制度的な部分は運用でカバーすることも一つの方法ではないかと指摘した。
また、加藤財務大臣が「地方創生臨時交付金」といった形での支援は必要ではあるものの、それだけでは本当に必要なところに行き渡らず、広く薄い支援となってしまうとの危惧(きぐ)を示したことに対して、松本会長も同調。現状について深い分析を行うとともに、これからの医療提供のあり方等についてもビジョンを描きながら、日本医師会として新政権とも協力し、引き続き地域医療を守っていく意向を伝えた。
11日
福岡厚労大臣との会談で、松本会長と城守常任理事は、直近の医療機関の経営状況について、(1)コロナ禍以降、患者数が戻っていない、(2)さまざまな新型コロナ補助金が廃止された、(3)昨年以上に人件費が急激に増加している、(4)食材料費が更に高騰している―ことなどから、医業利益率・経常利益率共に悪化しており、地域医療が崩壊しかねないと説明した。
その上で、物価高騰・賃上げへの対応として、①急激な状況変化により経営が悪化した病院において、患者数減少などの変化に応じるための経営改善への支援②地域医療にとって不可欠である産科・小児科や、在宅医療に取り組む医療機関も含めた、地域医療を支えている医療機関への支援③経済対策において、全ての医療機関で少なくとも2%以上の賃上げを実現できるための支援④今後も物価の上昇傾向が継続することが見込まれることから、経済対策における病院への食費支援⑤建築資材の高騰に対する病院への増改築支援⑥公定価格により運営する医療機関・介護事業所等においては価格転嫁することができないため、エネルギー費用に関する引き続きの支援―をそれぞれ要望した。
これらの要望に対して、福岡厚労大臣は、「要望を頂いた点については、地域医療の堅持はもちろん、石破茂内閣総理大臣が推進する『地方創生』においても非常に重要であるため、要望に沿った対応ができるよう省内で検討していきたい」と述べるなど、理解を示した。