国民医療を守る議員の会(自民党議員連盟)総会が都内で開催され、日本医師会からは松本吉郎会長始め常勤役員の他、都道府県医師会の役員らが出席した。
当日は、衆参の国会議員278名(議員本人150名、代理128名)が出席し、令和6年度診療報酬改定について議論が行われた。
総会では、まず、同会の加藤勝信会長(衆議院議員)からあいさつが行われ、「今、賃上げをしようと岸田文雄総理が自ら旗を振っており、そのためには原資が必要になる」と述べるとともに、「医療では、診療報酬改定(引き上げ)がなければそれはかなわない」と指摘。
更に、物価高騰の影響や医療界から人材が流出していること等に触れた上で、「物価高騰、賃金の上昇への対応はもとより、人材確保、そして安定的な医療サービスの提供、これらができる診療報酬改定を実現していきたい」と決意を述べた。
また、議連の役員人事案が了承された。
診療報酬のプラス改定に向けた協力を要請―松本会長
続いてあいさつした松本会長は、「物価高騰、賃金上昇の中で、安全かつ質の高い医療を安定的・長期的に提供するためには、医療・介護従事者への賃上げを行い、人材を確保することが不可欠である。それには診療報酬の思い切ったプラス改定しかない」と述べ、医療機関における賃上げの原資は診療報酬しかないことを強調した。
更に、「どこかを削って、それを財源に回す」という発想を転換する必要性を指摘するとともに、「医療従事者全職種の賃上げを果たすことが重要」と説明。それが経済の好循環や地方創生にもつながるとの考えを示した。
その上で、具体的に、(1)令和6年春闘の先鞭(せんべん)となる賃上げの実現、(2)賃上げ・物価高騰に対応した改定率の確保、(3)賃上げ・物価高騰の財源は歳出の目安とは別枠、(4)診療所の経営状況―について日本医師会の考え方を説明。診療報酬の大幅なプラス改定に向け、強力な支援を要請した。
また、伊原和人厚生労働省保険局長から、令和6年度診療報酬改定の基本方針などが説明された。
その後、議員の会として取りまとめる予定の決議文について議論が行われ、プラス改定に向けて、30人以上の議員から熱い意見が寄せられた。
決議文案では、まず、「エネルギーコストを始めとした物価の高騰、総理が主導する高水準の賃上げの実現といった状況を踏まえ、全就業者の約14%を占める医療・介護等の就業者(約900万人)の生活を守り、国民に必要な医療・介護サービスを確保するためには、30年ぶりの賃金上昇・物価高騰に負けない報酬改定等を実現することが必要である」と指摘。
その上で、国に対して、(1)令和6年度の診療報酬改定においては、過去の経営実態について新型コロナの特例等が加味されていたことを踏まえ、①過去30年余経験したことのない賃金上昇・物価高騰への対応や人材確保を図るため、大幅な引き上げを行う②インフレ経済への移行に伴い、令和6年度以降、医療や介護等の国費の伸びについては、高齢化の伸びとは別に、物価高騰・賃金上昇等への対応が可能となるようにする、(2)デジタル社会における質の高い持続可能な医療の実現に必要不可欠であるマイナ保険証について、安心して利用できる環境整備を進めるなど、医療DXの推進を図る―ことを求めている。
意見交換の中では、医療従事者の賃上げに対応できる診療報酬改定の必要性を強調する意見が続出し、加筆・修正に関しては加藤会長に一任することで了承された。
なお、同決議は12月8日に加藤会長から、岸田総理に提出された。