

今村英仁常任理事は1月7日の定例記者会見において、抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化に反対の意を表明。日本医師会として、医師の診断と治療の下で国民の健康と安全を守り、国民皆保険制度を堅持する姿勢で、今後も対応していくと主張した。
まず今村常任理事は、抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化について、同日までパブリックコメントが募集されていることに触れるとともに、国民の健康に対する大きなリスクが生じ得るとして、強い危惧を表明。日本臨床内科医会や日本小児科医会を含め、関係医会・学会からも反対の意見が出ている他、多くの地域医師会や日本医師会の会員の先生方からも断固反対との声が届いていることを説明した。
また、インフルエンザは、発熱や咳などの軽症例にとどまらず、肺炎や脳症などの重篤な合併症を引き起こし得る感染症であることに言及。診断と治療開始の判断に関しては、発症時期や症状の経過、基礎疾患の有無、年齢などを総合的に評価した上で行われる必要があると指摘するとともに、「抗インフルエンザ薬は、こうした医学的判断を前提として、医師の管理下で適正に使用されるべき医薬品である」と強調した。
一方、スイッチOTC化により、医師の診断を伴わない自己判断での使用が広がると、「インフルエンザ以外の疾患に対する誤用」「投与開始時期を誤ることによる効果低下」「受診遅れによる重症化リスクの増大」が懸念されると指摘。迅速検査キットの感度や正確性には限界があり、結果が陰性でも感染しているケースも少なくないとして、「医師による臨床判断を省略することは、医療安全上、大きな問題である」と警鐘を鳴らした。
特に、抗インフルエンザ薬の不適切使用は、耐性ウイルス出現のリスクを高める他、こうした耐性株の拡大は、個人の問題にとどまらず、社会全体の感染症対策を脅かす公衆衛生上の課題であると述べ、「長期的に見ると治療手段そのものを失う危険性を孕んでいるため、医師の診断と管理の下で使用されるべきである」と訴えた。
更に、高齢者や小児、妊婦、基礎疾患を有する方など、重症化リスクの高い人々に対しては、抗ウイルス薬の使用可否や投与方法を慎重に判断する必要があると強調。スイッチOTC化は、こうしたリスク評価を個人の自己判断に委ねることになり、結果として重症例の増加や、救急医療などの医療資源の逼迫を招きかねないことに危機感をあらわにした。
公衆衛生および地域医療体制の観点からも、抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化は慎重であるべきと指摘。流行期における受診動向やインフルエンザを含む急性呼吸器感染症の感染状況の把握は、医療機関を通じて行われてきたことを説明した上で、「スイッチOTC化により医療機関を介さない中途半端な治療が広がれば、流行状況の把握や適切な対策立案が困難となり、わが国全体の感染症対応力を低下させる恐れがある」と釘を刺した。
加えて、2010年から継続している医薬品供給問題にも大きな影響があることに言及。一昨年の年末年始にインフルエンザが流行した際、抗インフルエンザ薬が医療現場に届かなかったことに触れるとともに、「医療用の製造ラインの一部をスイッチOTC製造ラインに変更することになれば、医療用抗インフルエンザ薬が必要な時に医療現場に届かないことが懸念される」との認識を示した。
最後に今村常任理事は、やみくもなセルフメディケーションの推進、更には社会保険料の削減を目的とするOTC類似薬の取り扱いやスイッチOTC化を進めると、必要な時に適切な医療を受けられない国民が増えることが危惧されると強調するとともに、「日本医師会としては、医師の診断と治療の下で国民の健康と安全を守り、国民皆保険制度を堅持する姿勢で、今後も対応していく」と主張した。
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