日本医師会定例記者会見 9月20・29日
猪口雄二副会長、太田圭洋日本医療法人協会副会長、野木渡日本精神科病院協会副会長は、財政制度等審議会財政制度分科会の議論を受けて、現状の病院の経営状況について説明した。
猪口副会長はまず、財政審の資料において、「コロナ禍前の19年度に0・6%の赤字だった病院の経常利益率は20年度3・7%、21年度には7・5%の黒字へと急回復している」との記載があり、一部全国紙でも同様の報道がなされていることに言及。
その根拠となるデータが記載された病院団体が作成した資料(「2022年度病院経営定期調査結果」)では、当該経常利益の中にコロナ補助金も含まれており、コロナ補助金を除いた経常利益で見ると、20年度はマイナス4・0%、21年度はマイナス2・0%となることを説明し、「病院の経営が悪化していることを裏付けている」と強調した。
また、20、21年度は医業利益も悪化しているとともに、20年度の医業利益が赤字の病院は8割近かったことを指摘し、「コロナ補助金が無い場合、病院はとても苦しい状況にある」と述べた他、同補助金は全ての病院がもらっているわけではなく、重点医療機関等に集中しており、中小病院等は厳しい状況にあることや、重点医療機関等でも感染対策や人員確保に今後も費用が掛かり続けることなどを説明した。
猪口副会長は、直近の経営状況についても解説し、水道光熱費、電気料金等の値上がりにより、コロナ補助金減額以降は補助金込みでも経常利益が大幅な赤字となっている病院が増えているとした。
太田医法協副会長は、「足元の病院の経営状況を知ってもらいたい」と訴えた上で、診療報酬に関して一部報道で散見される「医師の技術料」と表現されることについて、医療費全体を示すものであり、医師の給与だけを指しているわけではないと指摘。病院においては支出の半分以上を占める人件費や、物品購入費、委託料も全て診療報酬で賄う形になっているとするとともに、「当然、物価が上昇している局面や職員の処遇改善の局面においては、診療報酬を上げてもらわなければ対応できない」と述べた。
また、コロナ補助金が本年5月以降大幅に減額されたことや、10月以降は病床確保等の補助金がほとんど無くなることに触れ、猪口副会長と同様に、足元の医療機関経営は大変な状況になっているとの認識を示した他、政府の求める賃上げに対して、ベースアップが実施できた医療機関は2割程度であることなどを説明した。
野木日精協副会長は、精神科病院では、コロナに罹患(りかん)した患者がいたとしてもほとんど転院先がなく、自院で対応するしかなかった事情を説明。
その上で、精神科に関するコロナ禍におけるデータを紹介し、これまではおおむね経常利益率が4%程度であったところ、コロナ補助金を除いた場合1%程度下がるとした。
この点について、野木副会長は、精神科病院は元々の単価が低く、一般の病院とは事情が異なることを強調し、100床当たりの平均の年間の収益も低い金額となっていることを訴え、非常に厳しい現状にあるとの認識を示した。
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