渡辺弘司常任理事はこのほど、こども家庭庁の要請に基づき「いじめ調査アドバイザー」(以下、アドバイザー)に就任することになり、9月5日に同庁で行われた任命式に臨むとともに、小倉將信こども政策担当大臣(当時)らと意見交換を行い、日本医師会常任理事としてはもちろん、医師としてもその知見を生かしつつアドバイザー業務に携わっていく意向を表明した。
会の冒頭、小倉大臣は新設したアドバイザーに期待する役割について、「いじめの重大事態調査委員会を立ち上げる地方自治体等に対し、それぞれの専門性や経験、職能団体とのつながりを生かし、助言等をお願いしたい」と説明した。
また、いじめの認知件数が過去最多、重大事態件数も過去最高水準となっている現状を憂慮するとともに、いじめの重大事態調査については、調査委員の第三者性確保の課題等により、調査着手に遅れが生じていることを問題視。調査委員の人選や調査方法に関する助言により、地方自治体等が重大事態調査着手の早期化や個々の事案に合わせた適切な対策が立てられるよう、アドバイザーの活躍に期待感を示した。
更に、こども家庭庁が文部科学省と共に共同議長となっているいじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議について言及。いじめ対策強化の検討を進めている他、学校外からのアプローチによるいじめ解消の仕組みづくりなどの取り組みを進めていることを報告した。
アドバイザーとしての抱負を求められた渡辺常任理事は、いじめ調査報告書の取りまとめには、①調査手法②委員の選定―が重要であり、いずれが不適切でも信頼性のおける報告書ができないとした上で、医療事故調査と重大事態調査の近似性を指摘。医療事故調査制度を援用し、重大事態調査のシステム構築に役立てることを提案した。
また、医療事故調査制度において「医療事故調査等支援団体」が設けられていることにも触れ、「今回新設されたアドバイザーは支援団体に相当するものと考えている」とした上で、いじめの重大事態には地域性があるとの認識を示し、「日本医師会としては、都道府県医師会と連携し、的確なアドバイスができるよう努めていきたい」と抱負を述べた。
最後に、小倉大臣は各アドバイザーからの抱負表明を受けた上で、「いじめの問題は被害児童のみならず、その家族、クラスメイトや教職員にとっても重い心の負担になる重大な問題であり、子どもの最善の利益や権利を守るための政策を行うことが最優先である」と強調。各アドバイザーがそれぞれの活動を行うに当たり、その知見や経験を生かしながら共にいじめ問題に取り組み、情報交換等を行えるよう、こども家庭庁としても最大限の支援をしていく意向を示した。