政府は6月16日、年末の予算編成に向けた基本姿勢などを示した「経済財政運営と改革の基本方針2023」(以下、「骨太の方針2023」)を閣議決定した。
第4章「中長期の経済財政運営」の中では、「持続可能な社会保障制度の構築」に関して、医療の機能分化と連携の更なる推進、医療・介護人材の確保・育成、働き方改革、医療・介護ニーズの変化やデジタル技術の著しい進展に対応した改革を早期に進める必要があると指摘。具体的な施策として、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性を伴う着実な推進」「マイナンバーカードによるオンライン資格確認の用途拡大や正確なデータ登録の取り組みを進め、2024年秋に健康保険証を廃止する」「医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる『全国医療情報プラットフォーム』の創設及び電子カルテ情報の標準化等を進める」「イノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置」「ドラッグラグ・ドラッグロス問題への対応」「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める」―などを挙げている。
また、次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定に関しては、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスを受けられるよう、必要な対応を行う」と明記。改定に当たっては、「令和6年度予算編成に向けた考え方」(社会保障費の実質的な伸びを高齢化の伸びに収めるとともに、経済・物価動向等も踏まえて検討するという考え方)を踏まえつつ、検討するとの考えを示している。
日本医師会では「骨太の方針2023」の閣議決定を前に、国民の生命と健康を守るため、全就業者の約12%(約800万人)を占める医療・介護分野の就業者がしっかりと役割を果たせるよう、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取り組みを進める必要があるとの考えの下、日本歯科医師会、日本薬剤師会、四病院団体協議会、全国医学部長病院長会議の他、介護関連団体などと声明や要望書を取りまとめるなど、積極的な活動を展開。5月31日には、国民医療推進協議会総会を開催し、トリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を「骨太の方針2023」に明記するとともに、必要な財源の確保を求める決議を採択。これらを基に政府与党に対して、理解を求める働き掛けを行ってきた。
その結果、6月7日に示された「骨太の方針2023」(原案)にあった「患者・利用者負担・保険料負担の抑制の必要性を踏まえ」という表現は「......負担への影響を踏まえ」に見直され、新たに「患者・利用者が必要なサービスを受けられるよう」という文言が追加された。
日本医師会では、引き続き、改定率が決定される年末に向けて、政府に対し、必要な財源の確保を強く求めていくことにしている。
※なお、「骨太の方針2023」等の閣議決定を受けた松本吉郎会長の記者会見(6月21日開催)の模様は、次号に掲載する予定としています。