長島公之常任理事は4月20日、衆議院「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」に参考人として招かれ、審議中の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下、法案)について、日本医師会の考えを説明した。
冒頭、同常任理事は、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を活用したオンライン資格確認システムについて、「今後の医療DXの基盤となる仕組みであり、日本医師会としてぜひとも推進すべきと考えている」と強調。その理由として、「医療を取り巻く状況」が大きく変化していることを挙げ、その内容を、(1)医療提供体制の変化、(2)患者像の変化、(3)医療情報の変化、(4)医療者の業務の種類・量の増加―ごとに説明した。
(1)では、医療機関の専門化・分化が大きく進んでいることを指摘。また、(2)では、かつては急性期やけがが診療の中心で、一つの医療機関だけで医療提供を完結できていたが、現在は複数かつ慢性的な疾患を抱えている患者が増えてきているため、地域の医療機関同士の連携並びに医療と介護の多職種連携の必要性が増大していることを挙げた。
(3)では、医学の進歩に伴って情報の種類や量が増大しているため、これまでのような紙の紹介状でのやり取りだけでは不十分なケースが増えてきていることを説明するとともに、(4)では、さまざまな業務の増大に伴い、医療従事者の負担が急増していることを指摘した。
加えて、人生100年時代を迎え、国民一人一人が自らの健康状態を正しく把握した上で生活習慣の改善に努めるとともに、適切かつ必要な医療を受けることが重要との認識に立ち、日本医師会として、2016年に「日医IT化宣言2016」を公表したことを紹介。「国が進める『全国医療情報プラットフォーム』は、同宣言で構築を目指すとした医療専用ネットワークそのものである」として、引き続き全面的に協力していく考えを示した。
また、医療DXは目的ではなく手段であることを改めて訴えるとともに、医療DXで達成すべき目的はあくまでも、「国民・患者への安全・安心でより質の高い医療の提供」「医療現場の負担軽減」であることを強調した。
同常任理事は、「医療は国民の健康と生命に関わるものであり、誰一人取り残されることがあってはならない」と述べるとともに、「医療機関や介護施設も取り残されることがあってはならない」として、国に対し、丁寧できめ細かい、持続的な支援を要請した。
更に、法案で提起された「マイナンバーカードと健康保険証の一体化」について、その最大のメリットは、患者の薬剤服用履歴を正確かつ網羅(もうら)的に把握できることで、問診よりも正確な情報に基づく適切な医療を受けられる(提供できる)ことにあるとして、その重要性を指摘した。
その後は、当日招かれたその他の参考人からの意見陳述とともに、議員との質疑応答が行われた。
その中では、マイナンバーカード取得に困難が伴う人への対応や、医療機関・介護施設等が患者のマイナンバーカードを預かることがあり得るとの懸念が示されたことに対して、同常任理事は関係者間の協力が不可欠との認識を示した上で、国がリーダーシップを取り、必要な援助を行うことが重要と指摘。マイナ保険証の導入・推進に当たっては、「スピード感も重要だが、拙速であってはならない」とし、国民と医療現場に対しては"心に届く"丁寧な説明を求めた。
その他、パーソナルヘルスレコード(PHR)について、既にマイナポータルで薬剤情報や特定健診情報等が閲覧可能であり、民間事業者が提供するPHRを利用する際にも、それらの情報がAPI連携により取得可能となるとの見通しを示した上で、今後は医療DXを推進するとともに、情報の医学的な正確性についてはかかりつけ医に相談するなど、国民が主役となって健康増進・健康寿命延伸に取り組んでいくことが重要になると主張した。