令和5年(2023年)4月5日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
新型コロナウイルス感染症の現況等について
松本吉郎会長、釜萢敏常任理事、長島公之常任理事
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日本医師会定例記者会見 3月15日
松本吉郎会長は、(1)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等、(2)新型コロナ対策としてのマスクの着用―について、日本医師会の見解を説明した。
冒頭、松本会長は、今年で東日本大震災の発災から12年目、関東大震災から100年目となる節目の年を迎えることなどに触れ、これまでに得られた多くの教訓を踏まえ、日本医師会として、改めてわが国の災害医療の充実・強化に努めていく姿勢を表明した。
その上で、(1)では、まず、5月8日からの5類への類型変更に関する日本医師会のこれまでの取り組みとして、加藤勝信厚生労働大臣に財政支援を求める要望書を提出した他、都道府県医師会並びに郡市区医師会に対して、特に発熱外来診療体制の維持・充実に重点を置いた協力要請を行ってきたことを説明。3月10日に政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で決定された「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について」に関しては、①内容の一部や点数・金額は見直されたものの、診療報酬の特例並びに病床確保料は継続されている②クラスターが発生した高齢者施設などへの医療支援も存続する見込みである③入院調整及び「地域包括ケア病棟」等での高齢者等の受け入れを診療報酬に位置付けるなど、新たな取り組みが示されている―ことなどを説明し、これを評価する考えを示した。
今後、政府の方針決定を受けて、各都道府県において移行計画が策定されることに関しては、9月までの計画を4月までに策定するというタイトなスケジュールとなっていることに懸念を示す一方、時間が限られる中でも、行政には特に高齢者施設でのクラスター対応、感染拡大時やリスクの高い患者の入院調整等に十分配慮し、都道府県医師会、病院団体等の関係者との協議、連携を図って欲しいとした。
また、松本会長は今後の支援について、「各地の現場の懸命な努力で築いてきたコロナの医療提供体制や、実際にコロナ対応を担ってきた医療機関の対応力を損なうことがないように支援するとともに、これから新たに対応を拡充する医療機関に対しても、しっかりと感染防止対策等が講じられるよう支えていくことが重要」ということが日本医師会の基本的な考えであると説明。その実現のためにも、国からの支援が必要であることを改めて強調した。
(2)では、政府の方針により令和5年3月13日から「マスク着用は個人の判断が基本」とする運用が開始されたものの、医療機関を受診する際や医療機関・高齢者施設などを訪問する際、通勤ラッシュ時といった混雑した電車やバスに乗る際などには、マスクの着用が推奨されていることなどを説明。
日本医師会としても、コロナの感染再拡大を防ぐため、医療機関や介護施設等において引き続きのマスク着用をお願いするポスター(別掲)を作成し、日本医師会ホームページにそのデータを掲載するとともに、医療機関などで活用頂くよう周知したことを紹介。「国民の皆さんには医療機関や介護施設等にお越しになる際のマスクの着用に対する理解と協力をお願いしたい」と述べた。
マスクを外すか否かは自然の成り行きで―釜萢常任理事
会見に同席した釜萢敏常任理事は、厚労省の感染症部会で示された「第2回献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査(結果速報、都道府県別)」の結果に言及。抗体の保有率は都道府県で差があり、今後の保有率の推移に注意する必要があるとした。
また、記者からの今後のマスク着用についての質問に対して、「マスクの着用が感染症の拡大防止に非常に有効であることは、色々なエビデンスで明らかになっている」と述べた上で、マスク着用が効果的な場面も理解されており、また、マスクを外せる場面が増えてくるのは間違いないものの、「本人が不安を感じずにマスクを外せるようになるまで、自然の成り行きに任せるのが良いのではないか」との見解を示した。
特例継続期間は慎重に判断すべき―長島常任理事
医療保険に係る対応については、長島公之常任理事が説明を行った。
長島常任理事は、「新型コロナウイルス感染症の類型が変更された後も、医療現場では医療の質と患者の安全を担保するため、患者の受入体制を始め、最大限の努力を継続することになり、これまでの医療提供体制に対する支援を一定程度継続することは必須」と指摘。
今後については、①幅広い医療機関が新型コロナに対応できる医療提供体制を構築する②入院患者の高齢化に対応した方策を講じる―ことの2点が重要であることからすれば「そのための評価も欠かせない」とした。
更に、①については、「日本医師会としても地域医師会や関係団体とも連携を取りつつ、その体制構築に向けて全力を尽くす所存だ」と強調。「実際には既に多くの医療機関で、普段は自院に通院していない患者にも十分対応しているが、今後は地域を面として、より多くの医療機関に、普段は自院に通院していない患者も含め、幅広くご対応頂くよう重ねて協力をお願いしていく」と述べた他、これまで保健所が担ってきた確定患者のフォローアップや入院調整等の業務を、今後は医療機関が担うことになるための評価も必要とした。
また、②については、入退院支援体制が整った病院で、適切な治療・リハビリ・ケアを提供し、地域の介護保険施設等と連携することが、患者のためにも、また、急性期医療機関の機能を維持するためにも不可欠になるとした。
その上で、長島常任理事は、今回行われる診療報酬上の特例の見直しについて触れ、内容の一部や点数は見直されたものの、診療報酬上の特例は継続され、更に入院調整、「地域包括ケア病棟」等での高齢者等の受け入れが診療報酬に位置付けられるなど、新たな取り組みも示されているとして、評価する考えを示した。
また、特例を継続する期間については、「急激な見直しによって、これまで新型コロナに尽力してきた医療機関の対応力が損なわれるようなことがあってはならない」と強調し、今後の感染状況や地域医療の現状を見定めつつ、慎重に判断することを求めた。
問い合わせ先
日本医師会地域医療課、医療保険課、健康医療第二課 TEL:03-3946-2121(代)