第11回「日本医師会 赤ひげ大賞」(主催:日本医師会、産経新聞社、協力:都道府県医師会、特別協賛:太陽生命保険)の受賞者として、「赤ひげ大賞」5名、「赤ひげ功労賞」15名がこのほど決定し、黒瀬巌常任理事が1月11日に行われた定例記者会見で発表した。 |
---|
「日本医師会 赤ひげ大賞」(以下、「赤ひげ大賞」)は、地域の医療現場で健康を中心に地域住民の生活を支えている医師にスポットを当て、その活躍を顕彰することで、各地の医療環境整備、医療活動の充実に寄与することを目的として、平成24年に日本医師会と産経新聞社が創設したものである。
「赤ひげ大賞」の名称は、山本周五郎の時代小説「赤ひげ診療譚(しんりょうたん)」に由来して命名したもので、その主人公で、江戸時代中期に貧民救済施設である小石川養生所で活躍した小川笙船(しょうせん)を実際のモデルとしている。賞の創設以来、毎回、5名の医師を「赤ひげ大賞」に決定、第8回には「赤ひげ功労賞」も創設している。
11回目となる今回は、昨年11月10日に日本医師会小講堂で選考会を開催。初の試みとして、医学生(本年度は岩手医科大学に地域枠で入学した学生4名)に選考委員として参加してもらい、「将来このような医師になりたい」という視点から、選考を行ってもらった。
その結果、都道府県医師会から推薦された候補者から20名を「赤ひげ功労賞」に選定し、その中から5名を「赤ひげ大賞」に選定した(大賞受賞者の功績、功労賞受賞者の氏名は別掲参照)。
会見で受賞者を公表した選考委員でもある黒瀬常任理事は、「長年にわたり、困難な状況の下で住民の健康確保や保健・福祉の向上に親身に取り組んでこられた、素晴らしい功績の方ばかりで、選考は困難を極めた」と今回の選考を振り返った上で、「多くのマスコミの皆さんに取り上げてもらえることは受賞者の励みにもなる」と強調。また、「受賞者の功績を知ることで、一人でも多くの方々に、受賞者のようなかかりつけ医をもちたいと思ってもらえればありがたい」と述べた。
なお、表彰式・レセプションは、3月に都内のホテルで開催する予定となっており、その模様は後日、本紙で詳報する。
「赤ひげ大賞」受賞者(5名)
順列は北から・敬称略
受賞者の年齢は2023年1月11日現在
尾﨑眞理子(おざき まりこ) 医師
71歳 大阪府 尾﨑医院 理事
中小規模の製造業が集積する中核都市で、30年にわたり小児医療に取り組み続けてきた。共働き家庭が多い地域で子育て世帯を支えるべく、平成19年に自己資金で地域子育て支援拠点事業として、主に乳幼児をもつ親とその子どもを対象とした「つどいの広場」を、翌年には「病児保育室ウルル」を開設。赤字が続く中、尾﨑医院がその運営を支え続け、開設以来14年間で12,000人以上の子ども達を預かっている。今後も子育て支援に真摯(しんし)に取り組む姿勢を示している。
石島 正嗣(いしじま まさつぐ) 医師
79歳 兵庫県 青心会メンタルクリニック 医療法人社団青心会 前理事長
昭和53年の開業以来、精神科医療が手薄な地域で精神保健分野を支えてきた。認知症や独居老人が社会問題化する前から着目し、平成4年に認知症電話相談事業を創設。24年間1人で市民の相談に応じ、適切な医療の提供や行政につなぐ大きな役割を果たしてきた。更に自らケアマネジャーの資格を取得した他、社会福祉施設の嘱託医や小中学校精神科コンサルタントを長きにわたり務めた。心や精神について正しい知識をもってもらうための講演活動なども続けている。
桜井(さくらい) えつ 医師
76歳 徳島県 住友医院 副院長
40年の長きにわたり、地域のかかりつけ医として昼夜を問わず、町内外の住民の医療及び疾病予防に献身的に取り組み続けてきた。農山村地域の特性のため、山奥などへの訪問診療もこなしている。また長年、小学校の校医や幼稚園の園医として、子ども達の健康増進に努めるだけでなく、学校保健の普及向上に貢献してきた。更に通常の医療活動の傍ら、女性医師が働きやすい環境整備や性差を考慮した女性医療の推進を目指して積極的に活躍している。
藤野 孝雄(ふじの たかお) 医師
71歳 大分県 藤野循環器科内科医院 理事長・院長
平成5年に継承開業以来、少子高齢化が進む地域で、患者に寄り添う医療を続けている。夜間当番医には積極的に参加し、多職種と連携した在宅医療にも取り組んでいる。「臼杵市糖尿病ネットワーク」を発足させ、市内における腎症からの新規透析導入は減少している。また、「臼杵市の認知症を考える会」を設立し、医師会、行政、大分大学神経内科と共同で認知症の啓発・早期発見・予防活動を続けており、科学的エビデンスを有する発症予防プログラムの開発につながった。
大久保直義(おおくぼ なおよし) 医師
89歳 鹿児島 希望ヶ丘病院 理事長
昭和45年の開業以来52年の長きにわたり、医療・介護・福祉の分野で患者に寄り添い、地域医療に貢献してきた。住み慣れた地域でその人らしい暮らしができるよう老健施設やグループホーム等を開設。講演会などを通じて、地域の健康教育にも力を入れてきた。学校医として学校保健活動に尽力した他、病院には専門の小児発達外来を設け、行政とも連携を図ってきた。昭和の生活道具や昆虫標本などを展示した「重富民俗資料館」も開設し、市民の交流の場を提供している。
「赤ひげ功労賞」受賞者(15名)
順列は北から・敬称略
中野 智紀(なかの ともき)(埼玉県)
新田 國夫(にった くにお)(東京都)
佐藤眞紀子(さとう まきこ)(神奈川県)
大瀧 達郎(おおたき たつお)(福井県)
野尻 眞(のじり まこと)(岐阜県)
水本 弘(みずもと ひろし)(静岡県)
清水 信(しみず しん)(三重県)
田代 博(たしろ ひろし)(京都府)
梅川智三郎(うめかわ ともさぶろう)(奈良県)
森本 忠雄(もりもと ただお)(広島県)
八木 正人(やぎ まさと)(香川県)
古賀 正昭(こが まさあき)(福岡県)
朝長 弘道(ともなが ひろみち)(佐賀県)
寺尾 敏子(てらお としこ)(熊本県)
嘉手苅 勤(かでかる つとむ)(沖縄県)
選考委員 |
---|
羽毛田信吾(恩賜財団母子愛育会会長) 向井 千秋(東京理科大学特任副学長) 檀 ふみ(俳優) ロバート キャンベル(早稲田大学特命教授) 榎本健太郎(厚生労働省医政局長) 医学生 (岩手医科大学/令和4年度) 釜萢 敏(日本医師会常任理事) 黒瀬 巌(日本医師会常任理事) 近藤 豊和(産経新聞社上席執行役員) 河合 雅司(産経新聞社客員論説委員) (敬称略)
|