令和4年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会が昨年12月8日、日本医師会館でWEB会議で開催された。
担当の今村英仁常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、医事紛争への対応や日本医師会医師賠償責任保険(以下、日医医賠責保険)の運営に感謝の意を示した上で、新型コロナウイルス感染症対応について、季節性インフルエンザへの対応を含め、「まだまだ予断を許さない状況が続いている」と強調。社会がコロナ禍以前に戻っていく中でも、検査体制の拡充やワクチン接種の推進、罹患(りかん)後の診療体制の維持は重要であるとして、引き続きコロナ医療と通常医療の両立への協力を求めた。
また、松本会長は、「日本医師会と都道府県医師会が連携を取りながら運営している日医医賠責保険制度は、会員にとって日常診療の強力な後ろ盾としての役割を果たすばかりでなく、日本医師会の組織強化においても、特に若手勤務医に日本医師会をより知ってもらうための大きなメリットの一つとなっている」として、制度が果たす役割の重要性を強調。引き続きの支援と協力を求めた。
続いて、(1)日医医賠責保険の運営に関する経過報告、(2)産科医療補償制度と医事紛争―についての説明が行われた。
(1)では、日本医師会事務局が、主に令和3年度の新規付託の状況について説明。令和3年度の審査会件数は230件となり、令和2年度の241件より減少したことや、有責率が同76・6%から72・5%へと微減したことなどを報告した。
また、令和3年度は236件の事案が解決に至り、例年とほぼ同様の件数であった他、解決金額は高額化の傾向にあるとした。
産科医療補償制度と日医医賠責保険からの二重給付は不可
(2)では、今村常任理事が、主に①産科医療補償制度と医事紛争の関係②産科医療補償制度概要及び2022年1月改定内容、産科医療補償制度・医事紛争関係データ―等について説明を行った。
①では、損害賠償金額が確定した場合、産科医療補償制度の補償金と日医医賠責保険制度からの損害賠償金の二重給付はできないことに注意が必要とした。
②では、産科医療補償制度の創設経緯や創設から現在までの流れ、制度の仕組みについて概説。その上で、2022年1月に行われた改定の背景やその内容について解説を行い、これまでさまざまな条件があった補償対象基準について、「在胎週数が28週以上であること」のみとされたことを紹介。併せて、対象者が2022年以降に生まれた方に限られていることに留意が必要とした。
その他、事務局から「医事紛争における補償金と損害賠償金の調整規定」についても説明を行った。
今村常任理事はまとめとして、本日の説明が産婦人科事案の医事紛争解決に資することに期待感を示すとともに、都道府県医師会に対し、会員を支援する制度として、これまで以上の連携を依頼した。
引き続き、茨城、岐阜、愛知、広島の各県から事前に寄せられた質問・要望事項及び当日出された質問に対し、今村常任理事及び事務局が回答を行った。
質疑では、個人情報等の機密事項を扱う医事紛争に関する委員会などに関して、WEB会議で開催する際の注意事項や運営の仕方について活発な意見交換がなされた他、応招義務や死亡診断書・死体検案書作成業務が関連する医事紛争についても意見・要望が出された。
最後に、猪口雄二副会長が総括を行い、日医医賠責保険制度は、会員が安心して医療活動に専念し、万が一に備えるためにも重要なものであるとした上で、「他に類を見ないこの制度を、とりわけ若手医師の方に幅広く知って頂き、日本医師会の組織強化につなげていきたい」と述べた。