松本吉郎会長は8月19日、茂松茂人、角田徹、猪口雄二各副会長と共に厚生労働省を訪れ、加藤勝信厚労大臣に大臣就任への祝意を伝えるとともに、「今般の感染拡大を踏まえた今後の対応に関する要望書」を手交した。
要望書は、感染者数の爆発的な増加によって医療機関・保健所等の業務負担の増加が続き、各地域において医療提供体制、特にコロナ医療及びコロナ以外の医療の両方を担う救急現場が極めて逼迫(ひっぱく)している状況にあることを踏まえて取りまとめられたもので、今後の対応として以下の6項目の実施を求めている。
1.現行の発熱外来の仕組みは維持しつつ、発熱外来対応が可能な医療機関数の拡充のための支援。
2.抗原定性検査キットについては、医療機関へ優先的に供給すること。
3.抗原定性検査キットによる自己検査の陽性結果を、発熱外来の受診を経ずに自治体の健康フォローアップセンターに登録する仕組みの全国的普及と、地域の実情に応じた均てん化。なお、健康フォローアップセンターについては、確実に電話が繋(つな)がること、医療が必要な対象者のトリアージを優先すること。
4.HER―SYSについて、医療機関の負担軽減に大きく寄与した入力項目削減に続く、高齢者や基礎疾患を有する重症化リスクの高い方の把握、更には公衆衛生上の評価分析に資する内容を保持しながらの更なる作業効率化。なお、感染者全数把握の見直しを検討するにあたっては、全数把握の利点の継承を図ること。
5.3・4回目ワクチン接種推進に対する支援、および、オミクロン株対応ワクチンの安定的な供給、更に国民への周知と接種の円滑な実施。
6.新型コロナウイルス感染症に係る現行の支援の継続。
当日は、松本会長が医師や看護師がコロナに感染してしまうことで、人員不足になっている医療機関も増えてきていることを説明した上で、要望書の内容を概説した。
要望書を受け取った加藤厚労大臣はまず、発熱外来など、お盆期間中のコロナ患者への対応に感謝の意を表明。今回の要望については一定の理解を示した上で、抗原定性検査キットについては、医療機関を優先しながら必要な人に届けられるようにしていきたいとした他、健康フォローアップセンターに関してはその整備を進めていくとした。
全数把握の見直しに関しては、医師らの負担を少なくすることと感染状況を把握するという二つのバランスをいかにとっていくかが課題だとするとともに、見直しを行う際には、感染が急激に広がっている際の緊急避難的対応と感染のピークが過ぎた場合の対応とに分けて考える必要があるとの考えを示した。
ワクチン接種に関しては、「オミクロン株対応のワクチン接種が開始された場合には医師会の皆さんの協力が必要になる」として、協力を求めた他、医療機関の支援については、「皆さんが万全な体制を取れるよう、努力していきたい」として、理解を求めた。
その他、松本会長は少子化の問題にも言及。特に地方においては産科の有床診療所が厳しい経営状況にあることを説明し、「これらが無くなることになれば地域医療に大きな影響を与える」として、出産育児一時金の更なる上積みを求めた。
令和4年8月19日
厚生労働大臣 加藤 勝信 殿
今般の感染拡大を踏まえた今後の対応に関する要望書
公益社団法人 日本医師会
会長 松本 吉郎
第7波における新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対し、地域の医師会、医療機関に全力で対応いただいています。
お盆の期間には、日本医師会から地域の医師会、医療機関に対して、休診日の受診窓口の確保について更なる協力をお願いいたしました。これに応えて各地の医師会や医療機関においては、臨時発熱外来の開設等、行政と連携しながら懸命に医療提供体制を築いています。医療現場はまさに対応限度ぎりぎりの状態が続く中で、全力で患者さんへの医療提供に取り組んでおります。 今般の感染拡大において、政府は比較的重症化しにくいというオミクロン株の特性等を踏まえ、国民への強い行動制限を求めずに医療逼迫の回避と社会経済活動との両立を図る方針のもと、対応がなされてきました。 今なお、感染者数の劇的な増加による医療機関・保健所等の業務負担増加は続き、各地域において医療提供体制、特にコロナ医療およびコロナ以外の医療両方を担う救急現場が極めて逼迫している状況です。 今般の感染拡大を踏まえ、日本医師会は、今後の対応に向けて下記の通り要望いたします。
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問い合わせ先
日本医師会 健康医療第二課、地域医療課、総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)