中川俊男会長は6月16日、日本記者クラブにおいて、「最近の医療情勢とその課題」と題して記者会見を行い、「ウクライナへの医療支援」「新型コロナウイルス感染症対策」「かかりつけ医」に関する日本医師会の取り組みや考え等を説明した。 なお、当日の記者会見の模様は、日本記者クラブのホームページで視聴可能となっているので、ぜひ、ご覧頂きたい。 |
---|
日本記者クラブは全国の主要な新聞社、テレビ局など、約190社が加盟している非営利の独立組織である。来日する外国の大統領、首相、閣僚や幅広い分野の専門家らが記者会見を行っており、今回の中川会長の会見は、日本記者クラブの招きに応じて行ったものである。
中川会長は、「ウクライナへの医療支援」について、「世界医師会を通じて、総額3億円を寄附した」「47都道府県医師会との連名で『ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対する緊急声明』を取りまとめた」―こと等を説明。引き続き、ウクライナに対する支援を継続・強化していく考えを示した。
「新型コロナウイルス感染症対策」に関しては、日本医師会のこれまでの取り組みとして、(1)PCR等検査体制の更なる拡大・充実を求める緊急提言を取りまとめ、政府に要望した結果、一定の改善が図られた、(2)国民に安心して医療機関に来院してもらえるよう2020年8月から『みんなで安心マーク』の発行を開始した、(3)全国の医師会の底力により、最大1日約170万回のワクチン接種を達成した、(4)爆発的な感染の拡大が全国規模で起こる中で、中川会長名により全会員に、新型コロナウイルス感染症患者への対応に協力を求める手紙を送付した―こと等を報告。
また、「日本は諸外国に比べて病床数が多いにもかかわらず、なぜ医療がひっ迫しているのか」との声が上がったことにも触れ、「この指摘は誤りである」とした上で、「欧米では既に2020年の第一波の時点で、医療崩壊というべき状況に至り、医療のトリアージが行われていた」「人口100万人当たりの累計死亡者数が、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアでは1000人以上になっていたが、日本は約30人であった」「病床の定義が国によって異なる」ことなどを改めて説明し、理解を求めた。
「かかりつけ医」については、「かかりつけ医がいる人の間では、『かかりつけ医がいて安心であった』と回答した人が約9割であったこと」など、日医総研が行った「日本の医療に関する意識調査 2022年臨時中間調査」の結果を紹介し、コロナ禍がかかりつけ医の意義を再確認する契機となったと指摘。日本医師会としても、かかりつけ医を取り巻く社会の変化を踏まえ、地域の方々にかかりつけ医をもってもらうため、4月20日に「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」を公表したとして、その内容を改めて説明するとともに、政府に対しては、「患者の医療へのアクセスが維持され、患者の健康状態がこれまでどおり守られるよう、国民視点、患者視点に立って検討を進めてもらいたい」と要望した。
その後の記者との質疑では、会長職としての2年間で特に力を入れてきたことを問われたことに対して、「ワクチン接種」を挙げ、「1日最大170万回の接種を達成できたことは今でも誇りに思っている」として、全国の会員の先生方に感謝の意を示した。
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを見直すとの考えが出ていることについては、「現状のままでも、柔軟に運用することで対応できるのではないか」と指摘。また、現在の感染状況を踏まえて、感染防止対策を緩和する動きが出ていることについては、「政府がウィズコロナに舵を切ったことは理解できる」とする一方で、「基本的な感染防止対策を徹底した上でのウィズコロナであり、対策を急激に緩めることは拙速ではないか」と述べた。