中川俊男会長は2月17日、総理官邸で行われた「総理と医療関係者との意見交換」に出席し、医療現場の実情や新型コロナウイルス感染症に対する日本医師会の取り組みなどを説明するとともに、都道府県医師会等と共にコロナ対応に全力で取り組む決意を示した。 |
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今回の意見交換は、医療現場の現状や課題等を医療関係者から直接聞きたいとの岸田文雄内閣総理大臣からの申し出により開催されたもので、中川会長の他、相澤孝夫日本病院会長、福井トシ子日本看護協会長、大曲貴夫国立国際医療研究センター理事長特任補佐/国際感染症センター長が出席した。
中川会長は、後藤茂之厚生労働大臣、堀内詔子ワクチン接種推進担当大臣からの要請を受け、都道府県医師会長に行政や関係団体との一層の連携強化の上、地域の実情に応じて、郡市区医師会と共に診療・検査医療機関の拡充と公表、ワクチン追加接種の推進及び早期退院患者の受け入れ体制の充実に努めてもらうよう要請したことなどを報告。診療・検査医療機関の公表については、「特にかかりつけ医がいない方にとって、診療・検査医療機関がどこにあるかを知らせることは、安心と信頼につながり、まさに命綱になる」として、前向きな公表を求めているとした。
また、早期退院する患者の受け入れ、高齢者施設への支援については、日本医師会が病院団体と共に立ち上げた「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を土台として、引き続き取り組んでいく意向を伝えた。
医療現場の現状に関しては、オミクロン株の急激な拡大により、医療提供体制も急速に逼迫(ひっぱく)していることを説明。「政策判断に当たってはコロナの医療提供体制の逼迫だけでなく、コロナ以外の通常医療が守られているかといった視点を考慮して欲しい」と述べた。
喫緊の課題としては、「医療従事者が濃厚接触者や感染者となり、勤務できなくなるケースの増加」「抗原定性検査キットの不足」を挙げるとともに、その解決策として、医療の提供が制限されたり、停止することがないような方策を打ち出すだけでなく、全国の診療・検査医療機関の発熱外来へ抗原定性検査キットを最優先に供給することを求めた。
ワクチン接種に関しては、岸田総理が示した2月中に1日当たり100万回の接種を目指すとの方針に全面協力する考えを伝えるとともに、日本医師会としても、交互接種や小児(5~11歳)へのワクチン接種などに対する疑問や不安に答える動画「進めよう!ワクチン接種」を制作し、日本医師会公式YouTubeチャンネルで公開していること(別記事参照)等を報告した。
また、追加接種を更に推進するために必要なこととして、政府に対して、「接種券が届く前でも、2回目接種の記録が確認できれば接種できるよう、政府が明確な指示を出すこと」「ワクチンの各医療機関への供給予定に関する情報の迅速な提供」を要請した。
小児(5~11歳)への接種に関しては、他のワクチンとの予防接種スケジュールの調整に加えて、小児への接種開始の時期が入園、入学の時期とも重なり、接種機関(特に小児科)への負荷が予想されるとして、小児の新型コロナワクチン接種機関へ支援が必要になるとの考えを伝えた。
治療薬については、「現在承認されている薬は、いずれも抗インフルエンザ薬のように使用しやすいものではない上に、海外メーカー製であるため安定供給の面にも不安がある」と指摘。「全国の医療機関は、更なる治療薬、国内メーカー製で有効かつ安全な使いやすい医薬品を待ち望んでいる」として、引き続き、強力にその開発に取り組むことを求めた。
その上で、中川会長は都道府県・郡市区医師会、医療関係8団体、更には全国知事会や日本経済団体連合会とより緊密な連携を図り、新型コロナ対応に全力で取り組む決意を改めて岸田総理に伝えた。
新たな国の支援策を説明―岸田総理
出席者からの意見を受けて、岸田総理はオミクロン株の特性を踏まえた医療体制の更なる強化、予防・発見・早期治療の流れの一層の強化に取り組み、国民の命と健康を守り抜く考えを表明。出席者に対して、(1)ワクチン接種の加速化、(2)外来と自宅療養への対応強化、(3)医療人材の派遣、(4)転院や救急搬送受け入れの促進、(5)高齢者施設における医療体制の強化―の5点の実施を改めて要請した。
また、国としてもその実現のため、医療提供体制の整備に向けた新たな財政支援を行うことを明言し、理解を求めるとともに、「今後も現場の医療関係者の皆さんと緊密な連携の下、この状況を乗り越えていきたい」として、引き続きの協力を求めた。